※この記事は2026年8月時点の情報に基づく一般的な解説です。契約者が亡くなったあとの手続きは、契約している会社やお住まいの自治体、ご家族の状況によって一人ひとり異なります。実際のお手続きの前に、契約先の各社、お住まいの自治体の窓口、または行政書士・弁護士などの専門家にご確認ください。

葬儀が済んで、少し落ち着いたころ。故人名義の請求書が届く。カードは止めたはずなのに、引き落としの通知が来る。

契約者が亡くなったからといって、公共料金や通信契約が当然に整理されるわけではありません。多くの場合、ご遺族の側から名義変更や解約の手続きを行う必要があります。

見落とされやすいのは、クレジットカードを止めても、契約先との契約はそのまま残ることがあるという点です。順序を間違えると、止めたつもりの支払いが続いてしまいます。

この記事では、故人名義の契約をどう止めるか、あるいはどう引き継ぐかを、公共料金・携帯電話・サブスクリプションの順に見ていきます。スマートフォンの中のアカウントやデータをどう扱うかについてはデジタル遺品をご覧ください。


目次

  1. 契約者が亡くなっても、契約は自動で整理されない
  2. カードを止めても、契約先との契約は残る
  3. まず、契約先を特定する
  4. 公共料金|住み続けるなら名義変更、使わないなら解約
  5. 口座凍結で引き落としが止まる前に確認すること
  6. 川崎市・横浜市の水道手続きは扱いが違う
  7. 携帯電話・通信サービス|承継と解約で変わること
  8. 未払いを支払う前に|相続放棄との関係
夫を亡くした60代の女性が、契約者が亡くなっても契約は自動で整理されないこと、クレジットカードを止めても契約先との契約は残ることがあること、まず通帳や郵便物から契約先を特定すること、相続放棄を考えている場合は請求を支払う前に弁護士へ確認することについて、行政書士から説明を受けている様子を描いたイラスト

契約者が亡くなっても、契約は自動で整理されない

国民生活センターは、新聞購読契約に関する相談事例の中で、「相続人は契約者の地位を承継します」と説明しています。契約の種類によって手続きは異なりますが、契約者が亡くなっただけで、すべての契約が自動的に整理されるわけではありません。

手続きをしないままにしておくと、故人名義のまま請求が続くことがあります。携帯電話会社のなかには、手続きをしなければ故人名義で毎月の請求が続くと明記している会社もあります。

ご遺族が選ぶことになるのは、次の2つです。

  • 解約……その契約を終わらせる
  • 名義変更(承継)……契約を残したまま、契約者をご遺族に変える

どちらを選ぶかは、その契約をこれからも使うかどうかで決まります。住み続ける家がある電気やガスは名義変更、誰も使わなくなるサービスは解約、というのが基本的な考え方です。

なお、年金を受けていた方が亡くなった場合も、受給を止める手続きと、まだ受け取っていない年金を請求する手続きは別に考える必要があります。詳しくは年金受給者が亡くなったときの手続きをご覧ください。


カードを止めても、契約先との契約は残る

「引き落としに使っていたカードを止めれば、支払いは止まる」——そう考えたくなりますが、そう単純ではありません。

三井住友カード、JCB、楽天カードの公式案内では、カードの手続きとは別に、携帯電話や公共料金などの契約先へ連絡する必要があるとされています。カード会社によっては、契約先へ連絡した後も、しばらくカード払いが続く場合があると説明しているところもあります。

国民生活センターにも、「夫が亡くなり携帯電話を解約したが、カードの明細に身に覚えのない請求が残っている」という相談が寄せられています。

さらに、カードを止めて引き落としだけが止まった場合、サービス側の契約は残ったままです。未払いが残り、別途請求される可能性があります。

カードを止めても、契約は自動では終わりません。
カード会社の手続きとは別に、携帯電話・公共料金・サブスクなどの契約先へ連絡する必要があります。

進める順序は、次のようになります。

  • 故人がどこと契約していたかを特定する
  • 各契約先で、解約または名義変更・支払方法変更の手続きをする
  • そのうえで、クレジットカードを解約する

まず、契約先を特定する

手続きの出発点は、契約先を洗い出すことです。手がかりになるのは次のようなものです。

  • 預金通帳の引き落とし履歴
  • クレジットカードの利用明細
  • ご自宅に届く郵便物や検針票
  • パソコンやスマートフォンに届いている領収書メール

国民生活センターは、IDやパスワードがわからない場合でも、契約先の事業者が特定できれば、ご遺族から連絡することで解約などに応じてもらえるケースが多いと説明しています。ログインできないから諦める、という必要はありません。

なお、口座の引き落とし履歴を確認するには通帳や取引明細が必要になります。金融機関に死亡を伝えた後は取引が制限されるため、確認は早めにしておくと手戻りが少なくなります。


公共料金|住み続けるなら名義変更、使わないなら解約

電気・ガス・水道は、ご家族がその家に住み続けるかどうかで手続きが変わります。

住み続ける場合は、契約を残したまま契約者を変える「名義変更(承継)」を行います。ここで注意していただきたいのは、名義変更では、以前の契約者の未払い分を含めて引き継ぐ扱いになることがあるという点です。東京電力エナジーパートナーの電気需給約款や東京ガスの一般ガス供給約款では、名義変更により以前の契約者の権利義務や料金支払義務を引き継ぐことが定められています。水道についても自治体ごとに扱いが異なるため、未払い分の扱いは各水道局に確認してください。

誰も住まなくなる場合は、解約(使用中止)の手続きをします。空き家のまま契約を残しておくと、基本料金がかかり続けることがあります。

名義変更では、未払い分の扱いも確認してください。
契約先によっては、以前の契約者の未払い料金を含めて引き継ぐ扱いになることがあります。

手続き電気ガス水道
名義変更・使用者変更契約先で手続き契約先で手続き自治体の水道局で手続き
主な窓口電話が必要な場合ありウェブ・電話の場合ありお住まいの自治体
未払い料金の扱い引き継ぐ場合あり引き継ぐ場合あり自治体ごとに確認

電気は東京電力エナジーパートナー、ガスは東京ガスの案内をもとにしています。ご契約先の会社によって手続きの方法は異なります。

住み続ける家族がいる場合

名義変更の手続きをします。会社によって受付方法が違い、ご逝去にともなう名義変更をウェブで受け付けている会社もあれば、電話でのみ受け付けている会社もあります。手続きの前に、契約先の案内を確認してください。

誰も住まなくなる場合

解約(使用中止)の手続きをします。ただし、遺品の整理や不動産の売却がまだ終わっていない段階では、しばらく電気や水道を使う場面があります。いつ止めるかは、家の片づけの予定と合わせて決めるのが実務的です。

名義変更が必要になるものは公共料金だけではありません。全体像は名義変更チェックリストをご覧ください。


口座凍結で引き落としが止まる前に確認すること

金融機関に亡くなったことを伝えると、その口座の取引は原則として制限されます。全国銀行協会も、相続の連絡と同時に預金の入出金などが制限されると説明しています。

そうなると、その口座から引き落とされていた公共料金や通信料金の支払いができなくなることがあります。契約は残っているのに支払いだけが止まる、という状態です。

対処の方法があります。電力会社のなかには、契約の名義と引き落とし口座の名義が違っていても引き落としができると案内している会社があります。つまり、契約の名義変更が済んでいなくても、引き落とし口座だけを先にご遺族名義へ変えておくことができます。

ただし、支払方法の切り替えには時間がかかる場合があります。手続き方法によっては完了まで1〜2か月程度かかることもあるため、早めに確認しておくことが大切です。

引き落としが止まった状態を放置すると、延滞利息や供給停止の対象になることがあります。
日数や取扱いは契約先・自治体ごとに異なるため、届いた通知や各社の案内を確認してください。

たとえば東京ガスの一般ガス供給約款では、料金の不払いが続いた場合の供給停止と、停止前の予告についてのルールが定められています。ただしこれは東京ガスの約款に基づく説明であり、電気や水道にそのまま当てはまるものではありません。

口座が凍結されたあとの手続きについては口座凍結をご覧ください。


川崎市・横浜市の水道手続きは扱いが違う

水道は市町村(水道事業者)ごとに扱いが異なります。ここでは川崎市・横浜市の例として整理します。

項目川崎市横浜市
使用者の名義変更オンライン申請ができるお客さまサービスセンターへ連絡
家の所有者が変わる場合水道局へ確認給水装置所有者変更の手続きあり
滞納が続いた場合個別に案内3〜4か月を目安として案内

横浜市では、「水道の使用者の変更」と「給水装置の所有者の変更」が別の手続きとして案内されています。住んでいる方が変わるだけなのか、家そのものの所有者が変わるのかで、必要な手続きが違ってきます。相続で不動産の名義が変わる場合は、両方が必要になることがあります。

お住まいの自治体によって、手続きの名称も申込方法も異なります。
川崎市・横浜市以外にお住まいの場合は、その自治体の水道局にご確認ください。


携帯電話・通信サービス|承継と解約で変わること

携帯電話でも、多くの場合、承継(名義変更して使い続ける)か解約かを選ぶことになります。ご家族がその番号を引き継いで使うなら承継、使わないなら解約です。

ただし、細かいところは会社によってかなり違います。

承継できる方の範囲は、会社によって示し方が異なります。「ご家族」とだけ案内している会社もあれば、「原則二親等以内」と範囲を明示している会社もあります。

必要な書類と窓口も違います。解約であれば会葬礼状で亡くなったことの確認に足りるとしている会社がある一方、承継では戸籍などで続柄と死亡の両方の確認を求める会社もあります。窓口も、店舗での手続きが原則の会社、郵送で受け付ける会社、オンラインで進められる会社に分かれます。

解約しても、端末代金の分割払いの残りが消えるわけではありません。
支払いは続きますので、残債があるかどうかを手続きの前に確認してください。

残債の扱いにも例外があります。クレジットカードでの分割払いの場合、承継をしても端末代金の支払名義は変わらないと案内している会社があります。「承継すれば支払いも一緒に移る」と考えていると行き違いが起きます。

もうひとつ見落とされやすいのが、ポイントとIDです。たとえばドコモでは、個人名義の場合、dポイントやdアカウント、d払いの残高は承継では引き継げず、解約すると失効すると案内されています。会員IDについても、原則として承継できないとしている会社があります。

通信サービスは、承継そのものができない場合があります。
光回線のなかには、ご家族が引き継ぐことはできないと明記しているサービスもあります。


未払いを支払う前に|相続放棄との関係

ここまで見てきた未払い料金や端末代金の残債は、相続の対象になる債務です。民法896条は、相続人が被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めています。

そのため、相続放棄を考えている場合には注意が必要です。民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなすと定めています。単純承認とみなされると、そのあとで相続放棄をすることができなくなります。

どこまでが「処分」にあたるのかは、個別の事情によって判断が分かれます。この線引きについて、公的機関がわかりやすい基準を示しているわけではありません

相続放棄を考えている場合は、故人名義の請求を支払う前に、弁護士などの専門家へ確認してください。
「少額だから」「公共料金だから」といった自己判断は避けてください。

なお、相続するか放棄するかを決める期間は、原則として自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内とされています。時間の余裕は多くありません。


まとめ

故人名義の契約の整理について、押さえておきたい点を整理します。

  • 契約者が亡くなっても、契約が自動で整理されるわけではない
  • クレジットカードを止めても、契約先との契約は残ることがある
  • 手続きの順序は「契約先を特定 → 各契約先で手続き → カードを解約」
  • 公共料金は、住み続けるなら名義変更、使わないなら解約。未払い分の扱いを必ず確認する
  • 携帯電話は、必要書類・残債・ポイント・IDの扱いが会社ごとに違う
  • 相続放棄を考えているなら、故人名義の請求を支払う前に弁護士へ確認する

契約の整理は、ひとつひとつは難しくありませんが、数が多く、窓口もばらばらです。どこに何を出すのかの全体像は相続手続きに必要な書類一覧にまとめています。

契約先の洗い出しや、どこから手をつければよいかの整理でお困りのことがありましたら、ご相談ください。

相続のお手続きでお困りの方へ

うりずん相続手続き相談室では、亡くなった方の名義になっている契約の整理についてのご相談を承っています。契約先の洗い出し、必要書類の整理、戸籍や住民票の収集、各社へ提出する書類の作成、手続きの段取りのご案内など、行政書士・社会保険労務士として対応できる手続きを中心にお手伝いしています。不動産の登記や相続税・所得税の申告、相続放棄をするかどうかの判断、相続人の間の争いへの対応が必要な場合には、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携し、必要な専門家へ適切におつなぎします。

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「うりずん」とは、私の故郷・沖縄のことばで「春から初夏にかけて新緑が芽吹く季節」を意味します。大切なご家族を亡くされたつらい時期を過ごされている皆さまが、少しでも前を向いて新しい一歩を踏み出していただけるようお支えしたい——そんな想いで、お一人おひとりのご事情に丁寧に向き合っています。