※この記事は2026年9月時点の情報に基づく一般的な解説です。施設での死亡後の精算は、入居契約や保証条項によって扱いが異なります。身元保証人が未払い分を負担するかどうかを一律に示した公的な説明は確認できないため、まず契約書の内容を確認します。施設との支払いを巡る話し合いや保証契約の効力、相続人の間で意見が分かれている場合については弁護士、相続税については税理士、相続登記については司法書士、相続人や相続財産の調査については行政書士にご確認ください。
母が入居していた有料老人ホームで亡くなりました。葬儀を終えたところです。
施設からは「お部屋の片づけをお願いします」と言われ、利用料の請求書も届きました。入居のときにまとまったお金を払ったはずですが、それが戻ってくるのかも分かりません。
弟は入居契約書の「身元引受人・連帯保証人」の欄に署名しています。「自分が全部払うことになるのか」と不安がっています——そうしたご相談をいただきます。
このコラムでは、施設で亡くなったあとに、何をどの順番で確認すればよいのかを整理します。
目次
- 母が施設で亡くなり、片づけと請求書が届いた
- まず出してほしい書類|入居契約書と重要事項説明書
- 入居時に預けた前払金(入居一時金)はどうなるか
- 未払いの利用料はどうなるか
- 身元保証人になっている方へ|亡くなったあとに契約書のどこを見るか
- 居室の片づけ
- ご相談いただけること
母が施設で亡くなり、片づけと請求書が届いた
施設で亡くなると、葬儀が終わるころに、いくつかのことが一度にやってきます。
居室の片づけ、未払いの利用料の請求、入居時に預けたお金のこと、そして保証人になっている家族の立場のことです。
どれも急いで答えを出したくなりますが、まず確認すべき書類があります。このコラムは、入居中や入居前ではなく、亡くなったあとに何を確認するかに絞ってお伝えします。
まず出してほしい書類|入居契約書と重要事項説明書
片づけや支払いに手をつける前に、入居契約書と重要事項説明書を手元に用意してください。
有料老人ホームの重要事項説明書には、「居住の権利形態」という欄があります。利用権方式、建物賃貸借方式、終身建物賃貸借方式のいずれかが書かれているはずです。
⚠ 亡くなれば契約が自動的に終わる、とは限りません
国の資料では、契約の形によって扱いが分けて説明されています。建物賃貸借方式では、入居者の死亡をもって契約を終了するという内容は有効にならないとされています。一方、終身建物賃貸借方式では、入居者の死亡をもって契約を終了するという内容が有効とされています。
終身建物賃貸借方式は、都道府県知事の認可を受けた事業に限られます。仕組みについては終身建物賃貸借制度とは?高齢者が終身住める借家契約で解説しています。
確認することを順番に並べると、次のようになります。
| やること | 誰が | いつまでに | 公的な説明 |
|---|---|---|---|
| 入居契約書・重要事項説明書を出す | 相続人・保証人になっている家族 | 最初に | 確認の手順です |
| 契約の形を確認する | 同上 | 片づけ・支払いの前に | 国の資料で説明されています |
| 保証人の欄・範囲・上限額・契約日を確認する | 保証人になっている家族 | 支払いの前に | 国の資料で説明されています |
| 未払い利用料の内訳を施設に確認する | 相続人 | 施設の請求に応じて | 一律のルールは確認できませんでした。請求書と契約書で確認します |
| 入居時に預けた前払金(入居一時金)の返還の有無と算定方法を確認する | 相続人 | 契約書の返還条項による | 法律と省令に定めがあります |
| 居室の片づけ・明渡し | 契約書で確認します | 契約書の条項による | 一律のルールは確認できませんでした。契約書の退去条項で確認します |
| 相続放棄をするか決める | 相続人 | 相続の開始を知った時から3か月以内 | 民法に定めがあります |
入居時に預けた前払金(入居一時金)はどうなるか
入居のときに、家賃などをまとめて前払いしていることがあります。入居時に預けた前払金(いわゆる入居一時金)です。
有料老人ホームが前払金を受け取る場合には、一定の期間内に、契約が解除されたり入居者の死亡により終了したりした場合に、所定の方法で計算した額を返還する旨の契約を結ばなければならない、と老人福祉法に定められています。
この「一定の期間」と計算方法は省令で定められていて、入居後3か月までに契約が終了した場合と、それ以降の場合とで計算のしかたが分かれています。いずれも、解除だけでなく入居者の死亡により終了した場合を含む書き方になっています。
国の指導指針では、返還額を入居契約書などに明示し、入居のときに十分に説明することとされています。まず、契約書の返還に関する条項を確認してください。
⚠ 返ってくるお金を誰が受け取るかは、契約書で確認してください
返還金の受取人について一律に示した公的な説明は確認できませんでした。まず入居契約書の返還条項や受取人に関する定めを確認し、不明な点は施設に確認してください。
サービス付き高齢者向け住宅でも、入居者の死亡により契約が終了した場合の前払金の返還が、登録の基準に含まれています。
未払いの利用料はどうなるか
亡くなった方の権利義務は、原則として相続人が引き継ぐと民法に定められています。
未払いの利用料のうち、亡くなった方が負っていた金銭の債務は、相続の対象になります。相続人が複数いる場合の負担関係は、債務の内容や相続分などによって確認する必要があります。
まずは施設に請求の内訳を確認してください。いつの分の、何の費用なのかが分かれば、次に確認すべきことも見えてきます。
相続放棄を考えている場合は、相続の開始を知った時から3か月以内という期限があります。期限の数え方や手続きは相続放棄の期限と手続きをご覧ください。
身元保証人になっている方へ|亡くなったあとに契約書のどこを見るか
病院や施設で求められる「身元保証人」は、法律で中身が決まっている制度ではありません。何をどこまで引き受けるかは、施設と交わした契約で決まります。
有料老人ホームについては、入居契約書に身元引受人の権利・義務を明示することが、国の指導指針で求められています。
名称が「身元引受人」であっても、金銭の債務を保証する条項があるとは限りません。 契約書で保証の義務があるかどうかを確認します。
亡くなったあとに契約書を見るときは、次の4点を確認してください。
- 保証人・身元引受人の欄(誰が、どういう名目で署名しているか)
- 保証の範囲(何を保証する条項になっているか)
- 極度額(保証する金額の上限)の定めがあるか
- 契約を結んだのが2020年4月1日の前か後か
法務省は、親を介護施設に入居させる際に、入居費用などを子どもがまとめて保証するケースが「根保証契約」に当たることがあると説明しています。
そのうえで、個人が保証人になる根保証契約では、主たる債務者が亡くなったときなどは、その後に発生する主債務は保証の対象外になる、としています。
⚠ 2020年4月1日より前の保証契約は、原則として改正前のルールです
個人根保証契約の極度額に関する新しいルールは、2020年4月1日から施行されました。それより前に締結された保証契約には、原則として改正前の民法が適用されます。ただし、施行後に保証契約を合意更新した場合などは、扱いが変わることがあります。
亡くなる前に発生していた未払い分を誰が負担するかは、保証の話と相続の話が重なる場面で、契約の内容や事情によります。弟さんのように、相続人でありながら保証人でもある方は、2つの立場を分けて考えることになります。
施設の説明に納得できないときや、支払いを巡って争いになりそうなときは、弁護士にご相談ください。身元保証人と連帯保証人の違いについては、身元保証人と連帯保証人の違いで整理しています。
⚠ 入所時の身元保証人の話と、亡くなった後の精算は別の論点です
厚生労働省は、介護保険施設について、身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しないとしています。ただし、これは入所時の取扱いの話で、亡くなった後の未払い利用料や保証契約の効力とは別の問題です。
入所するときの身元保証人については、老人ホームに身元保証人なしで入れる?で解説しています。
居室の片づけ
居室に残された物のうち、亡くなった方の物は相続財産です。
居室の片づけや明渡しを、誰がいつまでに行うのかを定めた一律のルールは確認できませんでした。入居契約書の退去や明渡しに関する条項を確認し、施設と日程を相談してください。
相続放棄を考えている場合は、残された物を自己判断で処分する前に確認してください。処分の内容によっては、単純承認をしたものとみなされることがあります。残された物の扱いについては、孤独死後の残置物は誰が片付けるのかで整理しています。
ご相談いただけること
うりずん相続手続き相談室では、行政書士として、次のお手伝いをしています。
- 戸籍の収集による相続人の調査
- 相続財産の調査
- 争いのない案件での遺産分割協議書の作成
- 入居契約書・重要事項説明書の、どの欄に何が書いてあるかを一緒に確認すること
契約書に書かれている内容の法的な効力を判断することは、当事務所では行いません。施設との支払いを巡る話し合いや、保証契約の効力、相続人の間で意見が分かれている場合は弁護士、相続税は税理士、相続登記は司法書士の分野です。
どの専門家に何を相談すればよいかは、相続の相談はどこにする?をご覧ください。
まとめ
施設で亡くなったあとに、何をどの順番で確認するかを整理しました。
まず、入居契約書と重要事項説明書を出してください。 契約の形によって、亡くなったときの扱いが違います。
入居時に預けた前払金(入居一時金)の返還には、法律の定めがあります。 契約書の返還条項を確認し、受け取り方は施設と確認してください。
未払いの利用料は、原則として相続の対象になります。 まず施設に請求の内訳を確認してください。
保証人になっている方は、亡くなったあとに契約書の4点を確認してください。 個人が保証人になる根保証契約では、亡くなった後に発生する分は保証の対象外とされています。2020年4月1日より前に締結された契約には、原則として改正前のルールが適用されます。
支払いを巡って争いになりそうなときは、弁護士にご相談ください。
相続のお手続きでお困りの方へ
うりずん相続手続き相談室では、相続人調査や相続財産の調査からお手伝いしています。戸籍の収集、相続関係の整理、争いのない案件での遺産分割協議書案の作成など、行政書士として対応できる手続きを承ります。相続登記や相続税、相続人の間で争いがある場合には、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携し、必要な専門家へ適切におつなぎします。まずはお話をお聞かせください。どうぞ安心してご相談ください。
川崎・横浜エリアを中心に、初回のご相談は60分無料・土日祝もご予約可能・秘密厳守・お問い合わせには翌営業日までにご返信しています。お電話・LINE・お問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。