相続の権利・割合

親の預金は遺産分割が終わるまで動かせない|最高裁大法廷の決定が意味すること

掲載:Officeうりずん社会保険労務士・行政書士事務所 代表・資格情報

亡くなった父の預金について相談する30代後半の女性に、行政書士が机の上の通帳を示して説明しているイラスト

※この記事は2026年10月時点の情報に基づく一般的な解説です。預貯金の相続の扱いや手続きは、相続の状況や金融機関によって異なります。決定が個別の相続にどう当てはまるかは弁護士、預貯金の手続きは取引のある金融機関にご確認ください。

相続人が複数いる場合、亡くなった親の預金(共同相続された預貯金)は、遺産分割で分け方が決まるまで、相続人の一人が単独で自由に払い戻すことはできません。その法律上の理由には、最高裁判所の決定があります。ただし、遺産分割の前でも一定の範囲で払戻しを受けられる制度があり、手続きは銀行口座が凍結された時の対処法の記事で説明しています。この記事では、決定が何を判断したのか、払戻しの制度とどうつながるのかを整理します。


目次

  1. 最高裁判所の決定が判断したこと
  2. 「動かせない」には例外がある
  3. この決定で変わったこと
  4. 決定の範囲と、確かめておきたいこと
  5. 行政書士に相談できること
亡くなった父の預金について相談する30代後半の女性が、遺産分割が終わる前の預金の扱いを行政書士から説明されている様子を描いたイラスト

最高裁判所の決定が判断したこと

相続人が複数いる場合の預貯金について、最高裁判所大法廷は、平成28年12月19日に次の決定をしました。

項目内容
事件番号平成27年(許)第11号
決定日平成28年12月19日
裁判所最高裁判所大法廷
主文原決定を破棄する。本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
裁判官の意見主文の結論は裁判官全員一致

決定は、「共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」と判示しています。

共同相続された預貯金は、相続が始まったときに相続人ごとの相続分に応じて自動的に分かれるのではなく、遺産分割で分け方を決める財産として扱われる、ということです。


「動かせない」には例外がある

法務省は、民法(相続法)改正の案内で、この決定によって、相続された預貯金債権が遺産分割の対象財産に含まれることとなり、共同相続人による単独での払戻しができないこととされたと説明しています。

そのうえで、遺産分割の前でも預貯金の払戻しを受けられるように、民法909条の2が設けられ、令和元年7月1日から施行されています。

遺産分割の前でも、一定の範囲で払戻しを受けられる制度があります。払い戻せる額の上限や計算の方法、家庭裁判所の手続きを経て受け取る方法、相続人全員の合意による手続きは、銀行口座が凍結された時の対処法の記事で説明しています。遺産分割が長引くときの選択肢は、相続手続きが長引くのはどこ?の記事でも触れています。

⚠ 「動かせない」には例外があります
遺産分割の前でも払戻しを受けられる制度があります。手続きは上の記事で確かめてください。


この決定で変わったこと

決定の本文によると、それまでの実務では、一般の可分債権が相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるという理解を前提としながら、遺産分割手続の当事者の同意を得て、預貯金債権を遺産分割の対象とする運用が広く行われていました。

この決定で、平成16年4月20日の最高裁判所第三小法廷判決など、これと異なる判例は変更されました。


決定の範囲と、確かめておきたいこと

判示が対象にしているのは、普通預金債権、通常貯金債権、定期貯金債権の3種類です。それ以外の預金や財産の扱いは、この決定の判示だけで決まるものではありません。

この決定があなたの相続にどう当てはまるかは、弁護士に確認してください。

相続人の間で分け方が決まったら、遺産分割協議書を作ります。作り方は、遺産分割協議書の書き方と雛形の記事で説明しています。


行政書士に相談できること

日本行政書士会連合会は、行政書士が遺産相続で引き受ける業務について、法的紛争段階にある事案や、税務・登記申請業務に関するものを除き、遺産分割協議書などの書類作成を中心に、その前提となる調査も含めて引き受けると案内しています。

当事務所では、相続人を確かめるための戸籍の収集や、相続人の間で合意ができている場合の遺産分割協議書の作成をお手伝いします。判例の解釈や個別の事案への当てはめ、金融機関との交渉は弁護士、相続登記は司法書士への相談をご案内します。


まとめ

共同相続された預貯金は、遺産分割の対象として扱われます。

  • 最高裁判所の決定は、共同相続された普通預金債権などについて、遺産分割の対象となると判断した
  • 相続人の一人が単独で自由に払い戻すことは原則としてできないが、遺産分割の前でも一定の範囲で払戻しを受けられる制度がある。手続きは銀行口座が凍結された時の対処法の記事で確かめる
  • 決定が自分の相続にどう当てはまるかは、弁護士に確認する

決定の意味が分かると、相続人の間で手続きの順番を話し合いやすくなります。

相続のお手続きでお困りの方へ

うりずん相続手続き相談室では、亡くなった親の預金が、なぜ遺産分割が終わるまで動かせないのかを知りたいという段階から、戸籍の収集による相続人調査、財産調査、遺産分割協議書の作成、銀行口座の解約手続きのサポート、遺族年金・未支給年金の請求支援など、行政書士・社会保険労務士として対応できる手続きを中心にお手伝いしています。相続登記や相続税申告、紛争対応が必要な場合には、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携し、必要な専門家へ適切におつなぎします。市区町村や年金事務所での手続きに不安をお持ちの方も、どうぞ安心してご相談ください。

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