ご家族を亡くされたばかりの皆さま。
心から、お悔やみ申し上げます。

大切なご家族を見送られたあと、ご自宅や土地などの不動産を どう引き継げばよいのか、戸惑っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。「相続登記は、落ち着いてからいつかやれば」――かつては、そう考えられてきました。

ですが 2024年(令和6年)4月から、相続登記は法律上の「義務」 になりました。
この記事では、何が変わったのか、いつまでに何をすればよいのか、間に合わないときの対処法までを、はじめての方にも分かるように整理しました。ご無理のないよう、一つずつ確認していきましょう。


目次

  1. 相続登記とは何か/なぜ義務化されたのか
  2. いつまでに・誰が ── 義務化の3年ルール
  3. 過去に発生した相続も対象になります
  4. 登記をしないとどうなるか ── 10万円以下の過料
  5. 遺産分割が決まらないとき ── 相続人申告登記という方法
  6. 相続登記の進め方と必要書類
  7. 登記の専門家「司法書士」との連携
相続登記の義務化8コマガイド|3年ルール・過料・相続人申告登記・必要書類のまとめ図解

1. 相続登記とは何か/なぜ義務化されたのか

相続登記とは、亡くなられた方(被相続人)が所有されていた土地や建物の名義を、その不動産を受け継ぐ相続人へと 正式に書き換える手続き のことです。法務局に申請し、登記簿(登記記録)の所有者を変更します。

これまで相続登記には期限がなく、「費用がかかる」「相続人どうしの話し合いがまとまらない」といった理由から、長く放置されるケース が少なくありませんでした。その結果、登記簿を見ても本当の所有者が分からない 「所有者不明土地」 が全国で増え続け、その面積は 九州本島に匹敵する規模 にまで広がったといわれています。

所有者が分からない土地は、災害復興の妨げになったり、周辺の環境悪化を招いたりと、社会全体の課題となってきました。こうした問題を解消するために導入されたのが、今回の 相続登記の義務化 です。

放置がもたらす困りごとは、けっして他人事ではありません。たとえば、お父様名義のご実家をそのままにしているうちに、相続人であるご兄弟のお一人が亡くなられると、その配偶者やお子様まで新たな相続人 に加わります。これが二代・三代と重なる「数次相続」になると、会ったこともない遠い親戚を含めた全員の合意 がなければ名義を動かせなくなり、いざ売却や建て替えをしたいときに身動きが取れなくなってしまいます。早めに登記を整えておくことは、こうした将来の行き詰まりを未然に防ぐことにつながります。

登記簿は、その不動産の所有者が誰であるかを社会に示す 「公の記録」 です。名義が実際の所有者と食い違ったまま放置されると、その不動産は取引の場に出せなくなり、固定資産税の請求先もあいまいになります。義務化は、罰を与えるためのものというより、こうした 「誰のものか分からない不動産」を生まないための予防策 という側面が強い制度なのです。

🌱 大切なポイント
相続登記は、ご自身やご家族を守るためのお手続き でもあります。名義を亡くなられた方のままにしておくと、その不動産を売却することも、担保に入れることもできません。さらに次の相続が重なると、相続人が 十数人に膨らんで収拾がつかなくなる ことも珍しくありません。早めに整えておくことが、将来のご家族の負担を減らします。


2. いつまでに・誰が ── 義務化の3年ルール

⏰ 手続きの期限:不動産の取得を知った日から 3年以内

義務化のルールは、シンプルに言えば次のひとつです。

「相続によって不動産を取得したことを知った日から、3年以内に相続登記を申請する」

「取得したことを知った日」とは、一般的には ご自身が相続人であることと、その不動産が相続財産に含まれることの両方を知った日 を指します。多くの場合、ご家族が亡くなられ、遺産の内容を把握した時点がこれにあたります。

場面登記申請の期限
遺言書で不動産を取得した取得を知った日から 3年以内
遺産分割の前に法定相続分で登記する取得を知った日から 3年以内
遺産分割が成立して取得者が決まった遺産分割が成立した日から3年以内(別途必要)

3つ目の「遺産分割が成立した場合」には注意が必要です。いったん法定相続分で登記していても、その後に遺産分割で取得者が確定したら、分割成立の日から3年以内に、あらためて登記し直す 義務があります。

「取得を知った日」とは、いつのことか

期限の起算点となる「取得を知った日」は、機械的に死亡日とは限りません。一般には、①ご家族が亡くなってご自身が相続人になったこと と、②その相続財産のなかに不動産があること の、両方を知った日 と考えられています。

たとえば、長く交流のなかった親戚の不動産を、ずいぶん後になって相続することになった、というような場合には、亡くなった事実や不動産の存在を実際に知った時点が起算点になります。とはいえ、多くのご家庭では、ご逝去後しばらくして遺産の全体像を把握した時期がこれにあたります。「いつから3年か」の判断に迷われたときは、自己判断で先延ばしにせず、早めに専門家へご確認 いただくのが安心です。

⚠ 「うちは田舎の土地だけ」でも対象です
義務化の対象は、評価額の大小や場所を問いません。山林・農地・私道・共有持分・ご実家の小さな土地 など、見落とされがちな不動産もすべて対象です。「価値がないから」と放置すると、その不動産も過料の対象になり得ます。亡くなられた方名義の不動産は、漏れなく洗い出す ことが第一歩です。


3. 過去に発生した相続も対象になります

「義務化は2024年4月からだから、それより前の相続は関係ない」――そう思われがちですが、これは誤解 です。

相続登記の義務化は、施行日より前に発生していた相続にもさかのぼって適用 されます。何年も前に親御様が亡くなり、ご実家の名義がそのままになっている、というケースも対象です。

ただし、過去の相続については 猶予期間 が設けられています。

相続が発生した時期登記申請の期限
2024年4月1日 以降 に発生取得を知った日から 3年以内
2024年4月1日 より前 に発生施行日(2024年4月1日)と取得を知った日のいずれか遅い日から3年以内 = 多くの場合 2027年(令和9年)4月1日まで

たとえば、10年前に亡くなったお父様名義のご実家 を、これまで登記しないままにされている――そうしたケースも、まさにこの対象です。「もう何年も経っているから時効では」ということはなく、施行日を起算点として、2027年4月1日までに登記を整える 必要があります。古い相続ほど、相続人が増えていたり戸籍が集めにくくなっていたりしますので、心当たりのある方は、この猶予期間のあるうちに着手されることを強くおすすめします。

📖 義務化の根拠となった法改正
相続登記の義務化は、2021年(令和3年)の不動産登記法の改正 によって定められ、2024年4月1日に施行 されました(不動産登記法 76条の2)。所有者不明土地の発生を予防するための、戦後の不動産登記制度における大きな転換点といえる改正です。

➡ 関連ページ:遺産分割協議書の書き方と雛形|相続人全員の合意を一枚に残すために
不動産を誰が取得するかを決めたら、その合意を遺産分割協議書にまとめます。登記申請にも添付する大切な書類です。


4. 登記をしないとどうなるか ── 10万円以下の過料

正当な理由がないまま期限内に相続登記を申請しなかった場合、10万円以下の過料 の対象になり得ます。過料とは、刑事罰の「罰金」とは異なる行政上のペナルティですが、金銭的な負担が生じる点は同じです。

ただし、期限を過ぎたら即座に過料が科される、というわけではありません。実際の流れは次のようになっています。

  1. 法務局の登記官が、義務に違反している事実を把握する
  2. 相続人に対し、「相当の期間内に登記を申請してください」と催告(お知らせ)する
  3. 正当な理由なく、その期間内に申請も申出もされなかったとき
  4. はじめて、登記官が裁判所に過料の通知を行う

つまり、催告を受けた段階できちんと対応すれば、過料は科されません。とはいえ、催告を待つのではなく、ご自身の期限を把握して早めに動かれることが安心につながります。

そして見落とされがちなのが、過料よりも実生活への影響のほうが大きい という点です。名義が亡くなられた方のままでは、その不動産を売ることも、リフォームのために担保へ入れることもできません。いざ「売却して施設の費用にあてたい」「建て替えたい」と思ったときに、そこから戸籍を集め相続人全員の合意を取り直すとなると、数か月単位の時間 がかかってしまいます。過料の有無にかかわらず、登記は早めに整えておくに越したことはありません。

⚠ 「正当な理由」は限られます
数次相続で相続人が極めて多数にのぼり戸籍収集に多大な時間を要する、相続人に重病の方がいる、といった事情は「正当な理由」として考慮され得ます。しかし、「忙しかった」「費用を惜しんだ」「知らなかった」は正当な理由になりません。期限の管理は、ご自身で意識しておく必要があります。


5. 遺産分割が決まらないとき ── 相続人申告登記という方法

「3年以内と言われても、相続人どうしの話し合いがまとまらない」――そうしたご事情に配慮して、義務化と同時に新設されたのが 「相続人申告登記」 という制度です(不動産登記法 76条の3、2024年4月1日開始)。

これは、「亡くなった方の登記名義人について相続が開始したこと」と「自分が相続人であること」を法務局に申し出る だけの、簡易な手続きです。申し出をすると、申出人の氏名・住所が登記官の職権で登記簿に記録され、いったん相続登記の義務を果たしたものとみなされます

通常の相続登記のように、戸籍を出生から死亡まですべて揃える必要がなく、申し出をする相続人ひとりの分だけ 手続きできる点が大きな特徴です。話し合いが長引きそうなときの、いわば「時間切れを防ぐ応急措置」として使えます。

たとえば、相続人の一人が遠方にいて連絡が取りづらい分け方をめぐって話し合いがまとまらず期限が迫っている、といった場面で力を発揮します。まずは相続人申告登記でご自身の義務を果たして過料のリスクを外し、落ち着いて遺産分割の話し合いを続ける――そうした使い方ができます。ただし、これはあくまで一時的な備えですので、次の正式な登記までを見据えて進めることが大切です。

相続人申告登記でできること・できないこと

便利な制度ですが、できることとできないことを正しく理解しておくことが大切です。

相続人申告登記通常の相続登記
登記の義務を果たしたとみなされるか○ みなされる○ 果たす
手続きの手軽さ○ 申し出る相続人ひとり分の戸籍で可△ 出生から死亡までの戸籍一式が必要
持分・権利関係の確定✕ 登記されない○ 確定する
不動産の売却・担保設定✕ できない○ できる
遺産分割成立後の対応分割の日から3年以内に通常の登記が必要不要(完了している)

🌱 相続人申告登記の大切な注意点
相続人申告登記は、あくまで 暫定的な手段 です。誰がどの持分を取得したかという 権利関係までは登記されません。したがって、その後に 遺産分割が成立したら、その日から3年以内に、あらためて正式な相続登記を申請する 必要があります。また、申告登記のままでは不動産の 売却や担保設定はできません。「ひとまず義務だけは果たした」状態だとご理解ください。


6. 相続登記の進め方と必要書類

実際に相続登記を進める流れと、必要になる主な書類を整理します。

登記までの流れ

  1. 相続人を確定する(亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍を収集)
  2. 対象の不動産を特定する(登記事項証明書・固定資産の名寄帳などで確認)
  3. 遺産分割協議で取得者を決める(遺言書がある場合はその内容に従う)
  4. 遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・実印で押印
  5. 登記申請書を作成し、法務局へ申請(書類一式を添付)
  6. 登記完了(登記識別情報通知などを受領)

主な必要書類

書類名取得先・備考
被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)本籍地の市区町村役場
被相続人の住民票の除票最後の住所地の市区町村役場
相続人全員の戸籍謄本各相続人の本籍地の市区町村役場
不動産を取得する相続人の住民票住所地の市区町村役場
遺産分割協議書(相続人全員の実印)ご自身または専門家が作成
相続人全員の印鑑証明書住所地の市区町村役場
固定資産評価証明書不動産所在地の市区町村(登録免許税の計算に使用)

ご自身で申請する場合・専門家に依頼する場合

相続登記の申請は、ご自身で行うこともできます。法務局の窓口へ持参するほか、郵送やオンライン での申請も可能で、法務局では 無料の登記手続案内(予約制) も実施されています。相続人がご自身お一人で、不動産も1件だけ、といったシンプルなケースでは、ご自身での申請も十分に現実的です。

一方で、相続人が複数いる・不動産が複数の市区町村にまたがる・古い相続で戸籍が膨大になる といったケースでは、戸籍の収集と読み取り、遺産分割協議書の作成、登記申請書の作成といった一つひとつが大きな負担になります。こうした場合は、後述の専門家へご相談いただくことで、手戻りなく確実に進められます。

➡ 関連ページ:相続人調査|相続手続きで戸籍を集める3つのルートと実務の進め方
登記でいちばん手間がかかるのが、出生から死亡までの戸籍収集です。集め方のコツはこちらで詳しく解説しています。

📖 登録免許税について
相続登記には 登録免許税 がかかり、原則として 固定資産評価額の0.4%(1,000分の4) です。たとえば評価額1,000万円の不動産なら4万円です。一定の要件を満たす場合には免税措置が設けられていることもありますので、申請前に確認されると安心です。


7. 登記の専門家「司法書士」との連携

相続登記の 申請手続きそのものを代理できるのは、司法書士(および弁護士)の独占業務 です。私たち行政書士・社会保険労務士は、登記申請の代理を行うことはできません。

そこで当事務所では、信頼できる司法書士と連携 し、皆さまが窓口を何度も変える負担なく、相続手続き全体を進められる体制を整えています。役割を整理すると、次のようになります。

手続き主に担当する専門家
戸籍収集・相続人調査・財産調査行政書士(当事務所)
遺産分割協議書の作成行政書士(当事務所)
不動産の名義変更(登記申請)司法書士(連携先)
相続税の申告税理士(連携先)
年金・労務の手続き社会保険労務士(当事務所)

当事務所が 戸籍収集から遺産分割協議書の作成まで をお引き受けし、登記の段階で司法書士へ スムーズに引き継ぐ ことで、皆さまは一つの窓口でご相談を完結できます。「どの専門家に何を頼めばよいのか分からない」という入り口の不安を、まず私たちが受け止めます。

相続では、戸籍の収集・財産の調査・遺産分割協議書の作成・銀行口座の解約・不動産の登記・年金の手続きと、性質の異なる作業が連なって います。これらを別々の専門家へ個別に依頼すると、同じ説明を何度も繰り返したり、書類を二重に集めたりと、想像以上に手間が増えてしまいます。収集した戸籍や財産の情報を一つの窓口で共有 しながら進めれば、重複がなくなり、結果として時間も費用も抑えやすくなります。何より、慣れない手続きを 「相談する先が一つで済む」 という安心は、つらい時期の大きな支えになります。

📖 2026年4月からは「住所変更登記」も義務化されています
相続登記に続き、2026年(令和8年)4月1日からは、引っ越しなどで住所・氏名が変わった場合の変更登記も義務化 されました(不動産登記法 76条の5)。こちらは 変更日から2年以内 の申請が必要で、怠ると 5万円以下の過料 の対象です。不動産をお持ちの方は、相続登記とあわせて頭の片隅に置いておかれると安心です。

➡ 関連ページ:相続手続き・相続登記サポートの料金|サービス内容のご案内


★ まとめ:相続登記は「次の世代へ確実に手渡す」ための一歩

相続登記の義務化は、罰則だけが目立って語られがちですが、その本質は 「不動産を、誰のものか分かる状態で、次の世代へ確実に手渡す」 ことにあります。名義をきちんと整えておくことは、将来のご家族が相続で苦労しないための、いちばんの備えになります。3年という期限は、急かすためのものではなく、「いつかやろう」を「いま少しずつ」に変えるための、ひとつの区切り だと受け止めていただければと思います。

「戸籍を集めるだけでも大変」「相続人が多くて話し合いが進まない」「司法書士に直接頼むのは敷居が高い」――そんなお気持ちを抱えていらっしゃる方は、どうかお一人で抱え込まれないでください

うりずん相続手続き相談室では、戸籍収集から、財産調査、遺産分割協議書の作成、銀行口座の解約、各種名義変更、年金請求まで、相続に関わるあらゆる手続きを、社会保険労務士・行政書士の独占業務として一括してお引き受けし、登記は 司法書士、相続税申告は 税理士 と連携して、ワンストップでお支えします。

「うりずん」とは、私の故郷・沖縄のことばで 「春から初夏にかけて新緑が芽吹く季節」 を意味します。ご家族を見送られたあと、慣れない手続きと向き合うつらい時期を、少しでも 新しい一歩を踏み出していただける ようお支えしたい――そんな想いで、お一人おひとりのご事情に丁寧に向き合っています。