※この記事は2026年9月時点の情報に基づく一般的な解説です。手続きにかかる期間は、相続人の人数や財産の種類、書類のそろい方などによって異なります。期限を過ぎた、または過ぎそうな場合の扱いは、手続きごとに家庭裁判所・所轄税務署・法務局、または弁護士・税理士・司法書士にご確認ください。

相続手続きには期限が決まっているものがある一方で、全部が終わるまでの期間は、相続人の人数や財産の種類、書類のそろい方によって大きく変わります。手続きが長引くときは、次の手続きに必要な情報や書類がそろわず、どこかの工程で止まっていることがよくあります。この記事では、期間の目安ではなく、止まりやすい工程と、先に整理しておきたいことをまとめます。


目次

  1. 期限が決まっている手続き
  2. 相続手続きは「必要なものがそろった順」に進む
  3. 止まりやすい工程①|戸籍が集まらない
  4. 止まりやすい工程②|同じ書類を何度も出し直す
  5. 止まりやすい工程③|金融機関ごとの手続き
  6. 止まりやすい工程④|相続人の足並みがそろわない
  7. 手続きが長引くときの選択肢|遺産分割前の払戻し制度
  8. 先に整理しておくこと
  9. 行政書士・社会保険労務士に相談できること
母を亡くして相続手続きが長引いている60代前半の女性が、全部が終わるまでの期間は人によって違うこと、戸籍がそろわないと次の手続きに進めないことがあること、法定相続情報一覧図の写しで戸籍の束を何度も出さずに済むこと、期限がある手続きを先に確認することについて、行政書士から説明を受けている様子を描いたイラスト

期限が決まっている手続き

相続手続きの中には、法律で期限が決められているものがあります。主なものは次のとおりです。

手続き期限根拠
相続放棄・限定承認自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(熟慮期間)民法915条1項
準確定申告相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内所得税法125条・国税庁の案内
相続税の申告被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内相続税法27条・国税庁の案内
相続登記の申請相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内。遺産分割があった場合は、遺産分割の日から3年以内の期限もある不動産登記法76条の2

相続税の申告書の提出先は、亡くなった方の住所地を所轄する税務署です。相続人の住所地を所轄する税務署ではありません。

民法は、相続人が相続の承認や放棄をする前に、相続財産の調査をすることができると定めています(915条2項)。期限の中で、まず調べる時間を取ることは認められています。

それぞれの期限の詳しい内容は、親が亡くなったらやるべき10のこと【期限付き手続き完全リスト】、相続放棄の期限と手続き、相続税の申告期限は10か月の記事で説明しています。


相続手続きは「必要なものがそろった順」に進む

相続手続きは、おおまかに次の流れで進みます。

  • 相続人を確かめる(戸籍を集める)
  • 財産を調べる
  • 分け方を決める(遺産分割協議書を作る)
  • 金融機関や法務局などで手続きをする

戸籍の収集と財産の調査のように、並行して進められる作業もあります。一方で、次の手続きに必要な情報や書類がそろわず、そこで止まってしまうことがあります。たとえば、相続人が確定しないと遺産分割協議書は作れませんし、協議書がないと進められない手続きもあります。

⚠ 全部が終わるまでの期間は、人によって大きく違います
相続人の人数、財産の種類、書類のそろい方によって変わるため、この記事では期間の数字ではなく、止まりやすい工程を整理します。


止まりやすい工程①|戸籍が集まらない

遺言書がない場合の預金の相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人全員の戸籍などが必要書類として案内されています。本籍地が何度も変わっている場合、この戸籍を集めるところで時間がかかります。

令和6年3月1日から、戸籍の広域交付が始まりました。本籍地以外の市区町村の窓口でも、全国各地の戸籍をまとめて請求できる制度です。ただし、コンピュータ化されていない一部の戸籍は広域交付では請求できず、本籍地の市区町村に請求する必要があります。

また、広域交付で請求できるのは、本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母など)・直系卑属(子・孫など)の戸籍証明書等です。兄弟姉妹の戸籍は、兄弟姉妹という関係だけでは広域交付の対象になりません。相続手続きのために兄弟姉妹の戸籍が必要な場合は、本籍地の市区町村への請求が必要になることがあります。請求できる範囲や必要なものは、本籍地の市区町村に確認してください。

戸籍の集め方は、相続人調査の記事で説明しています。


止まりやすい工程②|同じ書類を何度も出し直す

手続きのたびに戸籍の束を提出し、返ってくるのを待っていると、そのぶん時間がかかります。

法定相続情報証明制度を使うと、戸籍の束の代わりに、相続関係を一覧にした「法定相続情報一覧図の写し」を使えます。認証文付きの一覧図の写しは、法務局(登記所)で交付され、交付の手数料はかかりません(戸籍を集める費用は別にかかります)。相続登記のほか、預金の払戻し、相続税の申告、年金などの手続きでも使えるとされています。利用できるか分からない場合は、提出先の機関に問い合わせてください。

令和6年4月1日からは、相続登記の申請書に「法定相続情報番号」を記載すれば、一覧図の写しの添付を省略できるようになりました。ただし、法定相続情報番号は、不動産登記以外の手続きでは使えません。ほかの機関の手続きでは、一覧図の写しそのものが必要です。

一覧図の作り方は、法定相続情報一覧図の作り方の記事で説明しています。


止まりやすい工程③|金融機関ごとの手続き

全国銀行協会は、預金の相続手続きを、お取引金融機関への連絡、必要書類の準備、所定の書類の提出、払戻し等の手続き、という流れで案内しています。金融機関に亡くなったことを連絡すると、原則として口座での取引が制限されます。

必要な書類は、相続の方法や内容、お取引金融機関によって異なります。相続手続きの書類の書式も、金融機関ごとに決まっています。取引のある金融機関が複数あると、それぞれで準備と提出が必要になります。

全国銀行協会も、書類の提出後に手続きに日数がかかる場合もある、としています。どのくらい時間がかかるかは、金融機関によって異なります。また、提出した戸籍が出生から死亡まで連続していないと、出し直しを求められることがあります。


止まりやすい工程④|相続人の足並みがそろわない

遺言書がなく、遺産分割協議書を使って預金の相続手続きをする場合、金融機関への提出書類として、相続人全員の署名・実印の押印と印鑑証明書などが案内されています。相続人の間に争いがなくても、連絡の取り方や書類の回し方が決まっていないと、署名や書類がそろわず、そこで止まってしまうことがあります。

連絡や役割分担の整え方は、誰も反対していないのに相続が進まないの記事で説明しています。相続人の間で意見が分かれた場合は、弁護士に相談してください。


手続きが長引くときの選択肢|遺産分割前の払戻し制度

遺産分割が終わる前でも、相続人は、一定の範囲で単独で預金の払戻しを受けられます(民法909条の2)。

各相続人は、口座ごとに、相続開始時の預金額の3分の1に、その相続人の法定相続分を掛けた額まで、単独で払戻しを受けられます。ただし、同一の金融機関から単独で払戻しを受けられる額は、相続人1人につき150万円が上限です(口座ごとに150万円ではありません)。この上限は法務省令(平成30年法務省令第29号)で定められています。

払い戻した分は、その相続人が遺産の一部の分割によって取得したものとみなされます。手続きの詳しい流れは、銀行口座が凍結された時の対処法の記事で説明しています。


先に整理しておくこと

手続きが止まる前に、次のことを書き出しておくと、どこで止まっているのかが分かりやすくなります。

  • 相続人になりそうな人の一覧(戸籍で確かめる前の見込み)
  • 財産の手がかり(通帳、郵便物、証券会社や保険会社からの書類など)
  • 期限がある手続き(最初の表)
  • 手続きをする窓口の一覧(市区町村、法務局、お取引金融機関、所轄税務署など)

自分で進めるか、専門家に頼むかの判断は、相続手続きは自分でできる?専門家に頼むべき?の記事で整理しています。


行政書士・社会保険労務士に相談できること

当事務所では、止まっている工程と、期限がある手続きの整理をお手伝いしています。そのうえで、次のような手続きをサポートします。

  • 戸籍の収集による相続人の調査
  • 財産の調査、遺産分割協議書の作成
  • 銀行口座の解約手続きのサポート
  • 遺族年金・未支給年金の請求のサポート(社会保険労務士)

期限を過ぎた、または過ぎそうな場合は、どの期限かによって相談先が変わります。相続放棄の期限は家庭裁判所(手続きの案内)や弁護士、準確定申告や相続税は所轄税務署や税理士、相続登記は法務局や司法書士です。相続登記の申請は司法書士、税額の計算や申告は税理士、相続人の間の争いは弁護士の業務です。当事務所は、これらが必要な場合に、それぞれの専門家への相談をご案内します。


まとめ

相続手続きには期限が決まっているものがありますが、全部が終わるまでの期間は人によって違います。

  • 長引くときは、戸籍・書類の出し直し・金融機関の手続き・相続人の足並みのどこかで止まっていることが多い
  • 法定相続情報証明制度や遺産分割前の払戻し制度など、手続きを進めやすくする仕組みがある
  • 止まっている工程が分かれば、次にやることが決まる
  • 期限を過ぎそうなときは、どの期限かによって相談先が変わる

相続手続きは、どこで止まっているのかが分かれば、次にやることが見えてきます。一つずつ整理しながら進めていきましょう。

相続のお手続きでお困りの方へ

うりずん相続手続き相談室では、どこで止まっているのかが分からないという段階から、戸籍の収集による相続人調査、財産調査、遺産分割協議書の作成、銀行口座の解約手続きのサポート、遺族年金・未支給年金の請求支援など、行政書士・社会保険労務士として対応できる手続きを中心にお手伝いしています。相続登記や相続税申告、紛争対応が必要な場合には、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携し、必要な専門家へ適切におつなぎします。市区町村や年金事務所での手続きに不安をお持ちの方も、どうぞ安心してご相談ください。

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