
※この記事は2026年11月時点の情報に基づく一般的な解説です。遺言の撤回や書き直しの方法、必要な手続きは、遺言の種類や一人ひとりの状況によって異なります。法務局に預けている遺言書は遺言書保管所(法務局)、公正証書遺言は公証役場、遺言の有効性をめぐる争いは弁護士にご確認ください。
孫が生まれた、自宅を売ることになった、家族との関係が変わったなど、以前に作った遺言書の内容を変えたいと考える方は少なくありません。遺言は、作った後でも撤回して書き直すことができます。
ただし、そのやり方には民法の決まりがあります。古い遺言書を残したまま新しい遺言を作ると、どちらの内容が生きているのか、家族が迷うこともあります。この記事では、遺言を撤回する方法、新しい遺言と前の遺言の関係、書き直す前に確認しておきたいことを説明します。
目次
- 遺言は、いつでも撤回して書き直せる
- 撤回する方法① 新しい遺言で撤回する
- 撤回する方法② 前の遺言と食い違う遺言や行為
- 撤回した遺言は、原則として元に戻らない
- 法務局に預けている遺言を書き直すとき
- 公正証書遺言を書き直すとき
- 書き直す前に確認しておきたいこと
- 行政書士に相談できること
遺言は、いつでも撤回して書き直せる
民法では、遺言をした人は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回できるとされています。
撤回できるのは、遺言をした本人です。家族が本人に代わって遺言を撤回することはできません。
また、遺言をした人は、遺言を撤回する権利を放棄することができません。「この遺言はもう書き直さない」と家族に約束していたとしても、本人は後から遺言を撤回し、書き直すことができます。
撤回する方法① 新しい遺言で撤回する
いちばん分かりやすいのは、新しい遺言を作り、その中で前の遺言を撤回すると書く方法です。前の遺言をすべて取り消して作り直すのか、一部だけを変えるのかを、新しい遺言の中ではっきり書いておくと、後で家族が迷いにくくなります。
このとき、新しい遺言は前の遺言と同じ種類でなくてもかまいません。日本公証人連合会は、遺言の撤回について、自筆証書であるか公正証書であるかの種類は問わないと説明しています。たとえば、公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することもできます。
ただし、新しく作る遺言は、その種類の遺言の方式に従っていなければなりません。新しく作る遺言が法律上の方式を満たしていなければ、その遺言による撤回が有効と認められない可能性があります。遺言の種類ごとの方式は遺言書の作成ガイドで説明しています。
撤回する方法② 前の遺言と食い違う遺言や行為
はっきり「撤回する」と書かなくても、撤回したものとみなされる場合があります。
- 前の遺言と後の遺言の内容が食い違うときは、食い違う部分について、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。食い違わない部分は、前の遺言がそのまま残ります
- 遺言をした後に、遺言に書いた財産を売ったり贈与したりして、遺言の内容と食い違うことになった場合も、食い違う部分について撤回したものとみなされます
- 遺言をした本人が、わざと遺言書を破棄した場合は、破棄した部分について撤回したものとみなされます
このように、前の遺言の一部だけが残ると、家族が内容を読み解くのに迷うことがあります。内容を大きく変えるのであれば、前の遺言を撤回すると明記した新しい遺言を作っておく方が、家族にとって分かりやすくなります。
ご家族が、複数の遺言書を見つけたときの考え方は遺言書の確認方法で説明しています。
撤回した遺言は、原則として元に戻らない
一度撤回した遺言は、その撤回をさらに撤回しても、原則として効力を回復しません。たとえば、Aの遺言をBの遺言で撤回した後に、Bの遺言を撤回しても、Aの遺言は原則として元に戻りません。
ただし、撤回の行為が錯誤・詐欺・強迫による場合は、この原則の例外となります。
前の内容に戻したいのであれば、改めてその内容で遺言を作成しておく方が確実です。
法務局に預けている遺言を書き直すとき
自筆証書遺言書保管制度を使って法務局に遺言書を預けている場合、保管の申請を撤回して、遺言書を返してもらうことができます。
ただし、法務省は、保管の申請の撤回は遺言の効力とは関係がないと案内しています。保管の申請を撤回しただけでは、遺言そのものを撤回したことにはなりません。内容を変更する場合には、遺言そのものについて、新たな遺言を作成するなどの対応が別に必要です。
保管の申請の撤回の手続きについては、関連記事(自筆証書遺言書保管制度とは?法務局に預けるメリット・手数料・手続きの流れ)で説明しています。
公正証書遺言を書き直すとき
公正証書遺言を書き直す場合も、新しい遺言を作って、前の遺言を撤回したり内容を変えたりします。新しい遺言の種類は問いません。
公正証書遺言の原本は、公証役場に保管されます。公正証書遺言の仕組みについては公正証書のデジタル化で、遺言の作り方はどう変わったかもご覧ください。
書き直す前に確認しておきたいこと
書き直しを始める前に、次のことを整理しておくと、新しい遺言の内容を決めやすくなります。
- 前の遺言の種類と、どこにあるか(手元・法務局・公証役場)
- 何を変えたいのか(全部か一部か)と、その理由
- 財産の中身が、前の遺言を作った時からどう変わったか(売った不動産、新しく作った口座など)
- 家族の状況がどう変わったか(結婚・離婚、孫の誕生、亡くなった家族など)
- 新しい遺言をどの種類で作るか
前の遺言を作った時から年数がたっていると、遺言に書いた財産がすでに無くなっていたり、財産を受け取る予定だった人の状況が変わっていたりすることがあります。前の遺言を読み直し、今の財産と家族の状況に合っているかを一つずつ確かめることが、書き直しの第一歩です。
なお、2026年6月には、自筆証書遺言などの押印の任意化を含む改正法が公布されています。ただし、2026年11月現在、この部分はまだ施行前で、施行日は政令で定められます。現在遺言を作成する場合は、現行の方式に従う必要があります。改正の内容については、関連記事(デジタル遺言(保管証書遺言)とは?いつから使える?新しい遺言制度をやさしく解説)で説明しています。
行政書士に相談できること
行政書士は、遺言書の文案作成と、その作成に伴う相談をお手伝いできます。公正証書遺言にする場合は、公証役場とのやり取りなどの段取りもお手伝いします。公正証書の作成は公証人が行います。
遺言の有効性をめぐって家族の間で争いになっている場合は、提携先の弁護士と連携します。
相続のお手続きでお困りの方へ
うりずん相続手続き相談室では、以前に作った遺言書の内容を見直したいと考え始めた段階から、戸籍の収集による相続人調査、財産調査、遺産分割協議書の作成、銀行口座の解約手続きのサポート、遺族年金・未支給年金の請求支援など、行政書士・社会保険労務士として対応できる手続きを中心にお手伝いしています。相続登記や相続税申告、紛争対応が必要な場合には、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携し、必要な専門家へ適切におつなぎします。市区町村や年金事務所での手続きに不安をお持ちの方も、どうぞ安心してご相談ください。
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まとめ
- 遺言は、遺言をした本人がいつでも撤回して書き直せます。新しい遺言の種類は、前の遺言と同じでなくてもかまいません
- 前の遺言と食い違う部分は、後の遺言で撤回したものとみなされます。内容を大きく変えるなら、前の遺言を撤回すると明記した新しい遺言が分かりやすくなります
- 撤回した遺言は原則として元に戻らないため、前の内容に戻したいときは改めて遺言を作成しましょう



