※この記事は2026年7月時点の情報に基づく一般的な解説です。制度の運用や取り扱いは自治体・施設によって異なります。実際の手続きや契約の前に、各窓口・施設、または専門家にご確認ください。
「自分にはお墓を継ぐ人がいない」「身寄りがないので、亡くなった後のことが心配だ」——おひとりさまの方から、こうしたご相談をいただくことがあります。
継ぐ人がいないと、自分の希望は通らないのだろうか。誰かが勝手に決めることになるのだろうか。そんな不安を感じている方もいるかもしれません。
結論から申し上げると、おひとりさまでも、お墓や納骨のことは、生前にご自身で決めておくことができます。むしろ、継ぐ人がいないからこそ、決めておく意味が大きいといえます。
この記事では、承継者がいない場合に誰がどう決めるのか、生前にどんな準備ができるのかを、川崎の行政書士が整理します。
目次
- おひとりさまでも、お墓や納骨は自分で決められる
- 「誰が引き継ぐか」と「誰が実行するか」は別
- 何も決めていないと、どうなるのか
- 生前にできる準備|3つの役割を組み合わせる
- 費用をどう用意しておくか
- 誰に託すか|親族以外という選択肢
- うりずんに相談できること
おひとりさまでも、お墓や納骨は自分で決められる
まず押さえておきたいのは、供養の方法や納骨先は、ご自身の意思で選べるということです。
「継ぐ人がいないから、お墓は持てない」と思われがちですが、合葬型墓所や、承継者を必要としない永代供養墓など、生前に申し込みができる供養先もあります。ただし、申込資格、個別安置の期間、合祀の時期、管理・供養の内容は施設ごとに異なります。
大切なのは、希望を書面に残すだけでなく、供養先との契約、死亡時の連絡方法、実際に手配する人との契約まで整えておくことです。頭の中で考えているだけでは、亡くなった後にそれが伝わりません。逆にいえば、必要な準備を組み合わせておけば、おひとりさまでも希望に沿った形に近づけられます。
次の章から、「誰が決めるのか」「何を準備すればよいのか」を順に見ていきます。
「誰が引き継ぐか」と「誰が実行するか」は別
ここが、この記事でいちばん大切なところです。
生前であれば、ご本人が供養方法や納骨先を選び、契約しておくことができます。既存のお墓や仏壇などを引き継ぐ人については、祭祀承継者を指定するという方法があります。
一方で、葬儀や納骨を実際に手配する人は、祭祀承継者と同じとは限りません。ご親族が行うこともあれば、死後事務を委任された受任者が行うこともありますし、契約先の事業者が担うこともあります。
つまり、希望を実現するには、「誰に引き継いでもらうか」と「誰に実行してもらうか」を分けて準備することが大切です。この2つを混同すると、「承継者は決めたのに、実際に動く人がいない」という事態が起こりえます。
なお、祭祀承継者の決まり方には民法上のルールがあります。亡くなった方の指定があればその人、なければ慣習、慣習も明らかでなければ家庭裁判所が定める、という順序です。ただし、慣習も明らかでない場合は、祭祀承継者指定の申立てをすることで家庭裁判所が定めるのであって、家庭裁判所が自動的に選任してくれるわけではありません。また、既存の墓地の利用名義は、祭祀承継者を指定しただけで自動的に変更されるとは限らず、墓地管理者の規約に基づく承継手続きが別途必要です。
法定相続人や親族に限られるわけではないため、おひとりさまでも指定は可能です。詳しくは、祭祀承継者について解説した記事をご覧ください。
何も決めていないと、どうなるのか
では、何も決めずに亡くなった場合はどうなるのでしょうか。
死体の埋葬または火葬を行う人がいないとき、またはその人が判明しないときは、死亡地の市町村長がこれを行います。火葬後の遺骨は、一定期間個別に保管した後に合祀する例がありますが、保管期間・場所・その後の取り扱いは自治体によって異なります。
ここで押さえておきたいのは、墓地埋葬法9条が定めているのは埋葬または火葬の実施であり、本人が希望した納骨先や供養方法の実現ではないということです。また、公費で無条件に無料となる制度でもなく、費用については同条2項により、行旅病人及行旅死亡人取扱法の規定が準用されます。
つまり、「どこに納めてほしいか」「どんな形で供養してほしいか」というご自身の希望は、決めておかなければ反映されません。自分の希望を実現するためには、生前に納骨先と、実行する人を決めておくことが大切です。
生前にできる準備|3つの役割を組み合わせる
生前の準備には、役割の異なる3つの方法があります。それぞれ担う部分が違うので、ご自身の状況に合わせて組み合わせるとよいでしょう。
1. 供養先を決めておく|「どこで・どのように」
永代供養墓、樹木葬、納骨堂など、承継者を必要としない供養先を、生前に決めて契約しておく方法です。これで「どこに納められるか」が確定します。永代供養や樹木葬などの供養方法にはそれぞれ特徴と注意点がありますので、別の記事で解説しています。
2. 祭祀承継者を指定しておく|「誰が引き継ぐか」
すでにお墓や仏壇がある場合、それを引き継ぐ人を指定しておく方法です。親族に限らず指定できます。ただし、永代供養墓など、承継者を前提としない供養先を選んだ場合は、この準備が必要ないこともあります。
3. 死後事務委任契約を結んでおく|「誰が実際に手続きするか」
葬儀や納骨の手配、施設への支払いといった実務を、信頼できる相手に託しておく契約です。
死後事務委任契約では、委任する事務の範囲、費用、死亡連絡の方法に加えて、委任者が死亡しても契約を終了させない旨を明記しておくことが重要です。契約書を作成しただけで履行が保証されるわけではないため、受任者が死亡を把握できる連絡体制と、実行に必要な資金もあわせて整えておきます。死後事務委任契約でどこまで頼めるかについては、別の記事で詳しく解説しています。
この3つは、必ずすべてが必要というわけではありません。たとえば、承継者を必要としない永代供養を選び、その手配と支払いを死後事務委任契約で託しておけば、それで整うこともあります。ご自身の事情に応じて、必要な組み合わせを考えましょう。
費用をどう用意しておくか
見落とされやすいのが、費用の準備です。希望を決めて契約していても、実行する費用が確保されていなければ、実現できないおそれがあります。
死後の手続きには、葬儀や納骨の費用、施設への支払い、手続きを行う人への報酬などがかかります。亡くなった後は預貯金が引き出しにくくなることもあるため、あらかじめ資金をどう用意しておくかを決めておく必要があります。
方法としては、費用をあらかじめ預けておく「預託金」の仕組みや、信託を利用する方法などがあります。契約を検討する際は、次の点を確認しておきましょう。
- 費用の見積額と、追加でかかる可能性のある費用
- 誰が資金を管理するのか
- 事業者自身の財産と分けて管理(分別管理)されるか
- 事業者が破綻した場合にも返還を受けられる保全方法か(単なる分別管理では、倒産隔離が働かない場合があります)
- 解約するときの返金の条件
- 受任者や事業者が廃業した場合、預けたお金や契約はどうなるか
とくに「破綻した場合の返還」と「廃業した場合の取り扱い」は、長期にわたって預ける以上、必ず確認しておきたい点です。
誰に託すか|親族以外という選択肢
実行を託す相手は、必ずしも親族である必要はありません。
信頼できる友人や知人に頼む方法のほか、専門職(行政書士・弁護士など)や、身元保証や死後事務を扱う法人に依頼する方法もあります。おひとりさまの場合、こうした選択肢を知っておくことが、備えの幅を広げます。
託す相手を選ぶときは、次の視点を持っておくと安心です。
- 長期にわたって関わることになるため、継続性のある相手か(個人の場合、ご自身より先に亡くなる可能性もあります)
- 契約の内容が書面で明確になっているか
- 費用と、その管理方法が明確か
- 困ったときに相談できる窓口があるか
なお、こうした準備は、お墓や納骨だけの話ではありません。入院や施設入居の際の身元保証、判断能力が低下したときの財産管理、亡くなった後の手続きと、いくつかの契約を組み合わせて備えるのが実務です。おひとりさまに必要な生前契約セットについては、別の記事で全体像を整理しています。
うりずんに相談できること
うりずん相続手続き相談室では、行政書士として、法的な紛争がない範囲で、ご本人の希望の整理や、死後事務委任契約書などの作成を支援しています。「どこに納めてほしいか」「誰に手配してもらうか」「費用はどう用意するか」——こうした点を一つずつ確認しながら、書面という形にしていきます。
供養先との利用契約は、各施設とご本人との間で結んでいただくことになります。うりずんは、その契約の内容を一緒に確認し、他の準備との整合を図るお手伝いをします。また、当事者の間に争いがある場合には、弁護士への相談が必要になりますので、提携する専門家へおつなぎします。
相続や終活の全体像から整理したい方は、おひとりさまの終活完全ガイドもあわせてご覧ください。事務所は川崎区中島にあり、川崎市・横浜市の皆さまのご相談に対応しています。「何から手をつければよいか分からない」という段階からのご相談も承っていますので、どうぞお気軽にお声がけください。
まとめ
- おひとりさまでも、お墓や納骨は生前にご自身で決めておくことができます。合葬型墓所や永代供養墓など、承継者を必要としない供養先もあります。ただし申込資格や合祀の時期は施設ごとに異なります。
- 大切なのは、「誰に引き継いでもらうか(祭祀承継者)」と「誰に実行してもらうか(手配する人)」を分けて準備することです。この2つは同じとは限りません。
- 埋葬や火葬を行う人がいない場合は、死亡地の市町村長が行います。ただし墓地埋葬法9条が定めているのは埋葬または火葬の実施であり、希望した納骨先や供養方法の実現ではありません。火葬後の遺骨の扱いも自治体によって異なります。
- 生前の準備には、①供養先を決める、②祭祀承継者を指定する、③死後事務委任契約を結ぶ、という役割の異なる方法があります。すべてが必要とは限らず、事情に応じて組み合わせます。
- 死後事務委任契約では、委任者が死亡しても契約を終了させない旨を明記しておくことが重要です。あわせて、死亡を受任者に伝える連絡体制と、実行に必要な資金も整えておきましょう。
- 費用の準備も欠かせません。見積額、資金の管理者、分別管理の有無、破綻時の返還の保全方法、解約時の返金条件、廃業した場合の取り扱いを確認しましょう。
- 託す相手は親族に限りません。継続性と、契約内容の明確さを基準に選びましょう。
- うりずんは、希望の整理と死後事務委任契約書などの作成を支援します。争いがある場合は弁護士と連携します。