※この記事は2026年8月時点の情報に基づく一般的な解説です。昔の相続でどの割合を確認することになるかは、亡くなった日、相続人の組み合わせ、その後の相続の重なり方によって一人ひとり異なります。実際のお手続きの前に、戸籍については市区町村の窓口、不動産登記については法務局や司法書士、相続税については税務署や税理士、遺産分割調停など家庭裁判所の手続が関係する場合は家庭裁判所や弁護士、相続人調査や相続関係の整理については行政書士にご確認ください。

何十年も前に亡くなった方の相続が、手つかずのまま残っている。名義変更をしないまま時間が過ぎ、いま整理しようとしている。相続のご相談では、こうした場面がしばしばあります。

このとき、いまの法定相続分をそのまま当てはめると、結論が変わってしまうことがあります。配偶者の相続分は、昭和56年1月1日を境に引き上げられているからです。

この記事では、昭和55年の民法改正で何が変わり、どの相続にどちらの相続分が適用されるのかを整理します。


目次

  1. 昔の相続では、いまの相続分で判断できないことがあります
  2. 昭和56年1月1日が境界になります
  3. 配偶者の相続分はどう変わったのか
  4. 見るのは「亡くなった日」です|遺産分割をした日ではありません
  5. 遺留分もあわせて変わっています
  6. 寄与分は昭和55年改正で新設されました
  7. 兄弟姉妹の代襲相続も、時期によって範囲が違います
  8. どこから専門家へつなぐか
何十年も前に亡くなった配偶者の相続を整理するとき、亡くなった日によって確認する相続分が変わることを、行政書士から説明を受けている様子を描いたイラスト

昔の相続では、いまの相続分で判断できないことがあります

配偶者と子が相続人であれば、配偶者は2分の1。多くの方がご存じの割合です。

ただ、これは現在の民法の話です。昭和55年12月31日以前の相続では、時期や相続人の組み合わせによって、現在とは異なる割合を確認する必要があります。たとえば、昭和23年1月1日以後から昭和55年12月31日までに開始した相続で、配偶者と子が相続人であれば、配偶者の相続分は3分の1でした。

割合が違えば、遺産分割の前提が変わります。何十年も経ってから手続きをする場合でも、当時の割合で考えることになります。

古い相続では、そもそもどの法律が適用されるかを確認するところから始まります。その全体像については、昔の相続の調べ方で整理しています。この記事は、そのうち相続分の部分を詳しく見ていくものです。


昭和56年1月1日が境界になります

昭和55年に民法が改正され、昭和56年1月1日から施行されました。正式には「民法及び家事審判法の一部を改正する法律」(昭和55年法律第51号)といいます。

この改正で、配偶者の法定相続分が引き上げられました。あわせて、遺留分の割合や寄与分の制度など、いくつかの見直しも行われています。

どちらの割合を確認するかは、昭和56年1月1日を境に分かれます。昭和55年12月31日以前に開始した相続については改正前の割合を、昭和56年1月1日以後に開始した相続については改正後の割合を確認することになります。

なお、少なくとも昭和23年1月1日以後、昭和55年12月31日までに開始した相続については、次の表の「昭和55年12月31日以前」の割合を確認することになります。それより前の時期については、そもそもどの法律が適用されるかから確認が必要です。


配偶者の相続分はどう変わったのか

改正の前後で、配偶者の相続分は次のように変わりました。

相続人の組み合わせ昭和55年12月31日以前昭和56年1月1日以後
配偶者と子配偶者 3分の1配偶者 2分の1
配偶者と直系尊属配偶者 2分の1配偶者 3分の2
配偶者と兄弟姉妹配偶者 3分の2配偶者 4分の3

3つの類型すべてで、配偶者の取り分が引き上げられています。

たとえば、配偶者と子2人が相続人の場合を考えてみます。昭和56年1月1日以後であれば、配偶者が2分の1、子がそれぞれ4分の1ずつです。これが昭和55年12月31日以前だと、配偶者は3分の1になります。改正前は子全体の取り分が3分の2だったため、子が2人ならそれぞれ3分の1ずつです。

配偶者と兄弟姉妹の場合も同じです。いまは配偶者が4分の3ですが、当時は3分の2でした。

割合が変われば、遺産分割協議書に書く内容や、税務上の確認事項にも影響することがあります。古い相続を整理するときに、まず確認しておきたい点です。


見るのは「亡くなった日」です|遺産分割をした日ではありません

どちらの割合が適用されるかは、被相続人が亡くなった日で決まります。

昭和55年の改正法には、経過措置が置かれています。この法律の施行前に開始した相続については、改正前の民法の規定を適用する、という内容です。相続が開始した日、つまり亡くなった日を基準にする、という定めです。

ここで大事なのは、遺産分割をいつ行ったかは関係がないということです。

何十年も前に亡くなった方の相続を、いま遺産分割しようとしている。この場合でも、適用されるのは当時の割合です。手続きを今日行うからといって、いまの相続分になるわけではありません。

古い相続では、この点で認識が食い違うことがあります。「今の法律で分ければいい」と考えていたところ、当時の割合で計算し直すことになった、という場面です。

亡くなった日が昭和55年12月31日以前か、昭和56年1月1日以後か。まずはここを戸籍で確認することになります。


遺留分もあわせて変わっています

昭和55年の改正では、遺留分の割合も引き上げられました。

遺留分は、一定の相続人に最低限確保される取り分のことです。改正前は、直系卑属だけが相続人である場合と、直系卑属と配偶者が相続人である場合に財産の2分の1、それ以外の場合は3分の1とされていました。

改正後は、直系尊属だけが相続人である場合が3分の1、それ以外の場合が2分の1に整理されました。その結果、配偶者が関わる場面の遺留分の総額が、3分の1から2分の1に引き上げられています。

⚠ 条文の番号にご注意ください
昭和55年当時の遺留分の規定は民法1028条でした。現在は民法1042条です。現行の1028条は配偶者居住権に関する規定で、遺留分とはまったく別の内容です。古い資料を見るときは、条文番号だけで判断しないようご注意ください。

遺留分についても、適用されるのは相続が開始した日の規定です。昭和55年12月31日以前に開始した相続であれば、当時の割合を確認することになります。


寄与分は昭和55年改正で新設されました

昭和55年の改正では、寄与分の制度が新しく設けられました。民法904条の2です。

寄与分は、被相続人の事業を手伝った、療養看護に努めたといった事情で、財産の維持や増加に特別の貢献をした相続人について、その貢献分を相続分に加算できるという仕組みです。

この制度は昭和56年1月1日から施行されました。昭和55年12月31日以前に開始した相続には、寄与分は適用されません。 古い相続で「長年世話をしてきた」という事情があっても、昭和55年12月31日以前に開始した相続では、少なくとも昭和55年改正で新設された寄与分の制度としては扱えません。

⚠ 特別寄与料とは別の制度です
寄与分(民法904条の2)は相続人に認められるものです。相続人以外の親族が請求できる特別寄与料(民法1050条)は、平成30年の改正で設けられた別の制度で、施行時期も内容も異なります。混同しないようご注意ください。


兄弟姉妹の代襲相続も、時期によって範囲が違います

昭和55年の改正では、兄弟姉妹の代襲相続についても見直しが行われました。

現在は、兄弟姉妹が相続人になる場面での代襲相続は、甥や姪の1代限りとされています。これは昭和56年1月1日以後に開始した相続についてのことで、それ以前は、甥や姪より下の世代にも代襲が及ぶ場合がありました。

ただし、この記事では代襲相続の制度そのものには深く立ち入りません。ここで確認しておきたいのは、古い相続では、配偶者の相続分だけでなく、兄弟姉妹の代襲相続についても相続開始日ごとの確認が必要になる、という点です。

代襲相続の仕組みそのものについては、代襲相続と数次相続の違いで詳しく説明しています。


どこから専門家へつなぐか

古い相続の整理は、亡くなった日を確認し、戸籍で相続人を確定するところから始まります。そこから先は、内容によって関わる専門家が変わります。

内容主な専門家
戸籍収集・相続人調査・相続関係の整理・争いのない場合の遺産分割協議書の文案行政書士
不動産の登記・家庭裁判所に提出する書類の作成司法書士
相続人間の対立・協議が調わない場合・遺産分割調停などで法的代理が必要な場合弁護士
相続税の申告が必要かどうかの判断・税額の計算税理士

古い相続では、相続人の数が想定より多くなることがあります。何十年もの間に次の世代の相続が重なり、面識のない親族が相続人に含まれる、ということも起こります。

相続人同士で意見が対立し、協議がまとまらない場合は、弁護士への相談が必要になります。また、相続人の所在が分からず家庭裁判所の手続が必要になる場合には、手続の内容に応じて司法書士や弁護士への確認が必要です。

どの専門家に相談すればよいか迷われる場合は、相続の相談先の選び方もあわせてご覧ください。


まとめ

何十年も前の相続を整理するときは、いまの相続分をそのまま当てはめず、亡くなった日を基準に確認していくことが大切です。

  • 配偶者の法定相続分は、昭和56年1月1日から引き上げられた
  • 昭和55年12月31日以前に開始した相続には、改正前の割合が適用される
  • 基準は亡くなった日であり、遺産分割をいつ行うかは関係がない
  • 遺留分の割合も同時に引き上げられている。条文番号は当時と現在で異なる
  • 寄与分は昭和56年1月1日から。それ以前に開始した相続には適用されない
  • 兄弟姉妹の代襲相続の範囲も、相続開始日によって異なる

古い相続は、確認すべき点が積み重なります。順を追って一つずつ確認していけば、整理できることがほとんどです。

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「うりずん」とは、私の故郷・沖縄のことばで「春から初夏にかけて新緑が芽吹く季節」を意味します。大切なご家族を亡くされたつらい時期を過ごされている皆さまが、少しでも前を向いて新しい一歩を踏み出していただけるようお支えしたい――そんな想いで、お一人おひとりのご事情に丁寧に向き合っています。