※この記事は2026年9月時点の情報に基づく一般的な解説です。相続が重なった場合に、協議書をどのような形で作るか、どの手続にどの書類が必要になるかは、遺産の内容や提出先によって異なります。相続登記や登記に必要な書類については法務局や司法書士、相続税については税務署や税理士、相続人の間で争いがある場合や家庭裁判所の手続については弁護士、相続人の調査や遺産分割協議書の作成については行政書士にご確認ください。

10年ほど前に祖父が亡くなりました。祖父名義の土地がそのままになっていて、いつか手続きをしなければと思いながら、話し合いが進まないうちに時間が過ぎてしまいました。

そして今年、父も亡くなりました。祖母は祖父より前に、母も数年前に亡くなっています。祖父の相続人は父と叔母の2人でしたが、その父がいなくなり、父の相続人は私と弟の2人です。

「祖父の分と父の分、二つの話し合いが必要になります」と言われました。ただ、遺産分割協議書をどのように作ればよいのかが分かりません——そうしたご相談をいただきます。

このコラムでは、相続が重なったときに、協議書を作る前に確認しておきたいことを整理します。


目次

  1. 祖父の相続が終わらないうちに、父が亡くなった
  2. まず確認すること|祖父の相続で、何か決まっていなかったか
  3. 数次相続の協議書|公的な記載例は確認できませんでした
  4. 祖父の分と父の分を、1通にまとめられるのか
  5. 日付で迷いやすいところ
  6. 作った協議書は、返ってくるのか
  7. 期限の話と、税のこと
  8. ご相談いただけること
祖父名義の土地の相続が終わらないうちに父が亡くなった60代の女性と弟が、協議書を作る前に確認することを行政書士から説明を受けている様子を描いたイラスト

祖父の相続が終わらないうちに、父が亡くなった

ご相談の例では、祖父の遺産分割が終わらないうちに、その相続人だった父が亡くなっています。祖父の遺産について話し合う立場は、父から私と弟へ移ることになります。

このように相続が重なった状態は、「数次相続」と呼ばれます。

⚠ 「数次相続」は、法律の条文にある言葉ではありません
民法の条文に「数次相続」という言葉は出てきません。相続が重なった状態を分かりやすく表すための、実務上の呼び方です。

誰が話し合いに加わるのか、代襲相続との違いについては、代襲相続・数次相続とはで詳しく解説しています。

なお、父が祖父の相続を承認するか放棄するかを決めないうちに亡くなった場合は、扱いが変わります。この場合については祖父の相続が終わらないうちに父が亡くなったらをご覧ください。


まず確認すること|祖父の相続で、何か決まっていなかったか

協議書の話に入る前に、確認しておきたいことがあります。祖父の相続について、これまでに何か決まっていなかったかです。

何も決まっていなかった場合は、祖父のほかの相続人(ご相談の例では叔母)と、父の相続上の立場を引き継いだ私たちとの間で、祖父の遺産について話し合うことになります。

一方で、父が亡くなる前に、祖父の遺産について話し合いがまとまっていた場合は、話が変わります。

⚠ 先に作った協議書が、そのまま使える場合があります
法務局のQ&Aでは、遺産分割協議が成立した後に相続人の一人が亡くなった場合について、実印が押され、印鑑証明書が添付されているなどの条件を満たした協議書は、相続登記に使用できる場合があると説明されています。ただし「遺産分割協議書の内容を確認する必要があります」とされています。

新しく協議書を作る前に、まず、祖父の相続のときに作った協議書や関係書類が残っていないか確認してみましょう。

先に話し合いがまとまっていた場合、その内容に応じて、登記の進め方が変わることがあります。登記の手続は司法書士の業務です。


数次相続の協議書|公的な記載例は確認できませんでした

今回確認した公的資料の中では、数次相続に特化した遺産分割協議書の記載例は見当たりませんでした。

では、協議書はどのように作ればよいのでしょうか。

法務局のQ&Aでは、遺産分割協議書は当事者が任意に作成する書類で、法務局に用紙は備え付けていないと説明されています。そのうえで、被相続人の氏名や死亡日、相続人が分割の内容に合意していること、相続財産の具体的な内容、相続人全員の名前と住所が記載され、全員の実印が押されている必要がある、と案内されています。

一般的な記載事項や雛形については、遺産分割協議書の書き方と雛形で解説しています。

ただし、相続が重なった場合に、亡くなった方をどのように書くかについては、今回確認した公的資料の中には記載例が見当たりませんでした。法務局が公開している数次相続の記載例は、登記の申請書と相続関係説明図のもので、遺産分割協議書のものではありません。

⚠ 法務局では、遺産の分け方や協議の内容そのものは相談できません
法務局は、登記手続案内として、遺産分割協議書に記載しておくべき事項など、登記申請に必要な情報を提供しています。一方で、誰にどのように遺産を相続させるかなど、これから行う遺産分割協議の内容については、相続人で判断する事柄とされています。

協議書の作成や登記に迷ったときは、内容に応じた専門家へ確認してください。


祖父の分と父の分を、1通にまとめられるのか

ご相談でよく出るのが、「協議書は2通に分けるのか、1通にまとめられるのか」という疑問です。

この点について、公的機関の説明は今回確認した範囲では見当たりませんでした。1通にまとめられるかどうかは、提出先によって扱いが異なる場合があるため、司法書士や提出先にご確認ください。

なお、似ていて別の話があります。

⚠ 「登記を一件でできるか」とは別の話です
法務局の登記申請書の記載例には「なお、最終の相続以外の相続について、共同相続人数名が権利を取得している場合には、一件の申請では登記することができません。」という注意があります。これは登記の申請の話で、協議書を1通にまとめられるかという話ではありません。

また、協議書は相続人全員が1通に署名する形でなくてもよく、同じ内容の書類に全員が署名して全員分そろえる方法も差し支えない、と法務局のQ&Aで説明されています。この方法や、何通用意するかについては、海外に相続人がいる場合の遺産分割協議で扱っています。


日付で迷いやすいところ

相続が重なると、書類に書く日付が複数出てきます。法務局のQ&Aでは、2つの日付が分けて説明されています。

まず、遺産分割協議書の日付です。これは実際に協議を行った日で、申請をする日ではないとされています。

次に、相続登記の原因日付です。こちらは被相続人が亡くなった日(戸籍上の死亡日)で、遺産分割協議が成立した日でも、協議書を作った日でもないとされています。

どの日付か何の日を書くか
遺産分割協議書の日付実際に協議を行った日(申請をする日ではありません)
相続登記の原因日付被相続人が亡くなった日(協議が成立した日でも、協議書を作った日でもありません)

なお、法務局が公開している数次相続の登記申請書の記載例では、祖父の相続と父の相続の日付を2段に分けて書く形が案内されています。これは登記の申請書の書き方であって、協議書の書き方ではありません。


作った協議書は、返ってくるのか

手間をかけて作った協議書は、登記のために提出すると戻ってこないのでしょうか。

法務局のQ&Aでは、遺産分割協議書と印鑑証明書について、原本と一緒に写しを提出して原本の還付を請求すれば、原本を返却できるとされています。

ここで気をつけたいことがあります。数次相続の登記申請書の記載例には、相続関係説明図を提出すれば戸籍の原本は返してもらえるものの、遺産分割協議書については別にその謄本(写し)を提出する必要がある、という注意書きがあります。

つまり、戸籍が返ってくるからといって、協議書も同じように返ってくるわけではありません。

登記の申請や添付する書類の扱いは司法書士の業務です。


期限の話と、税のこと

相続が重なると、期限の数え方も気になるところです。

相続開始から10年という期間が関係する制度があります。ただし、2023年4月1日より前に始まった相続には経過措置があり、相続開始の時期によって扱いが異なります。この期間については特別受益と寄与分とはで、経過措置については共有名義の不動産は何が困るのかで解説しています。

また、遺産分割で不動産を取得した場合には、遺産分割から3年以内に、その内容に応じた登記をする必要があります。相続登記の期限については相続登記の義務化をご覧ください。

相続の手続が終わらないうちに相続人が亡くなると、相続税の申告の期限についても別の定めが置かれています。相続税が関係しそうな場合は、税理士にご確認ください。


ご相談いただけること

うりずん相続手続き相談室では、行政書士として、話し合いの前の準備からお手伝いしています。

  • 相続人の調査と戸籍の収集
  • 相続関係の整理
  • 遺産の内容をまとめた財産目録の作成
  • 争いのない案件での遺産分割協議書の作成

相続が重なると、確認する戸籍の範囲も広がります。すでに戸籍を集め始めている場合でも、集めたものを整理し、相続関係を確認する段階からお手伝いできます。

場面担当
相続人の調査・戸籍の収集・相続関係の整理・争いのない場合の遺産分割協議書の作成行政書士
相続登記の申請、登記ができるかどうかの判断司法書士
相続税の申告、税額や特例の判断税理士
家庭裁判所へ提出する書類の作成司法書士・弁護士
相続人の間の紛争の法律相談、手続の代理弁護士

必要に応じて、提携する専門家におつなぎします。


まとめ

祖父と父、二つの相続が重なったときに確認しておきたいことを整理しました。

「数次相続」は、法律の条文にある言葉ではありません。 相続が重なった状態を表す、実務上の呼び方です。

新しく作る前に、すでにある書類を確認してください。 祖父の相続について先に話し合いがまとまっていれば、その協議書が使える場合があります。ただし、内容の確認が必要とされています。

数次相続に特化した協議書の記載例は、今回確認した公的資料の中では見当たりませんでした。 法務局は、登記申請に必要な情報は案内していますが、遺産をどう分けるかという内容そのものについては相談に応じていません。

1通にまとめられるかは、提出先にご確認ください。 登記を一件の申請でできるかどうかとは、別の話です。

日付は2つあります。 協議書の日付は話し合いをした日、登記の原因日付は亡くなった日です。

相続のお手続きでお困りの方へ

うりずん相続手続き相談室では、相続人調査や相続財産の調査からお手伝いしています。戸籍の収集、相続関係の整理、争いのない案件での遺産分割協議書案の作成など、行政書士として対応できる手続きを承ります。相続登記や相続税、相続人の間で争いがある場合には、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携し、必要な専門家へ適切におつなぎします。まずはお話をお聞かせください。どうぞ安心してご相談ください。

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