相続手続きの基礎

実家をどう分ける?|現物分割・代償分割・換価分割の違いと、選ぶ前に確認すること

掲載:Officeうりずん社会保険労務士・行政書士事務所 代表・資格情報

相談室で50代の女性とその兄が行政書士と向かい合い、実家の分け方について相談しているイラスト

※この記事は2026年9月時点の情報に基づく一般的な解説です。どの分け方を選べるか、どのような手続や費用が必要になるかは、遺産の内容、相続人の人数や意向、不動産の状況などによって異なります。相続登記については法務局や司法書士、土地の分筆については土地家屋調査士、不動産の評価については不動産鑑定士、税金については税務署や税理士、遺産分割調停の申立てについては家庭裁判所、話し合いがまとまらない場合の対応については弁護士、相続人の調査や遺産分割協議書の作成については行政書士にご確認ください。

母が亡くなり、相続人は兄と私の2人になりました。遺産のほとんどは、兄が母と一緒に暮らしていた実家です。

兄は、このまま実家に住み続けたいと話しています。私も兄に出ていってほしいわけではありませんが、きょうだいで公平に分けたいとは思っています。ただ、家は1つしかなく、切り分けることもできません。どうやって分ければよいのでしょうか——そうしたご相談をいただきます。

このコラムでは、家庭裁判所の案内で紹介されている不動産の分け方と、それぞれを選ぶ前に確認しておきたいことを整理します。


目次

  1. 分け方を決めないと、実家はどうなるのか
  2. 家庭裁判所の案内で紹介されている分け方
  3. 現物分割|遺産をそのままの形で分ける
  4. 代償分割|一人が取得して、ほかの相続人にお金を払う
  5. 換価分割|売って、代金を分ける
  6. 共有分割|複数の相続人で持つ
  7. どの分け方にするか|評価額も確認する
  8. 話し合いがまとまらないとき
  9. ご相談いただけること
実家を兄と2人で相続した50代の女性が、現物分割・代償分割・換価分割などの分け方や、代償金を支払えるかの確認、売却前の相続登記について行政書士から説明を受けている様子を描いたイラスト

分け方を決めないと、実家はどうなるのか

まず、遺産分割をしないままでいると、実家がどのような状態になるのかを確認しておきます。

法務省は、遺産分割をしていない場合には、全ての相続人が法定相続分の割合で不動産を取得(共有)した状態になると説明しています。ご相談の例でいえば、兄と相談者が、それぞれの法定相続分の割合で実家を持っている状態です。

また法務省は、共有状態になった財産の管理や処分は相続人同士で決めなければならず、不便なことが多くなること、時間が経つと次の世代の相続が起きて権利関係が複雑になることを挙げ、早めに遺産分割を行うことが大切だとしています。

なお、遺産分割で不動産を取得した場合には、遺産分割から3年以内に、その内容に応じた登記をする必要があります。

共有のままにした場合に起きることは、共有名義の不動産は何が困るのかで詳しく解説しています。


家庭裁判所の案内で紹介されている分け方

家庭裁判所は、遺産分割調停の案内の中で、遺産の分け方を紹介しています。東京家庭裁判所の案内では、主な方法として「現物分割」「代償分割」「換価分割」の3つが挙げられています。京都・広島・福岡・山口などの家庭裁判所の案内では、これに「共有分割」を加えた分け方が紹介されています。

相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で分けるときも、どのような形で分けるかを決めることになります。家庭裁判所の案内は調停の手続についての説明ですが、話し合いで分け方を考えるときの手がかりになります。

分け方どう分けるかご相談の例でのイメージ
現物分割遺産をそのままの形で分ける実家は兄、預貯金は相談者
代償分割一人が取得し、ほかの相続人に代償金を支払う兄が実家を取得し、相談者に代償金を支払う
換価分割売却して、代金を分ける実家を売り、代金を2人で分ける
共有分割複数の相続人で共有して取得する実家を兄と相談者の共有にする

⚠ 「○○分割」は、法律の条文の言葉ではありません
これらは家庭裁判所の案内で使われている呼び方で、法律の条文に書かれた名前ではありません。案内によって、挙げている分け方の数や並べる順番も異なります。

以下、それぞれの分け方と、選ぶ前に確認しておきたいことを見ていきます。


現物分割|遺産をそのままの形で分ける

京都家庭裁判所の案内では、現物分割は遺産そのものを分ける方法と説明されています。福岡・山口などの家庭裁判所の遺産分割手続の案内では、不動産の場合の例として、複数の不動産を相続人がそれぞれ別々に取得するような分け方が挙げられています。

ご相談の例では実家は1つですが、「実家は兄、預貯金は相談者」のように、遺産ごとに取得する人を決める形も、遺産をそのままの形で分けるという点では同じ考え方です。ただし、取得する遺産の金額に差があるときにどう調整するかは、次の代償分割の話につながります。

土地そのものを分けたい場合は、1つの土地を複数に分ける分筆の登記を申請することになり、その申請には地積測量図などを添付します。分筆の登記や土地の境界に関わることは土地家屋調査士、名義を移す登記は司法書士の業務です。


代償分割|一人が取得して、ほかの相続人にお金を払う

京都家庭裁判所の案内では、代償分割は、相続人のうち一人または数人が遺産そのものを取得し、ほかの相続人にお金(代償金)を支払う方法と説明されています。

ご相談の例でいえば、兄が実家を取得し、相談者に代償金を支払う形です。家庭裁判所の遺産分割手続の案内(山口・岡山)では、代償金の金額は話合いで決めることになると説明されています。

⚠ 代償金を払えるかどうかを、先に確かめておきましょう
京都家庭裁判所の遺産分割調停の案内では、代償分割について「代償金を支払う相続人に,支払うだけの資力がなければなりません」と説明されています。

また、代償金をいつまでに支払うかを決めておくかどうかで、支払いが遅れたときに、いつから遅れた扱いになるかが変わります(民法の定め)。取り決めを協議書にどう書くかは、遺産分割協議書の書き方と雛形で解説しています。

話し合いで決めた代償金が支払われなかった場合について、最高裁判所は次のように判断しています。

最高裁判所 平成元年2月9日判決(裁判要旨)
「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が右協議において負担した債務を履行しないときであつても、その債権を有する相続人は、民法五四一条によつて右協議を解除することができない。」
最高裁判所 平成2年9月27日判決(裁判要旨)
「共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができる。」

いずれも裁判所が公表している裁判要旨で、判決当時の法律に基づく判断です。実際に代償金が支払われない場合にどう対応するかは事情によって異なるため、弁護士にご相談ください。

代償金の額と相続税との関係は、相続税が払えないときどうする?で触れています。また、亡くなった方の配偶者が自宅に住み続けたい場合には、配偶者居住権という仕組みもあります。詳しくは配偶者居住権って使うべき?をご覧ください。


換価分割|売って、代金を分ける

京都家庭裁判所の案内では、換価分割は、遺産を売却して、その代金を分割する方法と説明されています。

どのような場合に選ばれるかについて、京都家庭裁判所の遺産分割調停の案内では、遺産を取得したい相続人がいない場合や、取得したい相続人がいてもその人に代償金の支払能力がない場合などに「選択されることがあります」と説明されています。福岡・山口家庭裁判所の案内にも、同じ趣旨の記述があります。

売り方については、山口・岡山家庭裁判所の遺産分割手続の案内で、相続人全員の協力によって任意で売却する方法と、競売にする方法があると説明されています。

⚠ 売る前に、相続登記が必要です
法務省は、相続した不動産を売却するような場合には、相続登記をする必要があると案内しています。相続人申告登記は不動産の権利関係を公示するものではないため、売却の前には相続登記をしておく必要があります。

相続登記の手続は司法書士の業務です。売却のために誰の名義で相続登記をするかにはいくつかのやり方があり、協議書への書き方とあわせて、前述の遺産分割協議書の記事で解説しています。

売れるまでの間にかかる固定資産税などの遺産管理費用について、家庭裁判所の遺産分割手続の案内(岡山・福岡)では、原則として遺産分割の対象ではなく、別の問題として解決を図るものと考えられている、と説明されています。

不動産の売却の仲介は宅地建物取引業者の業務です。売却したときの税金については、相続した実家を売るときの税金で解説しています。税額や特例の適用は税理士にご確認ください。


共有分割|複数の相続人で持つ

京都家庭裁判所の遺産分割調停の案内では、共有分割は、遺産の全部または一部を複数の相続人が共有で取得する方法と説明されています。ご相談の例でいえば、実家を兄と相談者の共有にする形です。

山口家庭裁判所の遺産分割手続の案内では、不動産を単独で取得したい人がいない場合や、相続人全員での売却もしないというような場合に、「しばらくの間共有にしておくというもの」と説明されています。

一方で、家庭裁判所の遺産分割手続の案内(福岡・京都・山口)では、共有分割について、将来、共有者の間で管理や処分の方法などの意見が食い違ったときに、問題が生じる可能性があると説明されています。広島家庭裁判所の案内では、共有者はいつでもほかの共有者に「共有物分割」を求めることができるため、抜本的な解決にならない場合がある、とされています。

共有にした後、管理や売却をどのように決めていくのかは、前述の共有名義の記事で解説しています。


どの分け方にするか|評価額も確認する

では、どの分け方から考えればよいのでしょうか。

⚠ 「この順番で選ぶ」という決まりはありません
家庭裁判所の遺産分割手続の案内では、遺産の分け方は、各人の取得割合を枠組みとして、遺産の内容、利用状況、相続人の経済状況などの事情を総合して決めると説明されています。いくつかの分け方を組み合わせることもあります。

たとえば、実家は兄が取得し、預貯金は相談者が取得したうえで、なお残る差を代償金で調整する、というように、分け方を組み合わせる形もあります。広島家庭裁判所の案内でも、通常はいくつかの分け方を組み合わせて遺産分割すると説明されています。

それぞれの分け方を選ぶ前に確認しておきたいことを、表にまとめます。

分け方家庭裁判所の案内での説明確認しておきたいこと関わる専門家
現物分割遺産そのものを分ける方法土地を分けるなら分筆の登記が必要土地家屋調査士・司法書士
代償分割代償金を支払う相続人に、支払うだけの資力が必要(京都家庭裁判所の調停の案内)代償金を支払えるか/金額は話合いで決める弁護士(支払われない場合)・税理士
換価分割取得したい人がいない場合などに選択されることがある(京都家庭裁判所の調停の案内)売る前に相続登記が必要司法書士・宅地建物取引業者・税理士
共有分割将来、意見が食い違ったときに問題が生じる可能性がある(家庭裁判所の遺産分割手続の案内)共有にした後の管理や売却をどう決めるか弁護士・司法書士

代償金の金額を考えるときなどには、実家をいくらとして扱うかが話題になります。

家庭裁判所の調停・審判の説明では、固定資産税の評価額など、不動産鑑定士による鑑定評価額以外の評価は、相続人全員の合意がある場合に限って採用されるとされています(岡山家庭裁判所)。

また、名古屋家庭裁判所の調停の説明では、評価について意見が一致しないときは、裁判所が選ぶ鑑定人に鑑定を依頼することを検討する場合もあり、その場合は鑑定費用をあらかじめ納める必要があり、時間がかかることもある、とされています。そのため、評価方法と評価額は当事者間で合意して決める方法が最も多く利用されている、と説明されています。

不動産の鑑定評価は不動産鑑定士の業務です。

どの分け方を選ぶかによって、税の取扱いが問題になる場面が変わることがあります。税額や特例の適用については税理士にご確認ください。


話し合いがまとまらないとき

相続人の間で話し合いがつかない場合には、家庭裁判所の遺産分割の調停または審判の手続を利用することができます。

裁判所の案内では、調停手続では、当事者から事情を聴いたり、遺産について鑑定を行うなどして事情を把握したうえで、各相続人がどのような分け方を希望しているかを聴き、解決案の提示や助言をしながら、合意を目指して話合いが進められると説明されています。話合いがまとまらず調停が成立しなかった場合には、審判の手続に移り、裁判官が一切の事情を考慮して審判をすることになります。

大阪家庭裁判所の遺産分割調停の説明では、審判による分割方法には限界があり、たとえば競売でしか分けられない場合もあるとして、話し合いで解決する気持ちを持ち続けるよう呼びかけています。

相続人の間で意見が対立している場合や、調停の手続については弁護士に、家庭裁判所に提出する書類の作成については司法書士・弁護士にご相談ください。


ご相談いただけること

うりずん相続手続き相談室では、行政書士として、分け方を考えるための準備をお手伝いしています。

  • 相続人の調査と戸籍の収集
  • 遺産の内容をまとめた財産目録の作成
  • 話し合いの前提となる資料や事実関係の整理
  • 話し合いで決まった内容での遺産分割協議書の作成

相続登記は司法書士、土地の分筆は土地家屋調査士、不動産の評価は不動産鑑定士、税金は税理士、話し合いがまとまらない場合は弁護士の業務です。必要に応じて、提携する専門家におつなぎします。どの専門家に何を相談すればよいかは、相続の相談はどこにする?で整理しています。


まとめ

実家のように切り分けられない遺産の分け方について整理しました。

分け方は1つではありません。 家庭裁判所の案内では、現物分割・代償分割・換価分割が紹介され、案内によっては共有分割も挙げられています。

決まった順番があるわけではありません。 事情を総合して決め、いくつかの分け方を組み合わせることもあります。

選ぶ前に確認しておきたいことがあります。 代償分割は代償金を支払えるか、換価分割は売る前の相続登記、共有分割は将来の意見の食い違いです。

不動産の評価額は、家庭裁判所の調停・審判では、合意がなければ鑑定によることがあります。 相続人の間で合意して決める方法が最も多く利用されている、と説明されています。

相続のお手続きでお困りの方へ

うりずん相続手続き相談室では、相続人調査や相続財産の調査からお手伝いしています。戸籍の収集、相続関係の整理、争いのない案件での遺産分割協議書案の作成など、行政書士として対応できる手続きを承ります。相続登記や相続税、相続人の間で争いがある場合には、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携し、必要な専門家へ適切におつなぎします。まずはお話をお聞かせください。どうぞ安心してご相談ください。

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