※この記事は2026年8月時点の情報に基づく一般的な解説です。請求できる年金の種類や提出先、必要になる書類は、亡くなった方の加入歴、ご家族の状況、同居か別居かによって一人ひとり異なります。実際のお手続きの前に、年金事務所、街角の年金相談センター、お住まいの市区町村の窓口、関係する共済組合等、または社会保険労務士にご確認ください。
書類をひととおりそろえて、市区町村の窓口へ行く。ところが「こちらではお受けできません」と言われて、出直しになる。
遺族年金の請求では、請求書の様式も、提出先も1種類ではありません。亡くなった方がどの制度に加入していたかによって変わり、しかも例外があります。
もうひとつ手が止まりやすいのが、生計維持の証明です。「一緒に暮らしていた」「収入が基準より下だった」ことを、どの書類で示すのか。ここでつまずく方が少なくありません。
この記事では、どの様式をどこに出すのか、そして生計維持をどう証明するのかを順に見ていきます。遺族年金の制度そのもの——誰がいくら受け取れるのかについては遺族年金の請求手続き完全ガイドをご覧ください。
目次
- 遺族年金の請求書は1種類ではない
- 提出先は3つに分かれる|市区町村・年金事務所・第3号の例外
- 共済組合の期間がある場合|年金事務所でも共済組合でも相談できる
- 生計維持とは|生計同一と収入要件の2つで見る
- 収入や続柄をどう証明するか
- 別居・事実婚の場合は追加の申立書で説明する
- 請求から支給までの流れ
- 時効は5年|未支給年金とは起算点が違う
遺族年金の請求書は1種類ではない
「遺族年金の請求書」という1つの様式があるわけではありません。日本年金機構が用意しているのは、次の2つです。
- 年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付)……様式第105号
- 年金請求書(国民年金遺族基礎年金)……様式第108号
どちらを使うかは、亡くなった方がどの制度に加入していたかで決まります。会社員として厚生年金に加入していた方や、公務員・私立学校教職員など共済組合等の加入期間がある方について、遺族厚生年金を含めて請求する場合は様式第105号を使うのが基本です。自営業の方など国民年金だけだった場合は様式第108号になります。
いずれの様式にも、記入内容によって使う別紙があります。窓口で案内されますので、様式番号だけを頼りに取り寄せるより、どの年金を請求するのかを窓口で確認してから受け取る方が確実です。
インターネットで「遺族年金 請求書」と調べると、様式第105号だけが出てくることがあります。
ご自身のケースでどちらを使うのかは、提出先に確認してください。
提出先は3つに分かれる|市区町村・年金事務所・第3号の例外
ここが最もつまずきやすいところです。提出先は、請求する年金の種類によって変わります。
| 状況 | 使う主な請求書 | 提出先 |
|---|---|---|
| 遺族基礎年金のみを請求する場合 | 様式第108号 | お住まいの市区町村役場 |
| 遺族厚生年金を含む場合 | 様式第105号 | 年金事務所または街角の年金相談センター |
| 遺族基礎年金のみでも、死亡日が第3号被保険者期間中の場合 | 様式第108号 | 年金事務所または街角の年金相談センター |
3行目が例外です。日本年金機構は、遺族基礎年金のみの請求について提出先を市区町村役場としたうえで、「ただし、死亡日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターになります」と案内しています。
第3号被保険者とは、会社員や公務員など厚生年金に加入している配偶者に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者をいいます。たとえば、会社員の夫に扶養されていた妻が亡くなったようなケースでは、遺族基礎年金のみの請求であっても、市区町村役場ではなく年金事務所または街角の年金相談センターが提出先になります。
遺族基礎年金のみの請求でも、死亡日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、市区町村役場ではなく年金事務所または街角の年金相談センターが提出先になります。
「遺族基礎年金だけだから市区町村」と決めつけないようにしてください。
ご自身がどのケースに当たるか判断がつかないときは、書類をそろえる前に年金事務所へ電話で確認してください。取り寄せる書類も変わることがあります。
共済組合の期間がある場合|年金事務所でも共済組合でも相談できる
亡くなった方に公務員や私立学校の教職員だった期間がある場合、「共済組合に行かなければならないのでは」と考えがちですが、必ずしもそうではありません。
平成27年10月の被用者年金一元化後は、年金事務所や各共済組合等でワンストップ受付が行われています。共済組合等に加入していた期間がある場合でも、年金事務所で相談・受付できる場合があります。
ただし、受付の窓口が広がっただけで、最終的な決定や支払いを行う機関は、加入していた制度によって分かれます。年金証書が複数届くことがあるのはこのためです。
共済組合等の加入期間がある場合、請求書にマイナンバーと基礎年金番号の
両方を記入する扱いになっています。どちらか一方では足りません。
生計維持とは|生計同一と収入要件の2つで見る
遺族年金を受け取るには、亡くなった方に「生計を維持されていた」ことが要件になります。この言葉は日常語のようでいて、制度上は2つの要件でできています。
- 生計を同じくしていたこと(生計同一)
- 収入が一定額を超えていないこと(収入要件)
どちらか一方では足りません。両方を満たしている必要があります。
生計を同じくしていたこと
同居していた場合は、住民票などで同じ住所・世帯であることを確認するのが基本です。
別居していた場合は、そのままでは認められません。単身赴任や入院・入所といった事情があり、そのうえで経済的な援助があり、定期的な音信や訪問があったことを示す必要があります。この場合の書類については、後ほど改めて説明します。
収入が一定額を超えていないこと
現行の基準は、前年の収入が850万円未満、または所得が655万5千円未満であることです。
これを超えていても、諦める必要はありません。定年退職などの事情によって、近い将来(おおむね5年以内)に基準を下回ると認められる場合には、要件を満たすものとして扱われます。
収入要件は「いま」だけで判断されるわけではありません。
退職の予定がある場合は、その事情を窓口で伝えてください。
なお、2028年4月から、18歳年度末までの子のない配偶者に対する遺族厚生年金について、20代から50代を対象に、原則として5年間の有期給付とする見直しが予定されています。この有期給付については、収入要件を廃止する方向が示されています。
一方で、遺族基礎年金や、有期給付以外の遺族厚生年金について、同じように収入要件がなくなると確認できたわけではありません。改正の内容は【2028年4月改正】遺族厚生年金はこう変わるで整理しています。
収入や続柄をどう証明するか
生計維持の要件を満たしていることは、書類で示すことになります。
収入については、所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票などを使います。請求される方ご自身の分に加えて、お子さんが遺族年金の対象になる場合には、お子さんについても確認書類が必要になることがあります。ただし、義務教育を終える前であれば収入の書類は不要とされ、高等学校等に在学中であれば在学証明書や学生証のコピー等で確認されます。
続柄と死亡の事実については、戸籍謄本で確認されます。
ここで、書類を減らせる場合があります。マイナンバーを記入することで、住民票関係の書類や所得証明書などを省略できる場合があります。令和6年11月の取扱い改正で、マイナンバーによる情報連携で確認できる範囲が広がりました。
ただし、亡くなった方との続柄を確認する戸籍謄本などは、必要になるのが基本です。
省略できる書類は、請求する年金の種類やマイナンバーの収録状況によって変わります。
何をそろえるかは、窓口で確認してから動く方が確実です。先に住民票や所得証明書を取り寄せてしまい、あとから「その書類は省略できました」となることもあります。
別居・事実婚の場合は追加の申立書で説明する
同居していなかった場合や、婚姻届を出していない関係の場合は、申立書で状況を説明することになります。
別居していた場合
「生計同一関係に関する申立書」を提出します。様式は請求される方によって分かれており、配偶者または子が請求するときは様式3、それ以外の方が請求するときは様式4を使います。
申立書には、別居していた理由、生活費や療養費などの経済的な援助の状況、電話や訪問といった音信の状況を記入します。あわせて、送金がわかる通帳や振込明細、単身赴任・就学・入院などの事情がわかる書類を添えることになります。
なお、請求される方の続柄によって、求められる内容が変わります。配偶者や子の場合は経済的な援助と定期的な音信・訪問が問われますが、父母・孫・祖父母などの場合は、生活の基盤となる経済的な援助があったかどうかが中心になります。
事実婚の関係にある場合
婚姻届を出していなくても、事実上婚姻関係と同様の事情にある方は遺族年金の対象に含まれます。この場合は、事実婚関係および生計同一関係に関する申立書を求められることがあります。
別居や事実婚のケースは、書類の内容によって年金事務所の確認が入ります。
何をそろえればよいか迷われるときは、提出する前にご相談ください。
亡くなった方がまだ受け取っていない年金を請求する場合にも、生計同一関係を説明する申立書が必要になることがあります。ただし、遺族年金と未支給年金では、請求できる方や確認される内容が異なります。詳しくは年金受給者が亡くなったときの手続きをご覧ください。
請求から支給までの流れ
請求書を提出したあと、どのくらいで年金を受け取れるのか。日本年金機構の遺族年金ガイドでは、標準的な目安として次のように案内されています。
- 年金証書・年金決定通知書……請求書の提出から1か月程度(加入状況の確認が必要な場合は2か月程度)
- 年金の振り込み開始……年金証書が届いてから約1〜2か月後
書類に不足があったり、生計同一の確認に時間がかかったりすると、これより延びることがあります。当面の生活費については、年金の振り込みまで一定の時間がかかることを見込んでおくと安心です。
なお、ご自身も年金を受け取っている、あるいは受け取れる年齢が近い場合は、遺族年金との組み合わせで受け取れる額が変わることがあります。併給調整とはで整理しています。
時効は5年|未支給年金とは起算点が違う
遺族年金を受ける権利は、支給すべき事由が生じた日から5年を経過すると、時効によって消滅するとされています。実務上は、亡くなった日の翌日から数えるものとして案内されます。
ここで注意していただきたいことがあります。同じ5年でも、未支給年金とは起算点が違います。
- 遺族年金……亡くなった日の翌日から5年
- 未支給年金……支払期月の翌月の初日から5年
どちらも「年金の時効は5年」と説明されるため、混同されがちです。両方を請求するケースでは、それぞれ別に数えることになります。
5年という期間はありますが、書類の取り寄せに時間がかかることを考えると、
余裕があるとは言えません。早めに手をつけておくことをおすすめします。
なお、死亡一時金など、遺族年金とは別の給付には別の時効期間が定められているものがあります。死亡一時金は2年とされています。
まとめ
遺族年金の請求について、押さえておきたい点を整理します。
- 請求書の様式は1種類ではない。遺族基礎年金のみは様式第108号、遺族厚生年金を含む場合は様式第105号
- 提出先は、遺族基礎年金のみなら市区町村役場、遺族厚生年金を含むなら年金事務所または街角の年金相談センター
- 遺族基礎年金のみでも、死亡日が第3号被保険者期間中なら年金事務所が提出先になる
- 共済組合等の加入期間があっても、年金事務所で相談・受付できる場合がある
- 生計維持は「生計を同じくしていたこと」と「収入要件」の2つで見る
- 時効は5年。実務上は亡くなった日の翌日から数え、未支給年金とは起算点が違う
年代やご家族の構成によって、その後の生活設計は大きく変わります。50代で配偶者を亡くした場合の考え方は夫を亡くした50代妻の年金と生活設計で整理しています。
どの様式をどこに出すのか、何を用意すればよいのかの整理でお困りのことがありましたら、ご相談ください。
相続のお手続きでお困りの方へ
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