「相続の相談は、どこにすればいいのだろう」——ご家族を亡くされた方から、手続きのご相談と同じくらい多くいただくのが、この「相談先そのもの」についてのご質問です。

無理もありません。行政書士、司法書士、税理士、弁護士、社会保険労務士——いわゆる「士業」だけでも5つあり、名前は似ているのに、それぞれ専門分野が異なります。「とりあえず相談したら、うちでは扱えませんと言われた」「複数の事務所を回ることになって、費用も手間も二重になった」という声も、実際によく耳にします。

先に結論をお伝えすると、相談先は「お悩みの中身」で決まります。そして同時に、入口はひとつでかまいません。専門家どうしが連携する体制さえあれば、最初の窓口がすべての交通整理をしてくれるからです。この記事では、川崎・横浜で相続手続きの窓口を務めている社会保険労務士・行政書士の視点から、5つの士業それぞれに「頼めること・頼めないこと」を早見表と具体例で整理し、迷わない相談の始め方をご案内します。


目次

  1. 結論:相談先は「お悩みの中身」で決まる——でも、入口はひとつでいい
  2. 相続の相談先は大きく6つ:それぞれの得意分野
  3. 【早見表】お悩み別・相談先の一覧
  4. 行政書士に相談できること:書類づくりと手続きの実務
  5. 司法書士に相談できること:不動産の相続登記
  6. 税理士に相談できること:相続税の申告と税金の相談
  7. 弁護士に相談できること:相続人どうしに争いがあるとき
  8. 社会保険労務士に相談できること:遺族年金・未支給年金
  9. よくあるご質問(FAQ)
相続の相談先を8コマで解説。①結論:相談先はお悩みの中身で決まる・入口はひとつでいい ②相続を支える士業は大きく5つ ③行政書士:書類づくりと手続きの実務 ④司法書士:不動産の名義変更(相続登記) ⑤税理士:相続税の申告と税金の相談 ⑥弁護士:相続人どうしに争いがあるとき ⑦社労士:遺族年金・未支給年金の請求 ⑧迷ったら、全体を見てくれる窓口へ

1. 結論:相談先は「お悩みの中身」で決まる——でも、入口はひとつでいい

最初に、この記事の結論をまとめます。

  • 不動産の名義変更(相続登記)は司法書士が中心、相続税の申告は税理士、相続人どうしの争い・交渉の代理は弁護士が中心になります。これらは法律上の専門分野がはっきりしているため、たとえば行政書士が単独で登記申請や税務申告、紛争の代理交渉まで行うことはできません。
  • 戸籍の収集や遺産分割協議書などの書類作成、銀行・役所の手続きは行政書士が、遺族年金・未支給年金は社会保険労務士が支えます。
  • ただし実際の相続では、ひとつのご家庭にこれらが同時に発生します。預金もあれば自宅もあり、年金の手続きもあれば税金の心配もある——だからこそ、相談先を自分で振り分ける必要はありません。
  • 専門家どうしが連携している窓口をひとつ選べば、必要な専門家へ適切につないでもらえます。大切なのは「どの士業か」より、「連携の体制があるか」です。

🌱 大切なポイント
家を建てるとき、施主が大工さん・電気屋さん・水道屋さんに別々に発注することはありません。工務店という窓口がひとつあれば、必要な職人さんを段取りしてくれます。相続も同じです。最初の窓口をひとつ決めて、あとは連携に任せる——これが、手間も費用のムダもいちばん少ない進め方です。


2. 相続の相談先は大きく6つ:それぞれの得意分野

相続の相談先は、大きく次の6つに分けられます。

  • 行政書士:戸籍の収集による相続人調査、遺産分割協議書などの書類作成、銀行口座の解約手続きのサポート、自動車の名義変更といった「手続きの実務」
  • 司法書士:不動産の名義変更(相続登記)など、法務局に関わる手続き
  • 税理士:相続税の申告、亡くなった方のその年の所得税の申告(準確定申告)、税金の個別相談
  • 弁護士:相続人どうしの争いごとの代理・交渉、調停・審判
  • 社会保険労務士:遺族年金・未支給年金など、年金事務所に関わる手続き
  • その他:市区町村や士業団体の無料相談会、銀行(信託銀行)の遺産整理サービスなど

5士業の業務には、法律上はっきり線引きされている部分があります。特に、登記申請・税務申告・紛争の代理交渉は、担当できる専門家が限られます。一方で、戸籍の収集や相続関係の整理のように、複数の専門家が関与し得る実務もあります。だからこそ、依頼の前に「誰が何を担当するのか」を確認することが大切です。「この事務所だけですべて完結します」という説明があったときも、その中身——どの専門家がどの部分を担うのか——を確かめる価値があります。


3. 【早見表】お悩み別・相談先の一覧

お悩み・やりたいこと主な相談先
誰が相続人になるのか調べたい(戸籍収集)行政書士・司法書士など
遺産分割協議書を作りたい(争いなし)行政書士・司法書士など
自宅や土地の名義変更(相続登記)司法書士
相続税がかかるか知りたい・申告したい税理士
遺産分割協議がまとまらない・揉めている弁護士
遺族年金・未支給年金を請求したい社会保険労務士
銀行口座の解約・払い戻し行政書士などの専門家がサポート可能
相続放棄をしたい司法書士(書類作成)・弁護士

誰が相続人になるのかの基本ルールは法定相続人と法定相続分|誰がどれだけ相続する?早見表でわかる順位と割合で、相続税がかかるかどうかの見極め方は相続税はいくらから?|基礎控除3,600万円の計算と申告が必要なケースで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。


4. 行政書士に相談できること:書類づくりと手続きの実務

行政書士は、官公署に提出する書類や、権利義務・事実証明に関する書類の作成を専門とする国家資格です。争いがない場合の相続書類の作成は、行政書士が対応しやすい分野です。相続の場面では、次のような実務を担います。

  • 戸籍の収集と相続人の確定:亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をたどり、相続人を確定します(相続人調査|戸籍を集める3つのルート)。
  • 遺産分割協議書の作成:相続人全員の合意内容を、銀行や役所でそのまま使える書面にまとめます(遺産分割協議書の書き方と雛形)。
  • 財産目録の作成、銀行口座の解約・払い戻しのサポート、自動車の名義変更 など。

一方で、行政書士にはできないこともはっきりしています。不動産の登記申請、相続税の申告、そして相続人の間に争いがある場合の交渉や代理です。誠実な行政書士ほど、この線を越えそうな場面では早めに他の専門家へつなぎます。


5. 司法書士に相談できること:不動産の相続登記

自宅や土地など不動産の名義変更(相続登記)は、司法書士が中心となって担う分野です。法務局へ提出する登記申請を代理できるのは、司法書士と弁護士に限られます。

特に重要なのが、相続登記は2024年4月から義務化されていることです。不動産を相続したことを知った日から原則3年以内に登記を申請しないと、正当な理由がないのに怠った場合、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。「実家をそのまま放置している」というご家庭は少なくありませんが、いまは放置にリスクがある時代です。

このほか司法書士は、相続放棄の申述書など家庭裁判所に提出する書類の作成も扱います(相続放棄の制度と期限は相続放棄の期限と手続きをご覧ください)。


6. 税理士に相談できること:相続税の申告と税金の相談

相続税の申告と、個別の税金の相談は税理士の専門分野です。遺産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えそうな場合や、配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を使いたい場合は、税理士の出番になります。

  • 相続税の申告(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内)
  • 亡くなった方のその年の所得税の申告(準確定申告・相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内)
  • 不動産の評価、生前贈与や二次相続まで見すえた税金の相談

「うちは相続税がかかるのだろうか」という入口の見極めまでは、ご自身でも十分にできます相続税はいくらから?で判定のしかたを解説していますので、まず確かめてみて、超えそうであれば早めに税理士へ——この順番が効率的です。


7. 弁護士に相談できること:相続人どうしに争いがあるとき

相続人の間で話し合いがまとまらない、連絡を取り合えない、遺産の使い込みが疑われる——「争い」の要素が出てきたら、相談先は弁護士です

  • 他の相続人との交渉の代理
  • 家庭裁判所での遺産分割調停・審判
  • 遺留分侵害額請求(最低限の取り分を侵害された場合の請求)など

ここだけは間違えないでください
相続人の間に争いがあるとき、本人に代わって交渉できるのは弁護士だけです。行政書士や司法書士が間に入って相手方と交渉することは、法律で認められていません。「揉めはじめたかもしれない」と感じた時点で、書類づくりの段階でも早めに弁護士へつなぐのが、結果的にご家族を守ります。当事務所でも、争いの気配があるご相談は、ためらわず弁護士をご紹介する方針です。

逆に、争いがないご家庭がはじめから弁護士に依頼する必要はありません。費用面でも、手続き型の専門家(行政書士・司法書士など)のほうが負担を抑えられるのが一般的です。


8. 社会保険労務士に相談できること:遺族年金・未支給年金

意外と知られていないのが、年金の専門家=社会保険労務士という相談先です。ご家族が亡くなったとき、年金まわりでは次の手続きが発生します。

  • 遺族年金の請求:要件の確認から年金事務所への請求まで。制度は複雑で、2028年4月には改正も予定されています(【2028年4月改正】遺族厚生年金はこう変わる)。
  • 未支給年金の請求:亡くなった月の分まで、受け取っていない年金を遺族が請求できます。
  • 年金受給権者死亡届の提出:日本年金機構にマイナンバーが収録されている方は、原則として届出を省略できます。届出が必要な場合に遅れると、亡くなった後の年金が振り込まれてしまい、後日返還が必要になることがあります。

なお、2028年4月から遺族厚生年金の見直しが予定されていますが、現在すでに受給している方や、子のある配偶者、高齢の方などについては経過措置・配慮措置があります。ご自身のケースでどうなるかは、年齢、お子さまの有無、加入歴などによって異なりますので、不安をあおる情報だけで判断せず、落ち着いて確認しましょう。

遺族年金は、ご遺族のこれからの生活を支える大切な収入です。「もらえるはずのものを、知らずに請求していなかった」ということが起きやすい分野でもあるため、手続きに不安があれば社会保険労務士にご相談ください。相続発生後の手続き全体の流れは親が亡くなったらやるべき10のことで整理しています。


9. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 複数の専門家に頼むと、費用が二重になりませんか?

A. 窓口をひとつにすれば、ムダは避けられます。連携体制のある事務所なら、必要な専門家の業務だけを過不足なく組み合わせ、全体の見積りを最初に示してくれます。逆に、ご自身で別々に依頼すると、戸籍収集などの基礎作業が事務所ごとに重複し、費用も手間も増えがちです。依頼前に「総額でいくらか」「どの専門家が何を担当するのか」を確認しましょう。

Q2. 市区町村や士業団体の無料相談は使えますか?

A. 有効な入口です。30分程度で一般的な道筋を教えてもらえるので、「そもそも何が問題なのか」を整理するのに向いています。ただし時間が限られるため、戸籍や財産資料を踏まえた個別具体の判断までは難しいのが実情です。無料相談で全体像をつかみ、必要に応じて個別の専門家へ——という二段構えがおすすめです。

Q3. 銀行(信託銀行)の遺産整理サービスはどうですか?

A. 窓口がひとつになる点は便利ですが、一般に、専門家へ直接依頼するより費用は高くなりやすいといわれます。実際の作業の多くは提携する士業が担う仕組みのため、内容と費用の内訳を確認し、専門家事務所の見積りと比較してから決めることをおすすめします。

Q4. 資格を持っていれば、誰でも相続に詳しいのですか?

A. 実は、そうとは限りません。どの士業にも専門分野があり、相続をほとんど扱わない事務所もあります。ホームページやご相談の場で、相続案件の取扱い実績や、他士業との連携体制を確認してみてください。

Q5. まだ誰も亡くなっていませんが、将来に備えた相談はどこへ?

A. 生前の備え(遺言書の作成、任意後見、身元保証、死後事務の委任など)も、内容に応じて相談先が決まります。遺言書や任意後見契約などの書類づくりは行政書士が対応しやすく、将来の紛争予防を重視するなら弁護士も頼りになります。当事務所でも生前対策のご相談を承っています。


まとめ

最後に、この記事の要点を整理します。

  • 相続の相談先はお悩みの中身で決まる:登記=司法書士が中心、税=税理士、争い=弁護士、書類・手続き=行政書士、年金=社会保険労務士。
  • 登記申請・税務申告・紛争の代理交渉は担当できる専門家が法律上限られる。一方で複数の専門家が関与し得る実務もあるため、「誰が何を担当するのか」を最初に確認する。
  • 争いの気配が出たら、交渉を代理できるのは弁護士だけ。早めの切り替えが家族を守る。
  • 実際の相続ではこれらが同時に発生するからこそ、連携体制のある窓口をひとつ選ぶのが、手間も費用もムダのない進め方。
  • 無料相談は全体像の整理に有効。個別の判断は、資料を踏まえた専門家への相談で。

「どこに相談すればいいか分からない」という迷いは、それ自体がご遺族の大きな負担です。この記事が、最初の一歩を踏み出す道しるべになればうれしく思います。

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。相続の手続きは、戸籍・銀行・法務局・税務署・年金事務所と提出先が多岐にわたるうえ、3か月・10か月といった期限のあるものも含まれます。「誰に何を頼めばいいのか」を整理するだけでも、気持ちはずっと軽くなるはずです。それでも迷われたら、どうかお一人で抱え込まないでください。

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うりずん相続手続き相談室では、「どこに相談すればいいか分からない」という段階の最初の窓口として、戸籍の収集による相続人調査、財産調査、遺産分割協議書の作成、銀行口座の解約手続きのサポート、遺族年金・未支給年金の請求支援など、行政書士・社会保険労務士として対応できる手続きを中心にお手伝いしています。相続登記や相続税申告、紛争対応が必要な場合には、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携し、必要な専門家へ適切におつなぎします。市区町村や年金事務所での手続きに不安をお持ちの方も、どうぞ安心してご相談ください。

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