身元保証・終身サポート

身元保証や死後事務を事業者に頼む前に|国のガイドラインを物差しに契約書を見る

掲載:Officeうりずん社会保険労務士・行政書士事務所 代表・資格情報

相談室で70代後半の女性が行政書士と向かい合い、事業者との契約書や重要事項説明書について相談しているイラスト

※この記事は2026年9月時点の情報に基づく一般的な解説です。事業者との契約で確認すべき点は、契約の内容や費用の支払い方法、ご本人の判断能力の状況などによって異なります。契約や勧誘をめぐる相談は消費生活センター(消費者ホットライン188)、暮らしや介護の相談は地域包括支援センター、契約をめぐる争いは弁護士にご確認ください。

家族に頼めない入院の手続きや、亡くなった後の葬儀・納骨・家財の整理などを、事業者との契約で任せる方が増えています。こうした事業について、国は令和6年(2024年)6月に「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定しました。ガイドラインは法律ではありませんが、利用者が事業者を判断するときの目安にもなり得るものとされています。この記事では、契約書や重要事項説明書を受け取ったときに、ガイドラインのどの項目を物差しにして確認すればよいかを整理します。実際に起きているトラブルの例は、身元保証・終身サポートのトラブル事例の記事で紹介しています。


目次

  1. 高齢者等終身サポート事業と国のガイドライン
  2. ガイドラインは法律ではない、それでも契約前の「目安」になる
  3. 契約前の説明と、重要事項説明書で確認する12項目
  4. 法令に根拠がある6項目|チェックリストの◎印
  5. 預託金は「分けて管理しているか」「報告があるか」を見る
  6. 寄附や遺贈を契約の条件にしていないか
  7. 2026年の動き|公的な支援事業の見直しと、業界団体の認定
  8. 不安があるときの相談先
  9. 行政書士に相談できること
身元保証や死後事務を事業者に頼む前に、国のガイドラインを目安に重要事項説明書と契約書を受け取っているか、解約と返金のルール、前払いしたお金の管理、寄附や遺贈を契約の条件にしていないかを確認することについて、70代後半の女性が行政書士から説明を受けている様子を描いたイラスト

高齢者等終身サポート事業と国のガイドライン

高齢者等終身サポート事業とは、家族や親族が担ってきた支援を、契約にもとづいて事業者が提供するものです。ガイドラインは、提供されているサービスを大きく3つに分けています。

  • 身元保証等サービス:入院・入所の際の連帯保証、入退院・入退所時の手続の代行、緊急連絡先の指定の受託と緊急時の対応など
  • 死後事務サービス:死亡の確認と関係者への連絡、葬儀に関する事務、火葬の手続の代行、家財道具や遺品等の整理など
  • 日常生活支援サービス:通院の送迎・付添い、買物への同行など

ガイドラインの正式名称は「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」です。内閣官房(身元保証等高齢者サポート調整チーム)、内閣府 孤独・孤立対策推進室、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省の9つの府省庁が、令和6年6月に連名で策定しました。これまでの「身元保証等高齢者サポート事業」という呼び方も、このガイドラインで「高齢者等終身サポート事業」に改められています。事業者向けの指針ですが、利用者が事業者を判断する目安ともなり得るものとされています(次の節で説明します)。

主な対象は、次の3つをすべて満たす事業者です。

  • 身元保証等サービスと死後事務サービスを提供していること
  • 本人(契約者)と結んだ契約にもとづいてサービスを提供していること
  • 事業として継続的に提供していること

なお、弁護士、司法書士、行政書士など、業法による規制がすでにある業種はこのガイドラインの対象外とされています。ただし、これらの業種がガイドラインに書かれた業務を行う場合には、ガイドラインを参考とすることが考えられる、とされています。

身元保証を事業者に頼もうと考えるきっかけとして、入院や入所の場面があります。ガイドラインは、医療機関・介護保険施設等が、身元保証人等がいないことのみを理由に入院・入所を拒むことは不適当であるとされている、と記載しています(平成30年4月27日 厚生労働省医政局医事課長通知、平成30年8月30日 厚生労働省老健局高齢者支援課・振興課通知)。施設に入るときの選択肢は、老人ホームに身元保証人なしで入れる?の記事で詳しく説明しています。任意後見や死後事務委任との違いは、任意後見・身元保証・死後事務委任の違いの記事をご覧ください。


ガイドラインは法律ではない、それでも契約前の「目安」になる

ガイドラインの性格を理解するうえで大切なのは、次の2つの記述を一緒に読むことです。

  • ガイドラインは、「事業者が自主的に適正な事業実施の観点から確認するためのもの」とされています
  • 同時に、「利用者による事業者判断の目安ともなり得るもの」とされています

ガイドラインの内容に沿っていないこと自体に、ガイドライン独自の罰則は定められていません。ただし、項目の中には消費者契約法や民法などに根拠を持つものがあり、契約条項の無効や取消しなどが問題になる場合があります。

ガイドラインの記述は、「〜が重要である」「〜が望ましい」という言い方で書かれています。事業者が取り組むことが重要と考えられる事項を、現時点で取りまとめたものという位置づけです。

⚠ 国のガイドライン自体には、第三者が適合性を判定する仕組みは定められていません
2024年のガイドラインでは、国は優良な事業者を認定する仕組みの創設等について「検討する」としています。2026年9月時点で確認した国の公表資料では、国による認定制度の創設は確認できませんでした。契約前に、書面の中身をご自身で確認することが大切です。


契約前の説明と、重要事項説明書で確認する12項目

ガイドラインは、契約の前に事業者が行う説明について、次のように整理しています。

  • 事業者は、利用者の意思能力を丁寧に確認したうえで契約を結ぶことが必要とされています(民法第3条の2参照)
  • 利用者本人との面談等を通じて、年齢や心身の状態、知識や経験をふまえた丁寧な説明を行い、重要事項説明書を作成・交付することが重要とされています
  • 契約内容を明確にするために、契約書を作成して利用者に交付することが重要とされています

消費生活相談には、これまで「契約書が交付されていない」といった相談が寄せられているとされています。書面を受け取ることが、確認の出発点になります。

重要事項として、ガイドラインは次のような事項を挙げています。契約書や重要事項説明書を見るときの目安として使えます。

  1. 契約者に対して提供するサービス内容や費用
  2. 費用の支払方法
  3. 提供するサービスの履行状況を確認する方法
  4. 入院・入所等が必要となった場合の対応方針、医療に係る意思決定の支援
  5. 利用者の判断能力が低下した場合の対応方針
  6. サービスの債務不履行や不法行為により利用者に損害が発生した場合の賠償に関するルール
  7. 解除方法・解約事由や、契約変更・解約時の返金に関する取扱い
  8. 預託金の管理方法等
  9. 死後事務として提供されるサービスの内容
  10. 寄附や遺贈に関する取扱方針
  11. 個人情報の取扱方針と管理体制
  12. 相談窓口の連絡先

8の預託金を事業者の運営資金と区分して管理しているかどうかは、後の「預託金」の節で、10の寄附や遺贈を契約の条件にしていないかどうかは、その次の節で詳しく見ます。

費用は区分して示されているか

ガイドラインは、費用を包括的に示すのではなく、入会金や預託金などを区分して示し、サービスを使うたびに支払う費用がある場合はその旨を明確に示すことが重要としています。預託金から差し引く方法で支払う場合は、差し引かれた費用の金額と内容を明らかにすることが望ましいとされています。

損害賠償と、解約・返金のルール

損害賠償や解約料については、ガイドラインが消費者契約法の規律を引用しています。

  • 事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項、故意または重過失の場合に一部を免除する条項、事業者が責任の有無や限度を自ら決める条項は、無効となります(消費者契約法第8条)
  • 解約料のうち、平均的な損害の額を超える部分は無効となります(消費者契約法第9条第1項第1号)
  • 事業者は、解約料について説明を求められた場合、算定根拠の概要を説明する努力義務を負います(同条第2項)

ガイドラインには、適格消費者団体が、終身サポート事業者の使っていた解約料の条項を消費者の利益を一方的に害する条項として差止請求し、最終的に和解した事案がある、という紹介もあります。


法令に根拠がある6項目|チェックリストの◎印

国は、ガイドラインとあわせて30項目の別紙チェックリストを作成しています。事業者が自ら点検するためにも、利用者が事業者を判断する目安としても使えるものです。チェックリストの各項目には、「◎=法令に根拠があるもの」と「〇=ガイドラインによるもの」の印が付いています。

◎が付いているのは、次の6項目です。

番号チェックリストの項目根拠となる法令
6解約料について適正な金額が設定されている消費者契約法第9条第1項第1号
12不当な方法による勧誘を行っていない消費者契約法第4条
23利用者が求めた際に、サービスの実施状況について報告している民法第645条
24委任契約の終了後、利用者本人または相続人に対し、その経過及び結果について報告している民法第645条
25利用者が求めた際に、解約に必要な手順を伝えている消費者契約法第3条第1項第4号
27解約料の算定根拠の概要や、違約金等を設定した合理的理由を説明することができる消費者契約法第9条第2項

チェックリストには、具体的な例も載っています。不当な勧誘の例(項目12)として「契約を締結するまで、事務所から帰さない」「『契約しないと生活が維持できなくなる』と不安を煽る」が、解約を過度に制限する不当な説明の例(項目26・〇印)として「解約を考え直してくれなければ困る」が挙げられています。


預託金は「分けて管理しているか」「報告があるか」を見る

終身サポートの契約では、将来のサービスの費用を前払い(預託)することがあります。ガイドラインは、事業者の万が一の経営破綻などに備える観点から、預託金について次の2点が望ましいとしています。

  • 事業者自身の運営資金等とは明確に区分して管理すること
  • 利用者に定期的に管理状況を報告すること

あわせて、これらを実施する旨を契約書に明記し、利用者と共有しておくことが望ましいとされています。保全の方法としては、信託銀行または信託会社との信託契約を利用することが望ましいとされています。

別の法人に管理を委託する方法や、運転資金と分けた預金で管理する方法も考えられるとされています。ただし、これらの方法では必ずしも倒産隔離が効かず、事業者や別法人が破綻したときに十分な資金の還付を受けられない可能性があることに留意を要する、とガイドラインは記載しています。預託金の目安の額や費用の考え方は、死後事務委任契約とはの記事で説明しています。


寄附や遺贈を契約の条件にしていないか

ガイドラインは、事業者への寄附や遺贈そのものを否定しているわけではありません。利用者との死因贈与契約や、利用者からの寄附は、真に利用者の意思にもとづくものであれば不適切とはいえない、とされています。

問題とされているのは、次のような形です。

  • 死因贈与契約や寄附を、サービスの契約の条件にすること
  • サービスの契約とセットにした契約プランを設けること
  • 遺贈を受けることを、サービスの契約の条件とすること

これらは、真に利用者の意思にもとづくものか疑義が残るため、避けることが重要とされています。事業者は、サービスにかける費用を抑えるほど将来受け取れる財産が増える、利益相反的な立場にあるためです。死因贈与契約を結ぶ場合は、利用者に撤回権があることを説明し、その旨を記録しておくことが望ましいとされています。

契約書や重要事項説明書で寄附や遺贈の取扱方針(12項目の10)を確かめることが、事業者を判断する目安の一つになります。

遺贈について相談を受ける場合、事業者は遺贈先として自社だけを示すのではなく、他の遺贈先も選択肢として示すことが望ましいとされています。事業者が遺贈を受けようとする場合は、公正証書遺言によることが望ましいとされています。

ガイドラインは裁判例も紹介しています。身元保証契約と死因贈与契約をセットにした契約について、社会的弱者とされる高齢者に身元保証を提供する代わりに、合理的な理由もないまま死亡時の不動産を除く全財産を無償で譲渡させるもので、暴利行為として公序良俗に反し無効とした裁判例(名古屋高裁 令和4年3月22日判決)です。


2026年の動き|公的な支援事業の見直しと、業界団体の認定

ガイドラインの策定後、2026年には関連する動きが2つありました。いずれも、民間の事業者と契約する前に知っておきたいことです。

社会福祉法の改正(まだ施行されていません)

2026年6月に成立した改正社会福祉法では、現在の「福祉サービス利用援助事業」を拡充・発展させ、「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」として位置付け直す改正が行われました。厚生労働省は、この見直しを「第二種社会福祉事業の新設」とも説明しています。

改正後の対象は、「精神上の理由又は近隣に居住する家族がいないことその他の理由により日常生活又は社会生活を営むのに支障がある生計困難者」です。福祉サービスの利用の援助に加えて、保健医療サービスや、葬祭その他亡くなった場合に必要なサービスの利用の援助が加わります。厚生労働省の資料は、円滑な入院等の手続支援や死後事務の支援を、利用者のうち一定割合以上に無料又は低額の料金で提供する事業と説明しています。

厚生労働省の資料は、民間の終身サポート事業について、一定程度の費用が必要となることもあるため、資力が十分にない人も利用できる事業が求められている、と説明しています。この「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」に関する改正規定の施行は、公布の日から2年を超えない範囲内で政令で定める日とされています。2026年9月時点では、まだ施行されていません。

業界団体が始めた独自の認定

2026年6月には、終身サポート事業者の業界団体が、独自の優良事業者の認定を始めました。国のガイドラインに加えて、団体が定める審査基準を満たした事業者を認定するものです。2024年のガイドラインでは、国は優良な事業者を認定する仕組みの創設等について「検討する」としています。2026年9月時点で確認した国の公表資料では、国による認定制度の創設は確認できませんでした。業界団体の認定は、これとは別のものです。「認定」という表示を見たときは、誰が、どのような基準で認定したものかを確認することが大切です。認定の有無にかかわらず、ガイドラインを目安に契約書や重要事項説明書を確かめることに変わりはありません。


不安があるときの相談先

消費者庁は、高齢者等終身サポート事業を利用するにあたって、サービス内容や支払能力などを確認し、不安がある場合は消費生活センターや地域包括支援センターに相談するよう呼びかけています。ガイドラインやチェックリストを目安に書面を見て、分からないところが残ったら、書面を持って相談するのが近道です。

  • 消費生活センター:契約や勧誘、解約をめぐる相談。どこに電話すればよいか分からないときは、消費者ホットライン188につながります。相談自体は無料ですが、188は料金案内のガイダンスの後から通話料がかかります
  • 地域包括支援センター:介護や日々の暮らしの困りごとを含めた相談
  • 川崎市にお住まいの方:社会福祉協議会が実施している終活支援の事業があります。身元保証とは別の仕組みで、対象になる方の条件もあります。詳しくは川崎市の終活支援事業とはの記事をご覧ください

事業者との契約をめぐって争いになっている場合や、解約・返金の交渉が必要な場合は、弁護士にご相談ください。


行政書士に相談できること

行政書士は、権利義務に関する書類の作成を業務としています。身元保証や死後事務について、次のようなお手伝いができます。

  • 死後事務委任契約、見守り契約、財産管理等委託契約などの契約書の文案の作成
  • ガイドラインやチェックリストの項目を目安に、お手元の契約書や重要事項説明書に何が書かれているか、何が書かれていないかを一緒に整理すること

国のガイドライン自体には、個別の事業者がガイドラインに適合しているかを公式に判定する仕組みは定められていません。当事務所でも、個別の事業者を「適合」「不適合」と判定するのではなく、契約書や重要事項説明書に何が書かれているかを一緒に整理します。また、契約条項が有効か無効かの判断や、事業者との解約・返金の交渉は、弁護士の業務になります。


まとめ

国のガイドラインは法律ではありませんが、事業者と契約する前の物差しとして使えます。

  • ガイドラインは「事業者が自主的に確認するためのもの」であり、同時に「利用者による事業者判断の目安」にもなり得るとされています
  • 重要事項説明書では、サービス内容と費用、解約・返金、預託金の管理方法など12項目を確認します
  • チェックリストの◎印の6項目は、消費者契約法や民法に根拠があります
  • 預託金は、運営資金と区分して管理しているか、報告があるかを見ます。それでも倒産隔離が効かない場合があります
  • 寄附や遺贈そのものではなく、契約の条件やセットにしていないかを見ます
  • 迷ったら、書面を持って消費生活センターや地域包括支援センターに相談しましょう

身元保証や死後の手続きを事業者に任せる契約は、長い期間にわたる大切な契約です。ガイドラインを目安に書面を確かめ、納得したうえで契約することが、ご自身の暮らしと想いを守ることにつながります。

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