ご主人を亡くされたばかりの皆さま。
心から、お悔やみ申し上げます。

ご主人に先立たれ、これからの暮らしを考えると、「遺族年金だけで、生活していけるのだろうか」という不安が押し寄せてくる方も多いのではないでしょうか。お子様がすでに独立されていたり、お子様がいらっしゃらないご家庭では、その不安はなおさら大きいかもしれません。

そんな40代から60代の奥様の暮らしを支えるために設けられているのが、「中高齢寡婦加算(ちゅうこうれいかふかさん)」という制度です。
この記事では、中高齢寡婦加算とはどのような制度か、いくら受け取れるのか、受け取れるのはどんな方か、いつまで続くのか、そして2025年に決まった制度の見直しまでを、社会保険労務士としてやさしく整理してご説明します。ご無理のないよう、一つずつ確認していきましょう。


目次

  1. 中高齢寡婦加算とは何か
  2. いくら受け取れるのか(令和8年度の金額)
  3. 受け取れるのはどんな方か(年齢と夫の加入期間)
  4. いつまで受け取れるのか──65歳で変わること
  5. 65歳以降の「経過的寡婦加算」
  6. 2025年の改正で何が変わるのか
  7. 請求の進め方と専門家のサポート
  8. 中高齢寡婦加算についてよくあるご質問
中高齢寡婦加算をやさしく整理|対象・金額・65歳・2025年改正の図解

1. 中高齢寡婦加算とは何か

中高齢寡婦加算とは、ご主人を亡くされた奥様が受け取る「遺族厚生年金」に上乗せされる、定額の加算のことです。対象となるのは、おおむね40歳から65歳になるまでの奥様です。

なぜ、この年代の奥様に上乗せがあるのでしょうか。遺族年金にはもう一つ「遺族基礎年金」という種類があり、こちらはお子様のいるご家庭の生活を支えるための制度です。そのため、お子様がいらっしゃらない奥様や、お子様がすでに成長されて遺族基礎年金を受け取れなくなった奥様は、遺族基礎年金の支えを受けられません。

たとえば、お子様がすでに社会人として独立されている奥様や、お子様のいらっしゃらない奥様を思い浮かべてみてください。ご主人を亡くされたあと、遺族基礎年金は受け取れず、遺族厚生年金だけが頼り――しかも40代・50代では再び十分な収入を得ることが必ずしも容易ではない、という状況になりがちです。こうした中高年期の奥様の暮らしの不足を補うために設けられたのが、この中高齢寡婦加算です。

この制度は、あくまで遺族厚生年金を受け取れる奥様への「上乗せ」という位置づけです。遺族厚生年金そのものとは別に、条件を満たせば自動的に判定されるものですが、ご自身が対象かどうかは見落とされやすいため、しっかり確認しておかれると安心です。

なお、この制度は名前のとおり「寡婦」=妻を対象としたもので、現在のしくみでは夫には同様の加算がありません。この男女の違いについては、2025年に成立した制度改正で見直しが決まっています。詳しくは後ほど第6章でご説明します。


2. いくら受け取れるのか(令和8年度の金額)

中高齢寡婦加算の金額は、年額 635,500円(令和8年度・2026年度)です。月額に直すと、およそ5万3千円ほどになります。これが遺族厚生年金の本体に上乗せされて支給されます。

この金額は、毎年度の物価や賃金の動きに応じて改定されます。次の年度には変わる可能性がありますので、最新の金額は年金事務所の窓口でご確認いただくのが確実です。

📖 金額の決まり方
中高齢寡婦加算の額は、遺族基礎年金(満額)の4分の3にあたる金額として定められています。令和8年度の遺族基礎年金(満額)は847,300円ですので、その4分の3で 635,500円 となります。

遺族厚生年金の本体は、亡くなられたご主人が受け取るはずだった老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3が基本となり、その金額はこれまでの収入や加入期間によって一人ひとり異なります。中高齢寡婦加算は、それに定額で加わる点が特徴です。

受け取るもの金額の考え方
遺族厚生年金(本体)ご主人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3。収入・加入期間により個人差あり
中高齢寡婦加算(上乗せ)定額・年額635,500円(令和8年度)。条件を満たす40〜65歳の奥様に加算

受け取りのイメージ

具体的な金額をイメージしていただくために、令和8年度を前提に一例を挙げます。たとえば、亡くなられたご主人の老齢厚生年金(報酬比例部分)が年額80万円だったケースを考えてみましょう。このとき、遺族厚生年金の本体はその4分の3にあたる年額60万円となります。ここに中高齢寡婦加算635,500円が上乗せされますので、奥様が受け取るのは合計で年額およそ124万円(月額にしておよそ10万3千円)という計算になります。

ただし、この金額はあくまでイメージをつかんでいただくための目安です。遺族厚生年金の本体は、ご主人のこれまでの収入や加入期間によって大きく変わりますし、奥様ご自身の老齢年金との関係によっても受取額は変わります。正確な金額は、ご主人の年金記録をもとに年金事務所の窓口で試算してもらうのが確実です。


3. 受け取れるのはどんな方か(年齢と夫の加入期間)

中高齢寡婦加算には、明確な「申請期限」はありませんが、受け取るための条件が決まっています。大きく分けて、次の2つのパターンのいずれかに当てはまる奥様が対象です。

パターンどんな奥様か
パターンAご主人が亡くなられたとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくするお子様がいない奥様
パターンBご主人が亡くなられたときはお子様がいて遺族基礎年金を受け取っていたが、お子様が18歳到達年度の末日(障害のあるお子様は20歳)を迎えて遺族基礎年金を受け取れなくなったとき、40歳以上65歳未満である奥様

たとえばパターンAは、お子様のいらっしゃらない52歳の奥様がご主人を亡くされた、というようなケースです。パターンBは、ご主人を亡くされたときは高校生のお子様がいて遺族基礎年金を受け取っていたが、そのお子様が高校卒業の年度末を迎えて遺族基礎年金が終わった――そのとき奥様が40歳以上65歳未満だった、というようなケースにあたります。

パターンBは、「お子様が小さいうちは遺族基礎年金で支え、お子様が成長して遺族基礎年金が終わったあとは中高齢寡婦加算が引き継いで支える」という、支えに切れ目をつくらないための仕組みだとお考えください。

そしてもう一つ、亡くなられたご主人の側にも条件があります。

⚠ 見落とされやすい「夫の加入期間」の条件
中高齢寡婦加算が受け取れるのは、原則としてご主人の厚生年金への加入期間が20年(240か月)以上ある場合(いわゆる「長期要件」)に限られます。ただし、在職中(厚生年金に加入したまま)に亡くなられた場合など(いわゆる「短期要件」)は、この20年以上という期間は問われません。ご自身がどちらに当てはまるかは判断が難しいため、年金事務所や専門家にご確認ください。

会社員として長くお勤めだったご主人であれば、20年以上の加入期間を満たしていることが多いものです。一方、転職や自営業との行き来があった場合や、お若くして在職中に亡くなられた場合などは、長期要件か短期要件かの見極めが受給の可否を分けます。「加入期間が足りないかもしれない」と早合点なさらず、まずは年金記録を確認することが大切です。

🌱 ご安心ください
「夫の加入期間が何年あったか分からない」という場合も、年金事務所でご主人の年金記録を確認できます。当事務所でも、亡くなられた方の年金記録の調査からお手伝いいたしますので、お一人で抱え込まれる必要はありません。


4. いつまで受け取れるのか──65歳で変わること

中高齢寡婦加算は、奥様が65歳になるまでの加算です。65歳を迎えると、中高齢寡婦加算は終わります。

「では、65歳になったら支えがなくなってしまうの」とご心配になるかもしれませんが、そうではありません。65歳からは、奥様ご自身の「老齢基礎年金」が始まります。中高齢寡婦加算は、いわば老齢基礎年金が始まるまでの間を埋める役割を担っており、65歳でご自身の老齢基礎年金へとバトンタッチする設計になっているのです。

年代ごとの受け取りの移り変わりを整理すると、次のようになります。

年代受け取りの中心となるもの
〜40歳未満(子がいない場合)遺族厚生年金(中高齢寡婦加算は付かないことがあります)
40歳〜65歳遺族厚生年金 + 中高齢寡婦加算
65歳〜遺族厚生年金 + ご自身の老齢基礎年金(一定の世代は経過的寡婦加算も)

このように、年代に応じて支えのかたちを変えながら、できるだけ切れ目が出ないように組み立てられています。

🌱 大切なポイント
65歳前後では、受け取る年金の組み合わせが変わります。ご自身の老齢年金と遺族厚生年金の関係(どちらがどのように優先されるかなど)によって受取額が変わることもあるため、65歳を迎える前に一度、年金の見込みを確認しておかれると安心です。


5. 65歳以降の「経過的寡婦加算」

65歳で中高齢寡婦加算が終わったあと、一定の年代の奥様には、今度は「経過的寡婦加算(けいかてきかふかさん)」という別の加算が引き継がれます。

対象となるのは、昭和31年(1956年)4月1日以前にお生まれの奥様です。昭和31年4月2日以降にお生まれの奥様には、この経過的寡婦加算は付きません。

なぜ生まれた年で分かれるのでしょうか。経過的寡婦加算は、世代による老齢基礎年金額の差を埋めるために設けられた、いわば移行措置だからです。古い世代の方は、国民年金に加入できる期間の制度上の事情から、ご自身の老齢基礎年金が満額に届きにくい場合がありました。そこで、65歳で中高齢寡婦加算がなくなっても受取総額が大きく下がらないよう、生年月日に応じた額を加算するのがこの制度です。金額は生年月日によって異なり、若い世代ほど少なくなるように設計されています。

ご自身が経過的寡婦加算の対象になるかどうかも、年金記録と生年月日から判断されます。該当する可能性がある方は、65歳の年金の切り替えのタイミングで忘れずに確認しておきましょう。中高齢寡婦加算から経過的寡婦加算への移行は、ご自身で別途申請するというよりも、年金の手続きの中で確認されるものですが、「自分は対象だったはずなのに反映されていない」ということがないよう、通知書の内容に目を通しておかれると安心です。


6. 2025年の改正で何が変わるのか

中高齢寡婦加算については、2025年(令和7年)に成立した年金制度の改正で、今後の見直しが決まりました。少し複雑ですので、2つの異なる改正を分けて整理します。混同されやすいところですので、ていねいにご説明します。

見直し① 中高齢寡婦加算は段階的に縮小される方向

一つめは、中高齢寡婦加算そのものの見直しです。2028年4月から、約25年という長い時間をかけて、加算額を段階的に減らし、最終的に廃止する方向が決まりました。減額の基準となるのは、2025年度の加算額(約62万円)です。これは、現在は妻だけが対象となっている制度を見直し、男女の差をなくしていくことを目的としています。

見直し② 遺族厚生年金「本体」の有期給付化(別の改正です)

二つめは、中高齢寡婦加算とは別軸の改正で、遺族厚生年金の本体に関するものです。子のいない配偶者が受け取る遺族厚生年金を、原則として5年間の有期給付とする見直しで、施行は2028年4月が予定されています。

この①と②はまったく別の改正です。整理すると、次のようになります。

見直し① 中高齢寡婦加算見直し② 遺族厚生年金 本体
内容加算額を段階的に減額し、最終的に廃止する方向子のない配偶者の遺族厚生年金を原則5年の有期給付に
開始時期2028年4月から約25年かけて2028年4月施行予定
ねらい男女差の解消男女差の解消・働く世代の支え方の見直し

「遺族年金が5年で終わる」という話と「中高齢寡婦加算が縮小される」という話を、一つのことのように受け取ってしまうと不安が大きくなりすぎてしまいますので、分けて理解することが大切です。

🌱 影響を受けない方々(どうかご安心ください)
今回の見直し、とくに②の有期給付化については、次のような方は影響を受けません
施行前から、すでに遺族年金を受け取っている方
18歳未満のお子様がいる方
60歳以降の方
すでに受け取っていらっしゃる方の年金が、改正によって突然打ち切られるわけではありません。

📖 5年の有期給付が終わったあとも
②によって遺族厚生年金本体が5年間の有期給付となる場合でも、中高齢寡婦加算は、その5年が終わったあとも単独で受け取れるしくみが予定されています。有期給付化と中高齢寡婦加算は別の制度ですので、片方が終わると同時にもう片方も消える、というものではありません。

なお、①②はいずれも2028年4月以降に段階的に始まる予定の改正です。施行の時期や具体的な減額の幅は、今後の政令などで詳細が定められていきます。ご自身がどの扱いになるかは生年月日や受給開始の時期によって変わりますので、実際の判断は年金事務所や社会保険労務士にご確認ください


7. 請求の進め方と専門家のサポート

⏰ 請求の期限:遺族厚生年金の請求は、受給権が発生したときから 5年以内

中高齢寡婦加算は、それだけを単独で申請するものではなく、遺族厚生年金の請求に伴って判定されます。その遺族厚生年金には、受給権が発生したときから5年で時効という期限がありますので、早めにお手続きを進められると安心です。

中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金の請求の中で、要件に当てはまるかどうかが判定されるしくみです。だからこそ、遺族厚生年金を請求する段階で、ご自身が加算の対象になるかをきちんと見極めておくことが大切になります。

ところが、ここまでご覧いただいたように、対象になるかどうかは奥様の年齢、お子様の有無、ご主人の厚生年金の加入期間、生年月日など、いくつもの条件がからみ合って決まります。「自分は対象なのか」を正しく判断するのは、簡単ではありません。

すでに遺族厚生年金を受け取っている方も、中高齢寡婦加算が上乗せされているか確認したことがない、という場合は、一度、年金証書や年金額の通知書をご覧になってみてください。要件を満たしているのに反映が漏れていないか、専門家がチェックすることもできます。

➡ 関連ページ:遺族年金の請求手続き完全ガイド|受給要件・必要書類・申請の流れ
中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金の請求と一体で進みます。遺族年金そのものの受給要件・必要書類・請求の流れは、こちらの記事で全体像を整理しています。

遺族年金の請求は、社会保険労務士の独占業務として法律に位置づけられているほど、専門性の高い手続きです。当事務所では、亡くなられた方の年金記録の調査から、受け取れる年金(中高齢寡婦加算や未支給年金などを含む)の確認、必要書類の収集、年金請求書の作成・提出の代行まで、一括してお引き受けしています。

➡ 関連ページ:ご遺族のための年金手続き|未支給年金・遺族年金の請求サポート

➡ 関連ページ:料金のご案内|年金請求代行・相続手続きセット料金


8. 中高齢寡婦加算についてよくあるご質問

最後に、ご相談の場でよくいただくご質問をまとめました。いずれも個別の事情によって結論が変わりますので、最終的にはご自身の状況にあてはめてご確認ください。

Q. パートで働いていますが、受け取れますか

働きながらでも、中高齢寡婦加算を含む遺族厚生年金を受け取れる場合があります。ただし、遺族年金には「亡くなられた方に生計を維持されていたこと」という条件があり、ご自身の収入が一定額(おおむね年収850万円未満)であることなどが確認されます。多くのパート勤務の方はこの範囲内に収まりますが、念のため確認しておくと安心です。

Q. 再婚した場合はどうなりますか

遺族厚生年金を受け取っている方が再婚されると、遺族厚生年金そのものの受給権が消滅し、それに伴って中高齢寡婦加算も終了します。事実婚(内縁関係)も同様に扱われます。届出が必要になりますので、ご注意ください。

Q. 夫は自営業で、国民年金だけでした。対象になりますか

中高齢寡婦加算は、あくまで遺族厚生年金への上乗せです。そのため、ご主人に厚生年金の加入歴がなく、遺族厚生年金が支給されない場合は、中高齢寡婦加算の対象にはなりません。ただし、国民年金には「寡婦年金」「死亡一時金」といった別の給付があり、そちらの対象になる可能性があります。

Q. 子どもが18歳になったら、自分で手続きが必要ですか

パターンB(お子様の成長に伴って遺族基礎年金から切り替わる場合)では、年金の種類が変わるタイミングで届出や確認が必要になることがあります。切り替えが自動で完了するとは限りませんので、お子様が18歳到達年度の末日を迎える前後で、年金事務所に確認しておくと安心です。

Q. 自分が対象かどうか、どこで確認できますか

お近くの年金事務所や年金相談センターで、ご主人の年金記録とあわせて確認できます。「条件が複雑でよく分からない」という場合は、社会保険労務士にご相談いただくと、対象の有無や受け取れる金額の見込みを整理してお伝えできます。


★ まとめ:対象かどうか迷われたら、まずは確認を

中高齢寡婦加算は、遺族基礎年金の支えが届かない40代から60代の奥様を、遺族厚生年金に上乗せして支えるための、大切な制度です。令和8年度の金額は年額635,500円、65歳からはご自身の老齢基礎年金へと引き継がれ、一定の世代の方にはその後「経過的寡婦加算」も用意されています。

2025年に成立した改正で、2028年4月から段階的な見直しが始まる予定ですが、すでに受け取っている方の年金が突然なくなるわけではありません。不確かな情報だけで不安を抱え込まれませんよう、ご自身の状況にあてはめて確認されることをおすすめします。

「自分は中高齢寡婦加算の対象になるのだろうか」「65歳からはどうなるのだろう」と迷われたら、どうかお一人で抱え込まれないでください。

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「うりずん」とは、私の故郷・沖縄のことばで 「春から初夏にかけて新緑が芽吹く季節」 を意味します。ご主人を亡くされたつらい時期を乗り越え、皆さまが 新しい一歩を踏み出していただける よう、お一人おひとりのご事情に丁寧に向き合ってまいります。