
※この記事は2026年9月時点の情報に基づく一般的な解説です。この記事で扱う改正は、まだ施行されていません。この改正部分の施行日は、公布の日から2年を超えない範囲内で政令で定めることとされています。具体的な施行日や一部の運用内容は、2026年9月時点の公表資料では確認できませんでした。いまの日常生活自立支援事業は市町村の社会福祉協議会、介護や暮らしの相談は地域包括支援センター、生活の困りごとは市区町村の福祉の窓口にご確認ください。
近くに頼れる家族がいない方にとって、入院するときの手続きや、亡くなった後の手続きを誰にお願いするかは、大きな心配ごとです。2026年6月に成立した改正社会福祉法では、こうした方への支援を社会福祉の事業として位置付け直す改正が行われました。ただし、この改正はまだ施行されていません。施行日を定める政令や、具体的な利用料、誰が支援を担うのかなどは、公表されている資料では確認できませんでした。この記事では、改正で決まったことと、公表資料ではまだ分からないことを分けて整理します。
目次
- なぜ見直されたのか|身寄りのない人の困りごと
- いまある「日常生活自立支援事業」とは
- 改正で決まったこと
- 支援の中身|資料に挙げられている例
- 公表資料ではまだ分からないこと
- 施行日に注意|「令和9年4月」ではありません
- 民間の終身サポートや成年後見との関係
- 施行前のいま、相談できるところ
- 行政書士に相談できること
なぜ見直されたのか|身寄りのない人の困りごと
厚生労働省の資料は、頼れる身寄りがいない方の生活上の課題として、次のような例を挙げています。
- 入院・入所などのときに、連絡先になってくれる人がいなくて手続きができない
- 医療費の支払いなどの手続きができない
- 葬儀・納骨などの死後の手続きをする人がいない
こうした困りごとには、民間の事業者による「高齢者等終身サポート事業」もあります。厚生労働省の資料は、民間の終身サポート事業について、一定程度の費用が必要となることもあるため、資力が十分にない人も利用できる事業が求められている、と説明しています。民間の事業者と契約する前に確認したいことは、身元保証や死後事務を事業者に頼む前にの記事で整理しています。
いまある「日常生活自立支援事業」とは
改正の中身を見る前に、いまある制度を確認しておきます。
日常生活自立支援事業は、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などのうち、判断能力が不十分な方が地域で自立した生活を送れるよう、利用者との契約にもとづいて、福祉サービスの利用援助などを行うものです。厚生労働省の資料では、社会福祉法にもとづく福祉サービス利用援助事業を行う事業として位置付けられています。
- 実施主体:都道府県・指定都市の社会福祉協議会(窓口の業務などは、市町村の社会福祉協議会などが行う)
- 主な援助:福祉サービスの利用援助、住民票の届出などの行政手続きに関する援助、預金の払い戻しなどの日常的な金銭管理、定期的な訪問
- 利用料:実施主体が定める利用料を利用者が負担する。厚生労働省のページでは、訪問1回あたりの利用料の平均は1,200円と案内されている。契約前の初期相談や、生活保護を受けている世帯の利用料は無料とされている
ここで大切なのは、この事業の対象が「判断能力が不十分な方」だという点です。いまの対象要件に、身寄りがないこと自体は入っていません。今回の改正は、この部分を広げるものです。
改正で決まったこと
改正法は「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)です。2026年6月19日に成立し、同月25日に公布されました。
改正の形は、2つの面から説明されています。法律の条文では、社会福祉法2条3項12号の「福祉サービス利用援助事業」を拡充し、「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」に改めています。一方、厚生労働省は、この見直しを「第二種社会福祉事業の新設」とも説明しています。
改正後の対象は、「精神上の理由又は近隣に居住する家族がいないことその他の理由により日常生活又は社会生活を営むのに支障がある生計困難者」とされています。どこまでが生計困難者に当たるかは、公表されている資料では確認できませんでした。
| 項目 | 改正で決まった内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 法律 | 社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号) | 厚生労働省の公布通知 |
| 対象 | 精神上の理由や、近隣に居住する家族がいないことその他の理由により、日常生活または社会生活を営むのに支障がある生計困難者 | 厚生労働省の公布通知 |
| 援助の範囲 | 福祉サービスに加えて、保健医療サービスや、葬祭など亡くなった場合に必要なサービスの利用の援助 | 厚生労働省の公布通知 |
| 料金の考え方 | 利用者のうち一定割合以上に、無料または低額の料金で提供する事業。資力の要件に該当する方は無料または低額とされている | 厚生労働省の資料 |
| 担い手 | 厚生労働省は、多様な主体が支援の提供を担えるようにすると説明 | 厚生労働省の資料 |
| 施行 | 公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日 | 厚生労働省の公布通知 |
表のうち、「一定割合」の具体的な割合、具体的な担い手、施行日は、公表されている資料では確認できませんでした。施行期日を定める政令も、2026年9月23日時点では確認できませんでした。
支援の中身|資料に挙げられている例
厚生労働省の資料は、改正後の支援の例として、次のものを挙げています。
- 入院・入所などの手続きの支援:入退院などの手続きの支援、緊急連絡先の提供、費用の支払いの代行
- 死後の事務の支援:葬儀・納骨・家財の処分についての契約の手続きの支援、役所への届出
資料では、この2つは「又は」で結ばれています。両方がそろった支援に限られるわけではない、ということです。
⚠ 身元保証人になることは、公表されている資料では確認できません
資料に例として挙げられているのは、手続きの支援、緊急連絡先の提供、費用の支払いの代行です。身元保証人になることや、お金の保証、医療行為への同意を含むかどうかは、公表されている資料では確認できませんでした。
「緊急連絡先の提供」と「身元保証」は、別のものです。入院や入所の場面で身元保証人を求められたときの選択肢は、老人ホームに身元保証人なしで入れる?の記事で説明しています。
公表資料ではまだ分からないこと
次の点は、2026年9月23日時点で公表されている資料では確認できませんでした。
| 項目 | 2026年9月23日時点の状況 |
|---|---|
| 施行日 | 施行期日を定める政令は確認できませんでした |
| 「一定割合」の具体的な割合 | 具体的な割合を定める公表資料は確認できませんでした |
| 無料・低額の対象となる具体的な資力要件、利用料の金額 | 具体的な基準・金額は、公表されている資料では確認できませんでした |
| 「生計困難者」の範囲 | 公表されている資料では確認できませんでした |
| 具体的な実施主体 | 公表されている資料では確認できませんでした |
| 施行後の申込み先・窓口 | 公表されている資料では確認できませんでした |
| 身元保証・お金の保証・医療行為への同意を含むか | 公表されている資料では確認できませんでした |
| 改正後の日常生活自立支援事業の名称・実施のしかた | 公表されている資料では確認できませんでした |
厚生労働省は、改正後の事業について「多様な主体が支援の提供を担えるようにします」と説明しています。ただし、具体的にどこが実施するのかは、公表されている資料では確認できませんでした。
いまの日常生活自立支援事業は、判断能力が不十分な方を対象として、社会福祉協議会が行っています。この事業が改正後にどのような名称・しくみになるのかも、公表されている資料では確認できませんでした。
施行日に注意|「令和9年4月」ではありません
改正法全体の原則の施行日は、令和9年4月1日です。ただし、この記事で扱っている部分(社会福祉法2条3項12号の改正など)は、原則とは別に、「公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日」から施行されることになっています。
この施行日を定める政令は、2026年9月23日時点では確認できませんでした。「令和9年4月には身寄りのない人への新しい支援が使えるようになる」と読める情報を見かけたときは、この点に注意してください。
民間の終身サポートや成年後見との関係
厚生労働省の資料では、今回の事業は「成年後見制度以外の権利擁護支援策」の一つとして位置付けられています。成年後見制度そのものについても、2026年に見直しの改正法が成立しています。その内容は2026年改正で成年後見制度はどう変わる?家族が知っておきたい5つのポイントの記事と、成年後見は「必要な範囲で使う」制度への記事で説明しています。
今回の記事で扱う社会福祉法上の事業と、民間の終身サポート、任意後見、死後事務委任は、それぞれ制度や契約の位置付けが異なります。任意後見・身元保証・死後事務委任の違いは、任意後見・身元保証・死後事務委任の違いの記事で整理しています。
施行前のいま、相談できるところ
改正はまだ施行されていないので、いま相談できるのは、次のような窓口です。
- 市町村の社会福祉協議会:日常生活自立支援事業(判断能力が不十分な方が対象)の相談
- 地域包括支援センター:介護や暮らしの困りごとの相談
- 市区町村の福祉の窓口:生活の困りごとの相談
- 川崎市にお住まいの方:川崎市社会福祉協議会が行っている終活支援の事業があります。身元保証とは別のしくみです。詳しくは川崎市の終活支援事業とはの記事をご覧ください
施行期日を定める政令を含め、施行後にどこへ申し込むことになるのかは、公表されている資料では確認できませんでした。
行政書士に相談できること
行政書士は、権利義務に関する書類の作成を業務としています。身寄りのない方の備えについては、次のようなお手伝いができます。
- 任意後見契約・死後事務委任契約・財産管理等委託契約などの契約書の文案の作成(任意後見契約は公正証書で結ぶ必要があり、公正証書を作成するのは公証人です)
- 公表されている資料の範囲での制度の一般的な説明と、状況に応じた相談先の整理
一方で、家庭裁判所に出す後見開始などの申立ては、ご本人や親族などが行うこともできます。家庭裁判所へ提出する書類の作成を専門家に依頼する場合は司法書士または弁護士、申立ての代理を専門家に依頼する場合は弁護士へ相談します。当事務所では、裁判所提出書類の作成や申立代理は行っていません。
また、個別の方が「生計困難者」に当たるかどうかを、当事務所で判断することはしません。「生計困難者」の範囲は、公表されている資料では確認できませんでした。対象の確認の方法や窓口は、公表される制度の案内をご確認ください。
まとめ
2026年の社会福祉法の改正で、身寄りのない人などへの支援を社会福祉の事業として位置付け直す改正が行われましたが、まだ施行されていません。
- 対象は、近隣に家族がいないことなどにより日常生活に支障がある「生計困難者」とされています。その範囲は、公表されている資料では確認できませんでした
- 資料に挙げられている支援の例は、手続きの支援・緊急連絡先の提供・費用の支払いの代行・死後の手続きの支援です。身元保証を含むかどうかは、公表されている資料では確認できませんでした
- 施行日は「公布の日から2年を超えない範囲内において政令で定める日」とされ、その政令は2026年9月23日時点では確認できませんでした
- 利用料・具体的な実施主体・申込み先も、公表されている資料では確認できませんでした
- 判断能力が不十分な方は、市町村の社会福祉協議会で日常生活自立支援事業について相談できます。高齢者の暮らしの相談は地域包括支援センターなど、現在ある相談窓口も確認しましょう
身寄りのない方の備えは、いまある制度と、これから整えられる制度の両方を見ながら考えることが大切です。分かっていることと分からないことを分けて、ご自身に合った備えを一つずつ選んでいきましょう。
相続のお手続きでお困りの方へ
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