ニュースなどで「遺族年金が5年で打ち切りになる」という言葉を目にして、不安に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。配偶者を亡くされたときの生活を支える遺族年金は、ご家族にとって何より気がかりな制度です。その遺族年金が、2025年6月に成立した年金制度改正法によって、2028年4月から大きく変わることが決まりました。

最初に、いちばん大切なことをお伝えします。いますでに遺族年金を受け取っていらっしゃる方の年金が、この改正で打ち切られたり減らされたりすることはありません。今回の見直しは、施行後に新たに遺族年金を受け取ることになる方から、世代に応じて段階的に適用されるものです。

とはいえ、「自分や家族にはいつから関係するのか」「何がどう変わるのか」は、報道だけでは分かりにくいのが実情です。この記事では、遺族厚生年金の5年有期給付化、男女差の解消、中高齢寡婦加算の段階的廃止といった改正のポイントを、社会保険労務士として一つずつ丁寧にご説明します。ご自身とご家族の備えのために、落ち着いて確認していきましょう。


目次

  1. 遺族年金は2028年4月からこう変わる ― 改正の全体像
  2. 最大の変更点 ― 子のない配偶者の遺族厚生年金が「原則5年」の有期給付に
  3. 改善される点 ― 60歳未満の夫も対象に、収入要件は廃止
  4. 5年で終わらないための配慮 ― 有期給付加算・継続給付・死亡分割
  5. 中高齢寡婦加算は段階的に廃止へ
  6. 子のいるご家庭はどうなる ― 遺族基礎年金の見直し
  7. 遺族年金の2028年改正についてよくあるご質問
遺族厚生年金の2028年4月改正|5年有期給付化・男女差解消・中高齢寡婦加算の段階的廃止・いま受給中の方は変わらない、までを解説した8コマ図解

本文中の制度内容は、2025年6月13日に成立した年金制度改正法にもとづく2026年時点の情報です。施行(2028年4月)までに政省令などで細部が定まる部分がありますので、最新の取り扱いは年金事務所または専門家にご確認ください。

1. 遺族年金は2028年4月からこう変わる ― 改正の全体像

今回の見直しの対象は、主に遺族厚生年金(会社員・公務員だった方が亡くなられたときの遺族年金)です。2025年6月13日に年金制度改正法が成立し、遺族年金に関する部分は2028年4月に施行されます。

背景にあるのは、世帯のかたちの変化です。現行の遺族厚生年金は「夫が働き、妻が家庭を守る」という時代の世帯モデルを前提に、妻と夫とで受給の条件に大きな差がありました。共働き世帯が多数となったいま、この男女差を解消し、配偶者を亡くされた直後の生活再建を手厚く支える制度へ改めることが、今回の改正の目的とされています。

主な変更点を一覧にすると、次のとおりです。

変更点内容どちら向きの変更か
5年の有期給付化18歳年度末までの子のない配偶者への遺族厚生年金が、男女とも原則5年間の給付に給付期間の見直し
男性への拡大これまで対象が限られていた60歳未満の夫も受け取れるように拡充
収入要件の廃止年収による受給制限(収入要件)を廃止し、生計が同一であれば対象に拡充
有期給付加算5年間の年金額を手厚く加算(現行の約1.3倍となる見込み)拡充
継続給付5年経過後も、所得が一定以下の方や障害のある方などには給付を継続配慮措置
死亡分割亡くなった方の厚生年金記録を分割し、65歳以降の老齢厚生年金に上乗せ新設
中高齢寡婦加算新たに受給権が発生する方から段階的に縮小・廃止給付の見直し
子の加算の増額遺族基礎年金の子の加算額を引き上げ拡充

🌱 大切なポイント
今回の改正は、施行後(2028年4月以降)に新たに遺族年金を受け取ることになる方から、世代に応じて段階的に適用されます。すでに遺族年金を受給している方、施行前に受給が始まった方は、これまでどおりで、5年で打ち切られることはありません。「いま受け取っている年金がなくなるのでは」というご心配は不要です。


2. 最大の変更点 ― 子のない配偶者の遺族厚生年金が「原則5年」の有期給付に

今回の改正でもっとも大きく変わるのが、18歳年度末(18歳に達した後の最初の3月31日)までの子がいない配偶者への遺族厚生年金です。

現行制度と改正後を比べてみましょう。

現行(〜2028年3月)改正後(2028年4月〜)
子のない(30歳未満)5年間の有期給付原則5年間の有期給付
子のない(30歳以上)無期限(生涯)60歳未満で死別の場合、原則5年間へ段階的に移行
子のない55歳以上のみ対象(支給は60歳から)60歳未満も対象となり、原則5年間の有期給付

これまで、子のない30歳以上の妻は遺族厚生年金を生涯受け取れましたが、改正後は男女ともに、60歳になる前に配偶者を亡くした場合は原則5年間の給付に揃えられます。なお、60歳以上で配偶者を亡くされた場合は、これまでどおりの取り扱いです。

⚠ 「全員が5年で打ち切り」になるわけではありません
この5年有期給付がすぐに適用されるのは、ごく限られた範囲です。女性については約20年かけて段階的に移行し、施行直後に対象となるのは2028年度末時点で40歳未満(おおむね1989年度以降生まれ)の、子のない方からとされています。それより上の世代の女性、子を養育中の方、すでに受給中の方は、従来の取り扱いが続きます。ご自身がどちらに当たるか分からないときは、年金事務所や社会保険労務士にご確認ください。

また、お子さまがいるご家庭では、子が18歳年度末を迎えるまでは従来どおり遺族年金を受け取れます。有期給付の考え方が及ぶのは、「配偶者が亡くなった日」または「子が18歳年度末に達した日」のいずれか遅い日からとされており、子育て中に給付が打ち切られる仕組みではありません。


3. 改善される点 ― 60歳未満の夫も対象に、収入要件は廃止

今回の改正は「給付が短くなる」面ばかりが報道されがちですが、拡充される点も少なくありません。

ひとつめは、男性(夫)への対象拡大です。現行制度では、妻を亡くした夫は「55歳以上」でなければ遺族厚生年金の対象にならず、共働きで妻が家計を支えていたご家庭では、夫と子どもの生活が保障されにくいという課題がありました。改正後は、60歳未満の夫も妻と同じ条件で遺族厚生年金(原則5年)を受け取れるようになります。

ふたつめは、収入要件の廃止です。現行では、残された配偶者に一定以上の収入(年収850万円以上など)があると遺族厚生年金を受け取れませんでしたが、改正後はこの要件が廃止され、亡くなった方と生計が同一であったことだけが要件になります。

🌱 共働き世帯にとっては「受け取りやすくなる」改正です
ご自身に収入があることを理由に対象外とされてきた方や、これまで対象でなかった50代前半までの夫も、改正後は遺族厚生年金を受け取れるようになります。配偶者の死亡という生活の激変期に、働いていても・男性でも等しく支えが届くようにすることが、今回の見直しの柱のひとつです。


4. 5年で終わらないための配慮 ― 有期給付加算・継続給付・死亡分割

「5年たったら、その後の生活はどうなるのか」――ここがいちばんのご心配だと思います。改正では、有期給付化とあわせて、次の3つの仕組みが設けられます。

仕組み内容
有期給付加算5年間の遺族厚生年金に加算が上乗せされ、年金額は現行の約1.3倍となる見込み。死亡直後の生活再建期を、期間は短くともより手厚く支える趣旨です
継続給付5年経過後も、所得が一定以下の方障害の状態にある方などには、最長65歳まで引き続き給付が行われます。「5年で一律に打ち切り」ではありません
死亡分割亡くなった配偶者の婚姻期間中の厚生年金記録の一部を、残された配偶者の記録に分割して上乗せする新しい仕組み。65歳以降のご自身の老齢厚生年金が増額され、老後の保障が厚くなります

📖 「死亡分割」は老後への備えです
死亡分割は、離婚のときの年金分割に似た仕組みで、配偶者を亡くされた方の将来の老齢厚生年金を底上げするものです。5年間の有期給付(当面の生活再建)と死亡分割(老後の保障)を組み合わせて、短期と長期の両面で支える設計になっています。分割の対象や割合などの細部は、施行までに政省令で定められる予定です。


5. 中高齢寡婦加算は段階的に廃止へ

遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの子のない妻(または子が18歳年度末を迎えた妻)に上乗せされる「中高齢寡婦加算」(2026年度で年63万5,500円)という制度があります。妻だけを対象とした加算であるため、男女差の解消にあわせて、段階的に縮小し、廃止されることになりました。

ここでも大切なのは、適用のされ方です。縮小の対象となるのは、施行後に新たに遺族厚生年金の受給権が発生する方からで、25年かけて段階的に縮小・廃止される予定です。すでに中高齢寡婦加算を受け取っている方が、改正によって打ち切られることはありません。

中高齢寡婦加算の現行の仕組み(どんな方が・いくら・いつまで受け取れるか)は、次の記事で詳しくご説明しています。

➡ 関連ページ:中高齢寡婦加算とは|遺族厚生年金に上乗せされる40〜64歳の妻への支え
中高齢寡婦加算の受給要件・金額・期間など、現行制度の全体像をまとめています。改正後のスケジュールとあわせてご覧ください。


6. 子のいるご家庭はどうなる ― 遺族基礎年金の見直し

お子さまのいるご家庭に支給される遺族基礎年金についても、拡充の方向で見直しが行われます。

ひとつは、子の加算額の引き上げです。遺族基礎年金などに上乗せされる子の加算が引き上げられ、これまで額の少なかった第3子以降も第1子・第2子と同額の、一律年28万1,700円(令和6年度価格)になります。この引き上げは、すでに加算を受け取っている方も含めて適用される拡充で、お子さまを育てながらの生活をより手厚く支えます。

もうひとつは、子に支給される遺族基礎年金の支給停止ルールの見直しです。現行では、遺族基礎年金の受給権を持たない父母と生計を同じくしている子には年金が支給停止される仕組みがあり、たとえば再婚家庭などで子に年金が届かないケースがありました。改正後は、こうした場合でも子ども自身に年金が届くように改められます。

🌱 子育て中のご家庭は、従来どおり守られます
くり返しになりますが、5年の有期給付化は「18歳年度末までの子のない配偶者」のお話です。お子さまがいらっしゃる間は、遺族基礎年金・遺族厚生年金ともに従来どおり受け取れます。そのうえで子の加算は増額されますので、子育て世帯にとっては拡充の面が大きい改正といえます。

なお、遺族年金そのものの受給要件や請求の流れ(どこに・何を出すか)は、改正後も基本的な手順は変わりません。請求手続きの全体像は、次の記事をご覧ください。

➡ 関連ページ:遺族年金の請求手続き完全ガイド|社労士が教える受給要件と必要書類
遺族基礎年金・遺族厚生年金の受給要件、金額の目安、請求の流れと必要書類まで、遺族年金の全体像をまとめています。


7. 遺族年金の2028年改正についてよくあるご質問

最後に、ご相談の場でよくいただくご質問をまとめました。いずれも個別のご事情によって結論が変わりますので、最終的にはご自身の状況にあてはめてご確認ください。

Q. いま遺族年金を受け取っています。5年で打ち切られてしまいますか

いいえ。すでに受給している方、施行(2028年4月)前に受給が始まった方は、これまでどおりです。今回の改正が適用されるのは、施行後に新たに遺族年金を受け取ることになる方からで、それも世代に応じて段階的に進められます。いま受け取っていらっしゃる年金が、改正を理由に打ち切られたり減額されたりすることはありません。

Q. 改正は、いつ・誰から適用されますか

施行は2028年4月です。5年有期給付の対象となるのは施行後に受給権が発生する方からで、女性については約20年かけて段階的に移行します。施行直後に対象となるのは、2028年度末時点で40歳未満の、18歳年度末までの子のない女性からとされています。男性(60歳未満の夫)は施行後の死別から新たに対象となります。ご自身の生年月日でどう変わるかは、年金事務所や社会保険労務士にご確認いただくのが確実です。

Q. 中高齢寡婦加算をいま受け取っています。なくなりますか

すでに受給中の方の中高齢寡婦加算が、改正によって打ち切られることはありません。縮小・廃止の対象は、施行後に新たに受給権が発生する方からで、長期間かけて段階的に進められます。ご不安な場合は、ねんきんダイヤルや年金事務所で、ご自身の加算の扱いを確認してみてください。

Q. 今からできる備えはありますか

まずは、万一のときにご自身・配偶者がどの遺族年金をいくら受け取れるのかを知ることが出発点です。「ねんきん定期便」やねんきんネットで厚生年金の加入記録を確認し、そのうえで、改正後に5年有期の対象となりうる世代の方は、民間保険や貯蓄を含めた保障全体の見直しを検討されるとよいでしょう。ご家庭ごとに最適な備えは異なりますので、社会保険労務士など年金の専門家に試算を依頼されることをおすすめします。


★ まとめ:改正を正しく知って、慌てず備える

遺族厚生年金の2028年改正のポイントを、最後に整理します。

  1. 施行は2028年4月 … 2025年6月成立の年金制度改正法により、遺族厚生年金が見直される
  2. 子のない配偶者は原則5年の有期給付に … ただし女性は約20年かけて段階移行。60歳以上での死別はこれまでどおり
  3. 拡充もある … 60歳未満の夫が対象に、収入要件は廃止、5年間は約1.3倍の加算、子の加算も増額
  4. 5年で一律打ち切りではない … 継続給付や死亡分割など、その後を支える仕組みが用意される
  5. いま受給中の方は変わらない … 改正は施行後に新たに受給する方から段階適用

制度の変わり目には、不正確な情報や過度に不安をあおる見出しも出回りがちです。「自分の場合はどうなるのか」を正しく知ることが、何よりの備えになります。

➡ 関連ページ:ご遺族のための年金手続き|未支給年金・遺族年金の請求サポート
遺族年金や未支給年金の請求を、社会保険労務士がサポートいたします。


ここまでお読みくださり、ありがとうございました。年金制度の改正は、言葉も仕組みも難しく、「自分の暮らしがどうなるのか」と不安に感じられるのは当然のことです。けれども、今回の改正は施行までにまだ時間があり、いま受給中の方の年金が変わるものでもありません。正しく内容を知り、ご自身の場合にあてはめて確認しておけば、慌てる必要はありません。「私はどうなるの?」と少しでも気になられたことがあれば、どうかお一人で抱え込まれないでください。

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「うりずん」とは、私の故郷・沖縄のことばで「春から初夏にかけて新緑が芽吹く季節」を意味します。大切なご家族を亡くされたつらい時期を過ごされている皆さまが、少しでも前を向いて新しい一歩を踏み出していただけるようお支えしたい――そんな想いで、お一人おひとりのご事情に丁寧に向き合っています。