※この記事は2026年8月時点の情報に基づく一般的な解説です。未支給年金を受け取れる方や必要な書類は、亡くなった方が受けていた年金の種類、ご家族の状況、同居か別居かによって一人ひとり異なります。実際のお手続きの前に、年金事務所、街角の年金相談センター、関係する共済組合等、税務署、または社会保険労務士・税理士などの専門家にご確認ください。
親が亡くなり、しばらくして年金の通知が届く。マイナンバーが収録されていれば届出は要らないと聞いていたので、年金のことはもう終わったのだろうと思う。
けれども実際には、年金受給者が亡くなったときの手続きは受給を止めることとまだ受け取っていない年金を受け取ることの2つに分かれています。前者は省略できる場合がありますが、後者は請求しなければ支給されません。
まだ受け取っていない年金を未支給年金といいます。亡くなった方が受け取るはずだった年金を、生計を同じくしていたご遺族が自分の名前で請求する仕組みです。相続財産とは扱いが異なり、遺産分割の対象にもなりません。
この記事では、未支給年金の請求と受給を止める手続きを、書類のそろえ方まで含めて順に見ていきます。遺族年金そのものの制度については遺族年金の請求手続き完全ガイドをご覧ください。
目次
- 年金受給者が亡くなったときは、2つの手続きがある
- マイナンバーが収録されていても、未支給年金は自動では支給されない
- 死亡月分まで支給される|未支給年金が発生する仕組み
- 請求できるのは誰か|順位と「生計を同じくしていた」要件
- 未支給年金は相続財産ではない|自己の名で請求する権利
- 必要な書類|同居していたか、別居していたかで変わる
- 提出先|原則として年金事務所または街角の年金相談センター
- 5年の時効|起算点は亡くなった日ではない
年金受給者が亡くなったときは、2つの手続きがある
年金を受けていた方が亡くなったとき、必要になる手続きは次の2つです。
- 年金の受給を止める手続き(年金受給権者死亡届)
- まだ受け取っていない年金を受け取る手続き(未支給年金の請求)
この2つは目的が違います。前者は亡くなった事実を届け出て支払いを止めるもの、後者はご遺族が自分の権利として年金を請求するものです。
紛らわしいのは、未支給年金を受け取れるご遺族がいる場合、この2つを1枚の書類で兼ねるという点です。日本年金機構が用意している「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」がそれで、死亡の届出と未支給年金の請求を同時に行います。
未支給年金を受け取れるご遺族がいないとき、または未払いの年金が生じないときは、
「年金受給権者死亡届(報告書)」だけを提出します。
マイナンバーが収録されていても、未支給年金は自動では支給されない
日本年金機構に亡くなった方のマイナンバーが収録されている場合、「年金受給権者死亡届(報告書)」は原則として省略できるとされています。届出をしなくても、受給を止める手続きが進む仕組みです。
ここで誤解が生まれます。「届出が要らない=年金の手続きは何もしなくてよい」と受け取ってしまうことがあるのです。
しかし、省略できるのは死亡の届出だけです。未支給年金は自動的には支払われません。受け取るためには、先ほどの「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」を提出して、ご遺族が自分の名前で請求する必要があります。
マイナンバーが収録されていれば死亡の届出は原則不要ですが、
未支給年金は請求しなければ支給されません。ここが最も見落とされやすい点です。
なお、マイナンバーが収録されていない場合は、死亡の届出そのものが必要になります。提出の期限は厚生年金保険が亡くなった日から10日以内、国民年金が14日以内とされています。これは死亡の届出についての期限であり、未支給年金の請求期限ではありません。
死亡月分まで支給される|未支給年金が発生する仕組み
なぜ未支給年金というものが生じるのか。理由は年金の支払われ方にあります。
年金は、偶数月の年6期に分けて、それぞれ前月分までをまとめて支払うと法律で定められています(国民年金法第18条第3項・厚生年金保険法第36条第3項)。日本年金機構の案内では、偶数月の15日に前月までの2か月分が振り込まれるとされています。
一方で、年金の支給は亡くなった月の分まで行われます(国民年金法第18条第1項・厚生年金保険法第36条第1項)。日割りではなく月単位です。
後払いであることと、亡くなった月の分まで支給されることが重なるため、亡くなった月の分は、まだ支払期が来ていない年金として残ります。何か月分が残るかは、亡くなった時期によって変わります。以下は、偶数月15日に通常どおり支払われる場合の目安です。
| 亡くなった時期 | 残る月数 | 例 |
|---|---|---|
| 奇数月 | 2か月分 | 7月20日に亡くなった → 6月分・7月分 |
| 偶数月の支払日より後 | 1か月分 | 6月20日に亡くなった → 6月分 |
| 偶数月の支払日より前 | 3か月分 | 6月3日に亡くなった → 4月分・5月分・6月分 |
年金の全額が支給停止されているなど特別な事情がある場合を除き、年金を受けていた方が亡くなれば未支給年金が生じているかどうかの確認が必要になります。
また、亡くなった日より後に振り込まれた年金であっても、亡くなった月分までのものは未支給年金として扱われます。すでに口座に振り込まれている場合でも、未支給年金としての手続きを確認する必要があります。
届出が遅れると、年金を多く受け取りすぎて後で返還を求められることがあります。
亡くなった方の口座を解約していないと、そのまま振り込まれてしまうこともあります。
亡くなった方の口座については口座凍結もあわせてご覧ください。
請求できるのは誰か|順位と「生計を同じくしていた」要件
未支給年金を請求できるのは、亡くなった当時にその方と生計を同じくしていたご遺族で、次の順位で定められています。
- ① 配偶者
- ② 子
- ③ 父母
- ④ 孫
- ⑤ 祖父母
- ⑥ 兄弟姉妹
- ⑦ ①〜⑥以外の3親等内の親族
この範囲は平成26年4月に広がりました。それまでは2親等以内の親族に限られていましたが、甥・姪、おじ・おば、子の配偶者、曾孫、曾祖父母なども請求できるようになっています。
先順位の方がいる場合、後順位の方は未支給年金を受け取ることができません。
順位が上の方から順に、請求できるかどうかを見ていくことになります。
同順位の方が2人以上いる場合は、そのうち1人が代表して請求します。1人がした請求は同順位の全員のためにしたものとみなされ、1人に支給されれば同順位の全員に支給されたものとみなされます(国民年金法第19条第5項・厚生年金保険法第37条第5項)。
なお、JR・JT・NTT・農林共済が支給する共済年金を受け取っていた場合は、請求できる方の範囲が異なるため、年金事務所や各共済組合等に確認してください。
「生計を同じくしていた」は、遺族年金の要件とは違う
未支給年金の条文は「生計を同じくしていた」と定めています。遺族基礎年金や遺族厚生年金で使われる「生計を維持していた」とは別の言葉です。
遺族年金の生計維持の要件には、生計が同一であることに加えて収入の要件(原則として年収850万円未満など)がありますが、未支給年金に収入の要件はありません。ご自身に収入がある場合でも、死亡当時に生計を同じくしていたと認められれば、請求できる可能性があります。
判断の基準となる時点は「亡くなった当時」です。同居していた場合はもちろん、別居していても、経済的な援助があり、定期的な音信や訪問があった場合には生計が同一と認められることがあります。
未支給年金は相続財産ではない|自己の名で請求する権利
未支給年金について、法律は「自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる」と定めています(国民年金法第19条第1項・厚生年金保険法第37条第1項)。
「自己の名で」という言葉が示すとおり、これは亡くなった方から受け継ぐ財産ではなく、請求する方自身に認められた権利です。そのため、次のような扱いになります。
- 相続財産に含まれないため、遺産分割協議の対象にならない
- 請求できる方の順位は、民法の法定相続人の順位とは異なる
- 相続税ではなく、受け取った方の一時所得として整理される
そのため、相続放棄をした場合でも、未支給年金は別に請求できると整理されることがあります。相続放棄を検討している場合は、ほかの財産との関係もあるため、年金事務所や専門家に確認してください。
税務について、国税庁は未支給年金を受け取った方の一時所得に当たると説明しています。
申告が必要かどうかはほかの所得との関係で変わるため、税務署または税理士にご相談ください。
必要な書類|同居していたか、別居していたかで変わる
請求には「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」を使います。あわせて次の書類を添えます。
- 亡くなった方の年金証書
- 請求する方のマイナンバーが確認できる書類、または基礎年金番号が確認できる書類
- 亡くなった方と請求する方の続柄が確認できる書類(戸籍謄本・抄本、法定相続情報一覧図の写しなど)
- 亡くなった方と請求する方が生計を同じくしていたことがわかる書類
- 受け取りを希望する金融機関の口座がわかる書類(通帳の写しなど)
戸籍謄本や住民票は、亡くなった日より後に交付されたものが必要です。
このうち手間がかかるのが、生計を同じくしていたことを示す書類です。同居していたか別居していたかで、必要なものが変わります。
同居していた場合
同居していた場合は、住民票関係の書類で生計同一を確認するのが基本です。マイナンバーを記入することで、一部の住民票関係書類を省略できる場合もあります。取り寄せの手間を減らせることがあるため、事前に年金事務所で確認しておくとよいでしょう。
別居していた場合
上記に加えて「生計同一関係に関する申立書」が必要になります。様式は請求する方によって分かれており、配偶者または子が請求するときは様式3、配偶者・子以外の方が請求するときは様式4を使います。
申立書には、別居していた理由、仕送りなどの経済的な援助の有無と頻度、電話や訪問といった音信の状況を記入します。健康保険の被扶養者であることがわかる書類や、定期的な送金がわかる通帳など、生計が同一であったことを示す書類を添えることで、確認がしやすくなる場合があります。どの書類が必要になるかは、請求者と亡くなった方の関係や住所の状況によって変わります。
別居していた場合の生計同一の判断は、書類の内容によって年金事務所の確認が入ります。
どの書類を用意すればよいか迷われるときは、提出前にご相談ください。
提出先|原則として年金事務所または街角の年金相談センター
提出先は、原則としてお近くの年金事務所または街角の年金相談センターです。対面での相談を希望される場合は、事前予約の要否を確認してからお出かけください。
ただし、亡くなった方が受けていた年金の種類によって、提出先が変わることがあります。
- 障害基礎年金・遺族基礎年金のみを受けていた場合 → お住まいの市区町村役場
- 共済組合等から年金を受けていた場合 → 年金事務所や、関係する共済組合等に確認
なお、市区町村へ提出する戸籍法上の死亡届は、これとはまったく別の手続きです。期限も内容も異なりますので、死亡届は7日以内をあわせてご覧ください。相続手続き全体で、どこに何を出すのかを一覧で確認したい場合は相続手続きに必要な書類一覧が参考になります。
請求してから実際に支給されるまでの期間については、一律の目安は公表されていません。書類の内容や生計同一関係の確認状況によって変わりますので、お急ぎの事情がある場合は年金事務所にご相談ください。
5年の時効|起算点は亡くなった日ではない
年金には時効があります。支払期月の翌月の初日から5年を過ぎると、原則として受け取れなくなる可能性があります。
ここで注意していただきたいのは、起算点が亡くなった日ではないことです。亡くなった日から5年と思い込んで計算すると、実際の期限とずれてしまいます。
年金記録の訂正などにより、例外的に支払われる場合もあります。
期限が過ぎていると思われる場合でも、自己判断であきらめず、年金事務所や専門家にご確認ください。
なお、亡くなった方が2つ以上の年金を受けていた場合、それぞれについて未支給年金が生じていることがあります。年金の組み合わせについては併給調整とはで整理しています。
まとめ
年金受給者が亡くなったときの手続きについて、押さえておきたい点を整理します。
- 手続きは「受給を止めること」と「まだ受け取っていない年金を受け取ること」の2つに分かれる
- マイナンバーが収録されていれば死亡の届出は原則省略できるが、未支給年金は請求しなければ支給されない
- 年金は後払いで、亡くなった月の分まで支給されるため、未支給年金が生じていないかの確認が必要になる
- 請求できるのは、亡くなった当時に生計を同じくしていた一定のご遺族で、順位が定められている
- 未支給年金は相続財産ではなく、請求する方が自己の名で受け取る権利
- 時効の起算点は亡くなった日ではなく、支払期月の翌月の初日から5年
手続きそのものは難しいものではありませんが、どなたが請求できるのか、別居していた場合に何を示せばよいのかで手が止まりやすい部分です。
書類のそろえ方や、どなたが請求できるのかの整理でお困りのことがありましたら、ご相談ください。
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