※この記事は2026年7月時点の情報に基づく一般的な解説です。成年後見制度を見直す改正法は2026年6月17日に成立し、6月24日に公布されましたが、施行日は公布の日から2年6か月以内の政令で定める日とされており、2026年7月時点ではまだ施行されていません。現時点で成年後見制度を利用する場合は、現行の制度が適用されます。今後の政令や運用の詳細については、法務省などの公的機関の発表をご確認ください。
「成年後見制度が使いやすくなると聞いたけれど、それを待ってから考えた方がいいのだろうか」——2026年の法改正のニュースを受けて、そう迷われる方が増えています。
たしかに、今回の改正では「必要な範囲で、必要な期間だけ使う」制度へと、大きく方向が変わる見込みです。ただし、注意しなければならない点があります。改正法は成立・公布されましたが、まだ施行されていません。つまり、今すぐ新しい制度が使えるわけではないのです。
この記事では、「改正を待つべきか、今から動くべきか」を判断するために必要な情報を整理します。改正の内容そのものを詳しく知りたい方は、別の記事で全体像を解説していますので、あわせてご覧ください。ここでは、改正を前にした今、ご家庭で何をどう考えればよいかに焦点を当てて、川崎の行政書士がやさしく整理します。
目次
- 今の成年後見制度に「使いにくさ」が指摘されてきた理由
- 改正で「必要な範囲・必要な期間」へ変わる見込み
- ただし、改正はまだ施行されていません
- 「改正を待つべきか」を判断する3つのケース
- 待っている間にこそできる備えがある
- 改正後を見据えて、今から準備しておくとよいこと
- 施行までのスケジュールと、注意しておきたいこと
- うりずんに相談できること
今の成年後見制度に「使いにくさ」が指摘されてきた理由
まず前提として、現行の成年後見制度は、判断能力が低下した方の財産や生活を守るために、これまで多くの方に利用され、実際に役立ってきた制度です。今まさに利用されている方も、多くいらっしゃいます。
そのうえで、制度の利用をためらう理由として、次のような点が指摘されてきました。
一度始めると、原則として終わりにくいという点です。現行制度では、後見が始まると、本人の判断能力が回復しない限り、原則として本人が亡くなるまで続きます。「遺産分割のときだけ利用したい」と思っても、その手続きが終われば終了、というわけにはいきません。
支援の範囲を細かく選びにくいという点もあります。後見の類型では、本人の財産管理全般が後見人の職務になります。「不動産の売却のときだけ支援してほしい」といった、限定的な使い方が難しいという声がありました。
専門職が後見人になると、継続的な報酬が生じ得ることも、利用のハードルとして挙げられてきました。必要な手続きが終わった後も支援が続くため、その期間の負担をどう考えるか、という問題です。
こうした指摘を踏まえて、制度をより使いやすくするための見直しが行われたのが、今回の改正です。
改正で「必要な範囲・必要な期間」へ変わる見込み
2026年に成立した改正法では、成年後見制度の考え方が大きく見直される見込みです。方向性を一言でいえば、「必要な範囲で、必要な期間だけ使える制度へ」という転換です。
たとえば、これまでの「後見・保佐・補助」という3つの類型を「補助」に一元化し、本人の状況に応じて、支援が必要な行為や期間を柔軟に設定できるようにする、といった内容が含まれています。「一度始めたら終われない」「全部お任せするしかない」といった従来の課題に応えようとするものです。
改正の具体的な内容や5つの柱については、別の記事で詳しく解説しています。この記事では、その内容を前提に、「では、わが家はどうすればよいのか」という判断に焦点を当てていきます。
ただし、改正はまだ施行されていません
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいポイントです。
改正法は、2026年6月17日に成立し、6月24日に公布されました。しかし、公布されたからといって、すぐに新しい制度が使えるわけではありません。施行日は、公布の日から2年6か月以内の政令で定める日とされており、2026年7月時点では、まだ施行されていません。
つまり、今この時点で成年後見制度を利用しようとすれば、適用されるのは現行の制度です。「必要な範囲だけ、必要な期間だけ」という新しい使い方は、施行されるまで利用できません。
ニュースで改正が報じられると、「もう新しい制度が始まった」と受け取ってしまいがちですが、そうではありません。制度の切り替え時期であるからこそ、「今できること」と「施行後にできること」を、きちんと分けて考える必要があります。
「改正を待つべきか」を判断する3つのケース
「改正を待った方がいいのか」という問いには、ご家庭の状況によって答えが変わります。大きく3つのケースに分けて考えてみましょう。
ケース1:すでに判断能力が大きく低下していて、今すぐ手続きが必要な場合
遺産分割や施設入所の契約など、判断能力が必要な手続きが今まさに必要な場合、改正を待つことはできません。現行の制度で対応することになります。今困っている手続きを、施行日まで数年間止めておくことは現実的ではないからです。この場合は、現行制度での申立てを検討することになります。
なお、法定後見の申立てから後見人等が選任されるまでには、一定の時間がかかります。家庭裁判所での審理や調査が必要になるためで、事案によっては数か月かかることもあります。「急いで手続きが必要」という場面ほど、早めに準備を始めることが大切です。
ケース2:今はまだ元気だが、将来に備えたい場合
この場合、「施行を待って新しい制度を使う」という選択肢も考えられます。ただし、待つことにはリスクがあります。改正法の施行は数年先になる見込みで、その間に判断能力が低下してしまうと、任意後見契約や家族信託といった「元気なうちにしか結べない契約」ができなくなってしまいます。判断能力が低下してからでは、選べる制度が大きく狭まるのです。
「改正を待つ」ことと「何も備えない」ことは、まったく違います。この点は、次の章で詳しく説明します。
ケース3:判断能力が少し不安になってきた場合
もっとも慎重な判断が必要なケースです。任意後見契約や家族信託は、本人が契約内容を理解して結べる状態であることが前提になります。「まだ大丈夫だと思う」という段階でも、時間が経つほど選択肢は狭まっていきます。早めに専門家に相談し、今どの選択肢が取れる状態なのかを確認しておくことをおすすめします。
待っている間にこそできる備えがある
改正の施行を待つとしても、その間、何もできないわけではありません。むしろ、元気な今だからこそできる備えがあります。
認知症などで判断能力が低下した後に備える制度は、成年後見だけではありません。任意後見(元気なうちに、将来支援してくれる人と契約しておく)、家族信託(財産の管理を家族に託しておく)、財産管理委任契約(判断能力があるうちから財産管理を任せる)など、複数の選択肢があります。
このうち財産管理委任契約は、判断能力があるうちから、身体の不自由などで財産管理が難しくなった場面に対応できる契約です。判断能力が低下した後の備えである任意後見契約とセットで結んでおくことで、元気なうちから判断能力低下後まで、切れ目なく支えられる形をつくることもできます。
これらに共通するのは、本人が元気なうちにしか始められないという点です。判断能力が低下してしまうと、新たに契約を結ぶこと自体が難しくなります。だからこそ、「改正を待つ」という判断をした場合でも、待っている期間に、これらの備えを整えておくことが大切です。
認知症に備える3つの制度(任意後見・法定後見・家族信託)の違いや、どんな人にどの制度が向くかは、別の記事で比較しています。家族信託の詳しい仕組みや、任意後見と法定後見の違いについても、それぞれ個別の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
改正後を見据えて、今から準備しておくとよいこと
新しい制度では、「必要な範囲で、必要な期間だけ」支援を設定できるようになる見込みです。これは裏を返せば、「どの範囲の支援が、どのくらいの期間必要なのか」を、ご家庭の側で整理しておく必要があるということでもあります。
改正後を見据えて、今から準備しておくとよいことを挙げます。
- 財産の棚卸し:どんな財産が、どこに、どれだけあるのかを一覧にしておく。不動産、預貯金、保険、有価証券など。
- 支援してほしい範囲の整理:「不動産の管理は任せたい」「日常の買い物は自分でしたい」など、どこまで支援が必要かを考えておく。
- 家族の意向の共有:誰に支援をお願いしたいか、家族はどう考えているかを、元気なうちに話し合っておく。
- 信頼できる相談先を見つけておく:制度が切り替わる時期だからこそ、最新の情報を確認できる専門家とつながっておく。
こうした準備は、新しい制度を使うときにも、任意後見や家族信託を検討するときにも、そのまま役立ちます。「改正を待つかどうか」に関わらず、今から始められる備えです。
施行までのスケジュールと、注意しておきたいこと
改正法の施行日は、公布の日(2026年6月24日)から2年6か月以内の政令で定める日とされています。内容ごとに施行時期が分かれる可能性もあり、具体的な日付は今後の政令で決まります。
また、施行後に制度が実際にどう運用されるのかは、まだ確定していない部分があります。家庭裁判所の運用、支援の範囲の決め方、報酬の考え方など、詳細は今後明らかになっていく見込みです。
そのため、現時点では次の点に注意してください。
- 「新しい制度がもう使える」という情報は誤りです。施行されるまでは現行制度が適用されます。
- 「改正でこう変わる」という説明の中には、まだ確定していない運用面の話が含まれていることがあります。
- 制度の切り替え時期は情報が錯綜しやすいため、法務省など公的機関の発表を確認することが大切です。
情報を追いながら、ご家庭でできる備えを進めていく——それが、この時期にできる最も現実的な対応です。
うりずんに相談できること
「改正を待つべきか、今動くべきか分からない」「今のわが家の状況で、どんな選択肢があるのか知りたい」——制度の切り替え時期だからこそ、こうした迷いが生まれやすくなっています。
相続のお手続きでお困りの方へ
うりずん相続手続き相談室では、ご家庭の状況の整理、選べる制度の比較、任意後見契約書や家族信託の契約書案の作成サポート、財産の棚卸しのお手伝いなど、行政書士・社会保険労務士として対応できる手続きを中心にお手伝いしています。法定後見の申立てや、相続税に関わる判断、相続人の間に争いがある場合などには、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携して対応します。また、身元保証や死後事務の実務は、一般社団法人いきいきライフ協会川崎南が担う二者体制で、生前から亡くなった後までを見据えたサポートを行っています。
川崎・横浜エリアを中心に、初回のご相談は60分無料・土日祝もご予約可能・秘密厳守・お問い合わせには翌営業日までにご返信しています。お電話・LINE・お問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。
大切なのは、「改正を待つ」ことと「何も備えない」ことを、混同しないことです。元気なうちにしかできない備えがあります。まずは、今のご家庭の状況を一緒に整理するところから、お気軽にご相談ください。
まとめ
2026年に成立した成年後見制度の改正は、「必要な範囲で、必要な期間だけ使う」制度への大きな転換です。ただし、改正法は成立・公布されたものの、まだ施行されていません。今すぐ新しい制度が使えるわけではなく、現時点で利用するなら現行制度が適用されます。
「改正を待つべきか」は、ご家庭の状況によって変わります。すでに判断能力が低下し、今すぐ手続きが必要なら、待つことはできません。まだ元気なら待つ選択肢もありますが、待っている間に判断能力が低下すると、任意後見や家族信託といった「元気なうちにしかできない備え」が選べなくなるリスクがあります。
大切なのは、「待つ」ことと「何もしない」ことを分けて考えることです。財産の棚卸し、支援してほしい範囲の整理、家族との話し合い——改正を待つ間にも、できる備えはたくさんあります。制度の切り替え時期だからこそ、早めにご家庭の状況を整理しておくことをおすすめします。