※この記事は2026年7月時点の情報に基づく一般的な解説です。届出先や必要書類、葬祭費・埋葬料などの金額や申請期限は、自治体や加入する保険制度によって異なります。実際の手続きの前に、市区町村・年金事務所・保険者の窓口、または専門家にご確認ください。

「おひとりさまなので、自分の葬儀と納骨をどうすればいいのか分からない」。川崎市・横浜市で終活のご相談をお受けしていると、こうしたお声をよくいただきます。その備えのひとつが死後事務委任契約です。亡くなった後の手続きを生前に信頼できる相手へ託しておく契約で、葬儀や納骨も対象に含めることができます。

ただし、契約を結べば何もかもがそのとおりに進むわけではありません。役所への届出、葬儀を主宰する人、お墓を承継する人といった部分には、死後事務委任契約だけでは決まらない論点が残ります。

この記事では、葬儀・納骨をどこまで頼めるのか、そして契約に加えて確認が必要なことは何かを、手続の流れに沿って整理します。契約そのものの仕組みや効力は死後事務委任契約とはで詳しく説明しています。


目次

  1. 死後事務委任契約で葬儀・納骨は頼めるのか|まず結論から
  2. 死亡から納骨までの流れ|誰が・いつ・何をするか
  3. 受任者に頼める葬儀・納骨の実務
  4. 死後事務委任契約に加えて確認が必要な3つの論点
  5. 契約書で決めておきたい葬儀・納骨の希望
  6. 費用をどう確保するか|前払金と受け取れる給付
  7. うりずん相続手続き相談室に相談できること
おひとりさまの男性が、死後事務委任契約で葬儀や納骨を託せる範囲、死亡届を出せる人の決まり、費用の預け方について行政書士から説明を受けている様子を描いたイラスト

死後事務委任契約で葬儀・納骨は頼めるのか|まず結論から

結論から申し上げると、葬儀・納骨は死後事務委任契約の対象にできます。

委任契約は本来、委任者が亡くなると終了すると定められています(民法653条1号)。それでは死後の手続きを託す意味がなくなってしまいますが、裁判例は、委任者の死亡によっても契約を終了させない旨の合意を有効と認めています(最高裁平成4年9月22日判決・金融法務事情1358号55頁)。

さらに、委任者の地位を承継した相続人が契約を一方的に解除できるかという点についても、履行させることが不合理と認められる特段の事情がない限り、解除して終了させることを許さない合意を含むものと解した裁判例があります(東京高裁平成21年12月21日判決・判例タイムズ1328号134頁)。

つまり、葬儀・納骨を託す契約には一定の法的な裏づけがあります。

一方で、この契約はあくまで委任者と受任者の間の約束です。役所への届出資格や、親族間の関係にかかわる事柄まで、契約だけで決められるわけではありません。その線引きは記事の後半で見ていきます。

なお、任意後見契約や身元保証との役割の違いは任意後見・身元保証・死後事務の違いをご覧ください。


死亡から納骨までの流れ|誰が・いつ・何をするか

葬儀・納骨の実務は、法律で定められた手続きの上に成り立っています。全体像を押さえておくと、どこを契約で決めておくべきかが見えてきます。

時点主な内容根拠
死亡直後医師から死亡診断書(死体検案書)を受け取り、ご遺体の安置先を決めて搬送する
死亡を知った日から7日以内死亡届を提出する。あわせて火葬許可を申請する戸籍法86条/墓地埋葬法5条
許可時市町村長から火葬許可証が交付される墓地埋葬法8条
原則として死亡後24時間経過後火葬を行う(法令上の例外を除く)墓地埋葬法3条
火葬後火葬済みの記載がされた火葬許可証を受け取り、ご遺骨とともに保管する
納骨時火葬済みの記載がされた火葬許可証を、墓地・納骨堂の管理者へ提出する墓地埋葬法14条

火葬は、法令上の例外を除き、原則として死亡後24時間を経過した後でなければ行えず、市町村長の許可も必要です。この火葬許可証は火葬後に火葬済みの記載を受け、納骨のときに墓地・納骨堂の管理者へ提出します。納骨のために別の許可を取り直すわけではありませんが、同じ書類を後日使いますので、紛失しないよう保管する人を決めておきましょう。

なお、埋葬または火葬を行う者がいないとき、又は判明しないときは、死亡地の市町村長がこれを行うと定められています(墓地埋葬法9条)。制度としての受け皿はありますが、葬儀の形式や納骨先を希望どおりに選べるわけではありません。希望があるのなら、生前に契約で決めておくことに意味があります。

死亡直後の届出全般は死亡後7日以内にやることで扱っています。


受任者に頼める葬儀・納骨の実務

死後事務委任契約に盛り込むことで、受任者に依頼できる実務には次のようなものがあります。

  • 病院・施設からのご遺体の引取りと、安置先の手配
  • 葬儀社との連絡調整、契約の締結、費用の支払
  • 火葬の日程調整と当日の立会い
  • ご遺骨と火葬許可証の引取り、納骨までの保管
  • 納骨先(寺院・霊園・納骨堂)との連絡調整と、納骨の立会い
  • 菩提寺がある場合の連絡
  • 親族・知人・関係者への連絡

ただし、契約書に書いたからといって、病院・施設・葬儀社・墓地の管理者が当然に受任者の権限を認めるわけではありません。契約書の提示や身分の確認を求められることがありますので、受任者の連絡先と契約書の写しの保管場所を、関係先とあらかじめ共有しておくとスムーズです。

菩提寺がある方は、連絡先、宗派、納骨の受入れが可能かどうか、希望する供養の内容を、契約の段階で確認しておきましょう。受入れの可否が後から分かると、日程にも費用にも影響します。既存のお墓を整理する場合の離檀料・改葬・墓じまいの手続きは、墓じまい・改葬の手続きガイドで扱っています。

永代供養、樹木葬、散骨といった供養方法そのものの選び方は、永代供養・樹木葬・散骨を選ぶ前にで整理しています。この記事は、選んだ供養先へどうやって納めてもらうかに絞っています。


死後事務委任契約に加えて確認が必要な3つの論点

死後事務委任契約で役割を定められる事項もありますが、法定の届出資格、親族や保険者など第三者との関係、祭祀承継者の指定は、それぞれ別に確認する必要があります。

1. 死亡届の届出人

死亡届を出せる人は戸籍法87条で定められています。法務省の案内でも、届出人は「親族、同居者、家主、地主、家屋管理人、土地管理人等、後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者」とされています。

ここに「死後事務委任契約の受任者」という項目はありません。死後事務委任の受任者であることだけを理由に、届出人になれるわけではないという点にご注意ください。

ただし、これは「受任者は死亡届に一切関与できない」という意味ではありません。届出書を役所へ持参する使者としての関与は、届出人になることとは別の話です。また、ご本人の住居について家屋管理人に当たるかどうかは、個別の事情によって判断が分かれます。届出資格そのものは法律で定められていますが、家屋管理人への該当性や必要書類の扱いは、あらかじめ提出先の市区町村へ確認しておくと安心です。

実務では、任意後見契約とあわせて契約を組み立てておく方法がよく取られます。任意後見受任者は届出資格者に含まれているためです。なお、任意後見受任者として死亡届を提出する場合には、任意後見契約の登記を証明する書類(登記事項証明書)などの提示を求められることがあります。契約の組み合わせ方についてはおひとりさまの生前契約セットをご覧ください。

2. 葬儀を主宰する人・葬祭費の申請者

「喪主」という言葉は広く使われていますが、これには一般的な法律上の資格や定義があるわけではありません。

受任者に葬儀の主宰を依頼することはできます。ただし、その契約によって親族や保険者まで当然に拘束されるわけではありません。問題になるのは、その後の整合です。親族がいらっしゃる場合の役割分担、葬儀社が発行する領収書の名義、そして後述する葬祭費・埋葬料の申請者を誰にするのか。これらがばらばらだと、給付の申請の場面で確認に時間がかかることがあります。契約を結ぶ段階で、この3点をそろえて決めておくことをおすすめします。

3. 祭祀承継者

お墓や仏壇、位牌といった祭祀財産を承継する人については、民法897条に定めがあります。

死後事務の受任者に指定しただけで、その人が当然に祭祀承継者になるわけではありません。一方、民法897条では被相続人による指定が優先されるため、受任者と同じ人を祭祀承継者として別途明確に指定することは可能です。指定の方法や、墓地・霊園の使用規則、指定を受ける人の承諾などは、事前に確認しておく必要があります。

祭祀承継者の指定の方法や、指定がない場合の扱いは祭祀承継者とは?で、承継する人がいないときの決め方はおひとりさまのお墓・納骨は誰が決めるのかで詳しく扱っています。


契約書で決めておきたい葬儀・納骨の希望

葬儀・納骨を託す場合、契約書やその付属書面で次の項目を決めておくと、受任者が迷わずに動けます。

決めておく項目具体的に書く内容
葬儀の形式・規模家族葬・直葬・一般葬の別、参列を知らせる範囲
宗教・宗派宗派、菩提寺の有無と連絡先、宗教儀礼を行うかどうか
費用の上限葬儀・納骨それぞれの上限額の目安
納骨先寺院・霊園・納骨堂の名称と連絡先、受入れの可否の確認状況
後日の供養法要や年忌をどこまで行うか、行わない場合はその旨
希望が実現できない場合受入れを断られたとき、費用が上限を超えたときの対応の決め方

とくに最後の項目は見落とされがちです。納骨先の受入れ条件は時間の経過とともに変わることがあります。第一希望が実現できなかったときに受任者が誰と相談して決めるのか、代替案をどこまで任せるのかを書いておくと安心です。

なお、葬儀や納骨の希望を遺言書に書く方法もありますが、遺言書と死後事務委任契約では性質が異なります。遺言書に書いた場合にどこまで効力が生じるかは遺言書で葬儀や納骨の希望は決められるかで詳しく扱っています。遺言書の書き方そのものは遺言書の書き方ガイドをご覧ください。


費用をどう確保するか|前払金と受け取れる給付

葬儀・納骨には、亡くなった直後にまとまった費用が必要になります。ここをどう手当てするかが、契約設計の要になります。

亡くなった後の口座の扱い

金融機関がご本人の死亡を知ると、本人名義口座からの払戻しや取引は通常制限されます。

相続人については、遺産分割前でも一定額を単独で払い戻せる制度があります(民法909条の2)。金額は「相続開始時の預金額×3分の1×払戻しを行う相続人の法定相続分」で計算し、同一の金融機関からの払戻しは150万円が上限です。ただしこれは相続人のための制度であり、死後事務の受任者が当然に利用できるものではありません。葬儀等の初期費用は、この制度とは別に確保しておくことが重要です。

費用の準備方法

葬儀・納骨に必要な費用は、前払金(預託金)、立替精算その他の方法から、契約内容に応じて準備します。前払金を預かる場合は、使途、金額、保管方法、精算報告、残額の返還、不足したときの対応を、あらかじめ明確にしておくことが大切です。

国のガイドラインも同じ方向を示しています。令和6年6月に関係省庁が取りまとめた「高齢者等終身サポート事業者の適正な事業運営を確保するためのガイドライン」では、適正な事業運営のため、前払金を事業者の運営資金等と明確に区分して管理し、管理状況を定期的に報告することが望ましいとされています。また、サービス内容、費用、預託金や残金の取扱いを、契約書・重要事項説明書に明記することが示されています。

受け取れる給付

国民健康保険・後期高齢者医療には自治体の葬祭費、勤務先の健康保険には埋葬料・埋葬費等の制度があります。支給対象者・申請先・必要書類は加入制度によって異なりますので、まずはご本人がどの制度に加入していたかを確認してください。

制度金額申請期限
川崎市 国民健康保険の葬祭費5万円葬祭を行った日の翌日から2年以内
横浜市 国民健康保険の葬祭費5万円葬祭を行ってから2年
神奈川県後期高齢者医療の葬祭費5万円葬祭を行った日の翌日から2年
協会けんぽの埋葬料5万円死亡した日の翌日から2年
協会けんぽの埋葬費実費・上限5万円埋葬を行った日の翌日から2年

勤務先の健康保険では、埋葬料と埋葬費が区別されている点にご注意ください。被保険者により生計を維持されていた方が受け取るのが埋葬料(5万円)で、そうした方がいない場合に、実際に埋葬費用を負担した方が受け取るのが埋葬費(実費・上限5万円)です。死後事務の受任者が費用を負担した場合は、通常この埋葬費に当たるかどうかを確認することになります。

川崎市の国民健康保険では、葬祭を行った方(喪主)に5万円を支給し、葬祭費用の領収書等と、原則として葬祭を行った方の名義の口座を求めています。別の名義の口座への振込を希望する場合は、申請書の委任状欄の記入が必要です。横浜市の後期高齢者医療でも、申請者を葬祭を行った方(喪主)としています。

注意が必要なのは、受任者が費用を負担して葬儀を実行すれば必ず申請できる、とは限らない点です。「葬祭を行った方」として認められるかどうかは、加入先の保険者へ事前に確認しておくことをおすすめします。

健康保険の死亡時の手続き全般は健康保険の死亡時手続きで扱っています。


うりずん相続手続き相談室に相談できること

死後事務委任契約の内容整理・契約書作成等は、Officeうりずん社会保険労務士・行政書士事務所が対応します。葬儀社・寺院・納骨先との連絡調整、契約に基づく葬儀・納骨の実行支援は、受任者となる一般社団法人いきいきライフ協会川崎南が担当します。

ご相談の内容に応じて、次のようなお手伝いをしています。

  • 葬儀・納骨の希望の整理と、契約書に盛り込む項目の洗い出し
  • 死後事務委任契約書の文案作成と、公正証書化の段取り
  • 任意後見契約など、他の契約と組み合わせる場合の設計
  • 費用の準備方法と、精算・報告の取り決めの整理
  • 相続開始後の戸籍収集、財産調査、遺産分割協議書の作成、口座解約のサポート、年金の請求支援

相続登記の申請は司法書士、相続税の申告は税理士、紛争にわたる事案は弁護士と、それぞれ連携して対応します。公正証書の作成は公証人が行います。

川崎市・横浜市を中心にご相談をお受けしています。まずはお話をお聞かせください。


まとめ

死後事務委任契約で葬儀・納骨を頼めるかという問いへの答えは、「頼める。ただし契約に加えて確認しておくことがある」です。

  • 委任者の死亡後も契約を存続させる合意は有効と認められており、相続人による一方的な解除も、特段の事情がない限り制限されると解した裁判例がある
  • 火葬は原則として死亡後24時間の経過後、火葬には市町村長の許可が必要で、その許可証を納骨時に管理者へ提出するという枠組みは、契約の内容にかかわらず共通する
  • 死亡届の届出人、葬儀を主宰する人と給付の申請者、祭祀承継者の3つは、契約に加えて別に確認が要る。任意後見契約との組み合わせや、祭祀承継者の別途の指定、親族との事前の調整を検討する
  • 葬儀の初期費用は、相続人向けの払戻し制度とは別に確保する。前払金を預ける場合は、使途・保管方法・精算・返還の取り決めを書面で明確にする
  • 葬祭費と、埋葬料・埋葬費は加入制度によって異なる。領収書の名義と申請者をそろえ、加入先の保険者へ事前に確認しておく

ご自身の希望を形にするには、早めに整理を始めるほど選択肢が広がります。おひとりさまの終活全体の進め方はおひとりさまの終活ガイドにまとめています。