※この記事は2026年8月時点の情報に基づく一般的な解説です。障害年金を受け取れるかどうかや、請求先・請求できる時期は、初診日がいつでどの制度に加入していたか、保険料の納付状況、障害の状態によって一人ひとり異なります。実際のお手続きの前に、年金事務所、街角の年金相談センター、関係する共済組合等、初診日の医療機関、または社会保険労務士にご確認ください。

障害年金と遺族年金。どちらも公的年金の制度ですが、目的も、受け取れる人も、判定の仕方も違います。

このふたつを混同したまま年金事務所へ行くと、話がかみ合わないことがあります。とくに障害年金には、遺族年金にはない関門がいくつもあります。

なかでも大きいのが、初診日という考え方です。いつどの病院にかかったかで、請求先も、受け取れるかどうかも変わります。今の状態ではなく、過去の一時点で決まる仕組みです。

この記事では、障害年金と遺族年金がどう違うのかを、制度の目的・判定の時点・受給の要件という順に整理します。両方の受給権がある場合の取り扱いは、別の記事でご案内しています。


目次

  1. 障害年金と遺族年金は、何のための制度か
  2. いつの時点で判定するかが違う
  3. 初診日とは|請求先を決める日
  4. 障害等級|身体障害者手帳とは別のものです
  5. 保険料納付要件|初診日の前日で判定します
  6. 20歳前の傷病による障害基礎年金
  7. いつから受け取れるか|障害認定日と事後重症
  8. 両方の受給権があるときは
障害年金は本人を支える制度であること、判定に使うのは今ではなく初診日であること、初診日に加入していた制度で請求先が変わること、障害者手帳の等級とは別に判断されること、保険料の納付は初診日の前日で確認することについて、社会保険労務士から説明を受けている様子を描いたイラスト

障害年金と遺族年金は、何のための制度か

まず、それぞれが何を支えるための制度かを押さえます。

制度支えるもの
障害年金病気やけがで生活や仕事が制限されるようになった方の生活
遺族年金亡くなった方によって生計を維持されていた遺族の生活

厚生労働省は、障害年金について、現役世代の所得保障にも資する給付であると説明しています。老後の年金とは違い、現役の時期に受け取ることが想定されている制度です。

一方、遺族年金は、家計を支えていた方が亡くなったあとの生活を支えるものです。

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事が制限される本人を支える制度です。遺族年金は、亡くなった方によって生計を維持されていた遺族の生活を支える制度です。


いつの時点で判定するかが違う

ふたつの制度に共通するのは、今の状態だけで決まるわけではないという点です。それぞれ、過去の一時点を基準にします。

制度判定の基準になる日
障害年金本人の初診日
遺族年金亡くなった方の死亡日

⚠ ここを取り違えると話がかみ合いません
「今、障害があるから障害年金がもらえるはず」と考えて年金事務所へ行くと、まず初診日を聞かれます。今の状態ではなく、初診日にどの制度に加入していたか、そのときまでに保険料を納めていたかで判断されるためです。

遺族年金でも同じことが起こります。請求するのは今でも、判定に使うのは亡くなった日の状況です。

そしてもうひとつ、障害年金だけにある関門があります。

障害の状態が、定められた等級に当てはまるかどうかの認定です。 遺族年金には、この医学的な等級認定にあたるものがありません。

もちろん、遺族年金にも、生計維持関係や遺族の範囲などの確認はあります。ここで違うのは、障害年金のように本人の障害状態を等級で認定する手続きがあるかどうかです。


初診日とは|請求先を決める日

初診日は、障害年金の手続き全体を左右する日です。

条文上の定義

国民年金法30条と厚生年金保険法47条は、初診日をその傷病について初めて医師または歯科医師の診療を受けた日と定めています。両法とも同じ表現です。

いくつか注意点があります。

  • 歯科医師の診療も含まれます。 医科だけではありません
  • 原則として、確定診断がついた日ではなく、最初にその症状で医師または歯科医師の診療を受けた日を確認します
  • 健康診断で異常を指摘された日と、実際に受診した日は別です

また、条文は「これらに起因する疾病」も対象としています。最初の病気が原因で別の病気になったと考えられる場合でも、初診日をどこに置くかは個別に判断されます。相当因果関係が認められると、後の病気ではなく、前の病気で最初に受診した日を初診日として扱うことがあります。

初診日で請求先が決まります

初診日にどの制度へ加入していたかで、請求できる年金の種類と請求先が変わります。

初診日の状態請求できる年金
国民年金の加入中、20歳前など障害基礎年金
厚生年金保険の加入中障害厚生年金。障害の程度によっては障害基礎年金もあわせて対象

障害厚生年金の1級・2級に該当する場合は、障害基礎年金もあわせて対象になります。3級や障害手当金の場合は、障害基礎年金は対象になりません。

⚠ 「今」の加入状況ではありません
現在は国民年金に加入していても、初診日に会社員として厚生年金に加入していたのなら、障害厚生年金の対象になります。反対に、現在は会社員でも、初診日が退職後であれば障害基礎年金の対象です。

この違いは受け取れる金額に直結します。障害厚生年金には3級と障害手当金があり、障害基礎年金にはありません。

初診日をいつと考えるかで結論が変わるため、迷う場合は年金事務所や社会保険労務士にご相談ください。当時の医療機関に記録が残っているかどうかも、早めに確認しておくことをおすすめします。


障害等級|身体障害者手帳とは別のものです

障害年金を受け取るには、障害の状態が定められた等級に当てはまる必要があります。

制度によって等級の範囲が違います

年金等級
障害基礎年金1級・2級
障害厚生年金1級・2級・3級(このほか障害手当金)

障害厚生年金には3級があり、さらに障害手当金という一時金があります。障害手当金は、初診日から一定期間内に傷病が治り、年金として受ける等級には至らない一定の障害状態が残った場合に問題になる一時金です。

手帳の等級とは別のものです

ここは誤解が多いところです。

⚠ 障害者手帳の等級では判断されません
厚生労働省は、障害年金における等級は身体障害者手帳の等級とは異なると明記しています。障害年金の等級は年金の施行令で定められており、手帳は身体障害者福祉法に基づく別の制度です。手帳が何級かによって障害年金の等級が決まるわけではありません。

「手帳が3級だから障害基礎年金はもらえない」「手帳を持っていないから請求できない」といった思い込みで、請求をあきらめてしまう方がいます。手帳の有無や等級と、障害年金の等級は別々に判断されます。

ここでは身体障害者手帳を例にしていますが、精神障害者保健福祉手帳や療育手帳についても、障害年金とは別の制度として考える必要があります。


保険料納付要件|初診日の前日で判定します

障害年金には、保険料を納めてきたかどうかという要件があります。

原則は3分の2

初診日の属する月の前々月までの被保険者期間について、保険料を納めた期間と免除された期間を合わせて3分の2以上あることが原則です。

直近1年の特例

原則を満たさない場合でも、初診日の属する月の前々月までの1年間に未納がなければ要件を満たすという特例があります。

この特例は、初診日が令和18年3月末日までにあり、初診日に65歳未満である場合に使える特例です。

いつの時点で見るかが決定的です

⚠ 初診日の前日で判定します
条文は「初診日の前日において」判定すると定めています。つまり、初診日が来てから慌てて保険料を納めても、その納付は要件の判定に反映されません。 未納がある場合、間に合うのは初診日より前だけです。

これは実務でとくに問題になる点です。病気やけがで受診したあとに「年金を請求したいから」と未納分を納めても、判定は初診日の前日で行われます。

保険料の納付が難しい時期がある場合は、未納のままにせず、免除や納付猶予の手続きをしておくことが大切です。免除された期間は、この要件の計算に含まれます。


20歳前の傷病による障害基礎年金

初診日が20歳より前にある場合、少し違う扱いになります。

保険料納付要件は問われません

20歳になる前に初診日がある場合、通常の障害年金で確認する保険料納付要件は問われません。

20歳未満の方は国民年金に加入しておらず、そもそも保険料を納める立場にないためです。

⚠ 通常の保険料納付要件とは別の扱いです
生まれつきの障害や、子どものころの病気・けががもとになっている場合、20歳前に初診日があることになります。20歳前傷病による障害基礎年金では、通常の障害年金で問題になる保険料納付要件は問われません。

一方で、支給の制限があります

20歳前の傷病による障害基礎年金には、本人の所得による支給制限があります。所得が一定額を超えると、年金の一部または全部が支給停止になります。

具体的な基準は年度や制度改正で変わるため、年金事務所や社会保険労務士にご確認ください。

このほか、日本国内に住所がない場合や、刑事施設などに入所している場合にも支給が停止されます。

20歳前傷病による障害基礎年金は、保険料を納めて受ける通常の障害年金とは異なる支給制限があります。


いつから受け取れるか|障害認定日と事後重症

障害年金は、初診日から一定の期間が経たないと請求できません。

障害認定日

原則として、初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日です。

ただし、その期間内に傷病が治った場合は、その治った日が障害認定日になります。ここでいう「治った」には、症状が固定して治療の効果が期待できない状態も含まれます。

この日の障害の状態で等級に該当していれば、障害認定日にさかのぼって請求できます。

⚠ さかのぼれる期間には限りがあります
障害認定日にさかのぼって請求できる場合でも、請求日から5年以上前の分は、時効により受け取れないことがあります。障害認定日から長い年月が経っている場合は、早めにご確認ください。

事後重症による請求

障害認定日の時点では等級に該当しなかったものの、その後に障害の状態が重くなった場合、あらためて請求できます。これを事後重症による請求といいます。

項目内容
請求できる期限65歳の誕生日の前々日まで
支給の開始請求した日の翌月分から

⚠ 事後重症はさかのぼれません
障害認定日による請求と違い、事後重症では請求日より前にさかのぼって受け取ることはできません。請求が遅れた分は、そのまま受け取れない期間になります。 状態が重くなったと感じたら、早めに年金事務所へご相談ください。

65歳が近い方は、期限の解釈で迷わないよう早めに年金事務所へご確認ください。


両方の受給権があるときは

障害年金と遺族年金の両方に受給権が生じることがあります。

その場合、どちらを受け取れるか、同時に受け取れるかには決まりがあります。この記事では制度の違いに絞っていますので、併給の詳しい組み合わせは別の記事で整理しています。

⚠ あわせてお読みください
障害年金と遺族年金・老齢年金を同時に受け取れるケースについては、併給調整とは? をご覧ください。


まとめ

障害年金と遺族年金は、目的も判定の仕方も違う制度です。

  • 障害年金は病気やけがで生活や仕事が制限される本人を、遺族年金は亡くなった方に生計を維持されていた遺族を支える制度
  • 判定に使うのは、障害年金が本人の初診日、遺族年金が死亡日。どちらも「今」の状況ではない
  • 初診日にどの制度へ加入していたかで、請求できる年金と請求先が決まる
  • 障害年金の等級は、身体障害者手帳などの等級とは別に判断される
  • 保険料納付要件は初診日の前日で判定する。初診日より後に納めても間に合わない
  • 20歳前の傷病による障害基礎年金は、通常の保険料納付要件が問われない一方で、通常の障害年金とは異なる支給制限がある
  • 障害認定日は原則として初診日から1年6か月後。事後重症による請求はさかのぼれない

初診日がいつになるかで結論が変わります。当時の医療機関に記録が残っているかどうかも含めて、早めにご確認ください。

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