※この記事は2026年8月時点の情報に基づく一般的な解説です。見守り契約の内容や費用は、依頼先や契約の取り決めによって変わります。実際に契約や手続きを進める前に、地域包括支援センター、公証役場、または行政書士・司法書士・弁護士などの専門家にご確認ください。

離れて暮らす親から、しばらく連絡がない。電話をかけても出ない。心配になって様子を見に行くと、数日前から体調を崩していた——。

一人暮らしの高齢者が増えるなかで、こうした場面は決してめずらしくありません。ご本人にとっても、「もし倒れても誰も気づいてくれないのではないか」という不安はつきまといます。

そうした不安に備える方法のひとつが、見守り契約です。定期的に連絡を取り、生活の状況を確認してもらう契約で、判断能力があるうちに結んでおくものです。

ただし、見守り契約でできることには限りがあります。「契約しておけば安心」と考えて期待が大きくなりすぎると、いざというときに「思っていたことをしてもらえない」という行き違いにもなりかねません。

この記事では、見守り契約とはどのような契約なのか、何をしてもらえて何ができないのか、ほかの契約とどう組み合わせるのかを、行政書士の立場から整理してご説明します。


目次

  1. 見守り契約とは|定期的な連絡や訪問で暮らしを確認する契約
  2. 具体的に何をしてもらえるのか
  3. 何ができないのか|見守り契約の限界
  4. 誰に頼めるか|親族・専門職・民間事業者
  5. ほかの契約との違い|財産管理委任・任意後見・死後事務委任
  6. なぜ組み合わせて考えるのか|支援の切れ目をつくらない
  7. 契約前に確認しておきたいこと
  8. 始め方|まずは何から考えるか
見守り契約は定期的な連絡や訪問で暮らしの状況を確認する契約であること、財産管理はできないこと、ほかの契約と組み合わせて考えることについて、離れて暮らす親を心配する40代の女性が行政書士から説明を受けている様子を描いたイラスト

見守り契約とは|定期的な連絡や訪問で暮らしを確認する契約

見守り契約とは、定期的な連絡や訪問を通じて、暮らしの状況や健康状態を確認してもらう契約です。

依頼する側(委任者)と、引き受ける側(受任者)との間で結びます。判断能力があるうちに、ご自身で相手を選んで契約するのが特徴です。

イメージとしては、「決まった間隔で連絡を取り合う約束を、あらかじめ形にしておくもの」と考えていただくと分かりやすいかもしれません。

⚠ 法律で細かい内容が決まっている契約ではありません
見守り契約は、法律で細かい内容が決まっている契約ではありません。連絡の方法、訪問の頻度、異変時の対応などは、契約内容として具体的に決めておく必要があります。任意後見契約のように、公正証書で作成することが法律上必要とされる契約とは性質が異なります。

このため、「見守り契約を結んだ」といっても、内容は契約によってさまざまです。何をどこまでしてもらえるのかは、契約書で確認する必要があります。

🌱 どんな方が検討されるか
一人暮らしで、近くに頼れる親族がいない方。お子さんが遠方にお住まいの方。ご夫婦のどちらかに先立たれた方。また、離れて暮らす親のことが心配なお子さんから、ご相談をいただくこともあります。


具体的に何をしてもらえるのか

契約の内容によりますが、一般的には次のようなことが含まれます。

定期的な連絡

電話やメールなどで、決めた間隔で連絡を取ります。頻度は、たとえば週に1回、2週間に1回、月に1回など、ご事情に応じて決めます。声の様子や返答から、体調や気持ちの変化に気づくきっかけになります。

定期的な訪問・面談

ご自宅を訪問して、直接お会いします。電話では分からない生活の様子——食事はとれているか、部屋の状態はどうか、郵便物がたまっていないか——を確認できます。訪問の頻度は連絡より少なく、たとえば3か月に1回、半年に1回といった設定にすることもあります。

異変に気づいたときの連絡

連絡が取れない、様子がいつもと違うといった場合に、あらかじめ決めておいた連絡先へ知らせます。ご家族、ケアマネジャー、地域包括支援センターなど、状況に応じて連絡・相談する先を決めておきます。

必要な支援へのつなぎ

介護保険の利用が必要そうだ、医療機関の受診が必要そうだといった場合に、適切な窓口や専門職につなぎます。

🌱 頻度と方法は契約で決めます
「どのくらいの頻度で、どういう方法で」は、ご本人の生活リズムや不安の内容によって変わります。毎日の安否確認を希望される方もいれば、月1回の電話で十分という方もいらっしゃいます。契約前に、具体的に決めておくことが大切です。


何ができないのか|見守り契約の限界

期待と実際の内容がずれないよう、できないことも知っておいてください。ここを理解しないまま契約すると、いざというときに行き違いが起きます。

財産の管理はできません

見守り契約だけでは、預貯金の引き出しや財産管理の代理を当然に行えるわけではありません。「入院中に生活費を下ろしてきてほしい」といったことを頼みたい場合は、財産管理委任契約など別の契約が必要になります。

医療に関する判断はできません

医療行為への同意は、原則としてご本人の意思にもとづいて行われます。ご本人が意思表示できない場合の対応は、医療機関やご家族、関係者との間で慎重に確認されることになります。見守り契約を結んだからといって、受任者が医療行為に同意できるわけではありません。医療に関する希望や緊急時の連絡先は、別に整理しておく必要があります。

⚠ 任意後見人の権限は、契約で定めた範囲に限られます
これは見守り契約に限った話ではありません。任意後見人は、任意後見契約で委託された事務について、その事務の範囲で本人を代理します(任意後見契約に関する法律2条1号)。医療行為への同意については、任意後見人であることだけを理由に権限が当然に認められるわけではなく、契約の内容、ご本人の意思、医療機関側の意思決定支援の進め方をふまえて個別に確認することになります。なお成年後見人等については、厚生労働省が公表している資料でも「いわゆる医療同意権までは含まれない」とされています。

24時間の見守りではありません

センサーによる常時監視や、24時間体制の緊急通報とは異なります。決められた頻度で連絡や訪問を行うものですので、その合間に何かが起きても、すぐには気づけない可能性があります。

必ず駆けつける契約とは限りません

「異変があればすぐに駆けつける」という内容が含まれるかどうかは、契約次第です。夜間や休日の対応、遠方への移動をどうするかは、契約前に確認しておく必要があります。

認知症になった後の対応は別の備えが必要です

判断能力が低下した後の財産管理や、契約などの法律行為の代理は、見守り契約では対応できません。任意後見契約や成年後見制度との組み合わせを考える必要があります。この点は後の節でご説明します。


誰に頼めるか|親族・専門職・民間事業者

見守り契約は、親族、専門職、民間事業者などに依頼することがあります。誰に依頼するかによって、できること、連絡方法、緊急時の対応、費用の考え方が変わります。

ご親族に頼む場合

離れて暮らすお子さんやご兄弟に頼む形です。契約という形をとらず、事実上の見守りとして行われることも多くあります。ただし、ご親族も高齢であったり、遠方であったり、仕事の都合がついたりつかなかったりする場合には、継続が難しくなることもあります。継続的な役割や緊急時の対応を明確にしたい場合には、契約書で内容を整理しておくと安心です。

専門職に頼む場合

法律や福祉に関わる専門職に依頼する形です。行政書士、司法書士、弁護士、社会福祉士などが関わることがあります。任意後見契約や財産管理委任契約とあわせて設計できる点が特徴です。

民間事業者に頼む場合

身元保証や終身サポートを提供する事業者が、見守りをサービスの一部として提供していることがあります。幅広い支援を受けられる反面、契約内容や費用の確認が重要になります。事業者を選ぶときの注意点については身元保証会社のトラブル事例の記事でご説明しています。

⚠ 費用は「何をどこまで」で変わります
費用は、依頼先、連絡や訪問の頻度、緊急時対応の範囲などによって変わります。金額だけでなく、何をどこまでしてもらえるのかを確認することが大切です。


ほかの契約との違い|財産管理委任・任意後見・死後事務委任

見守り契約は、単独で使うよりも、ほかの契約と組み合わせて考えることが多い契約です。それぞれの役割を整理します。

契約いつ使うか主な役割
見守り契約元気なうち定期的な連絡・訪問で状況を確認する
財産管理委任契約判断能力はあるが、財産管理や手続きを任せたいとき預貯金の管理、支払い、各種手続きなどを任せる
任意後見契約判断能力が低下した後生活・療養看護・財産管理に関する事務を代理してもらう
死後事務委任契約亡くなった後葬儀・納骨・行政手続きなどを託す

時間軸で並べると、見守り契約はいちばん手前にあたります。

元気なうちから関係をつくり、状況の変化に気づける状態にしておく。そのうえで、必要になった段階でほかの契約へ移っていく——という流れです。

3つの契約の違いをもう少し詳しく知りたい方は、任意後見・身元保証・死後事務委任の違いの記事でご説明しています。おひとりさまの終活全体の流れについてはおひとりさまの終活もあわせてご覧ください。

⚠ 死亡後も契約を継続させる場合は、その旨を契約に明記しておくことが望ましいです
委任契約は、原則として委任者が亡くなった時点で終了します(民法653条1号)。死後事務委任契約はこの原則の例外にあたるため、「委任者が死亡した場合においても本契約は終了しない」旨を契約書に明記しておくことが望ましいとされています(高齢者等終身サポート事業者ガイドライン/令和6年6月・内閣官房ほか)。

🌱 どれか一つを選ぶものではありません
これらは「どれにするか」を選ぶものではなく、必要に応じて組み合わせるものです。すべてを一度に契約する必要もありません。いまのご状況で必要なものから考えていくのが現実的です。


なぜ組み合わせて考えるのか|支援の切れ目をつくらない

見守り契約だけでは対応できない場面が、いずれ訪れます。

たとえば、入院して身動きが取れなくなったとき。見守り契約の受任者は、状況を確認して連絡することはできても、預貯金を引き出して支払いをすることはできません。ここで必要になるのが財産管理委任契約です。

さらに、認知症などで判断能力が低下したとき。ご本人に代わって契約や手続きを行うには、任意後見契約や成年後見制度が必要になります。

⚠ 任意後見契約は、結んだだけでは始まりません
任意後見契約を結んでいても、判断能力が低下した後、家庭裁判所で任意後見監督人が選任されなければ、契約の効力は生じません。この「切り替えの時機」を誰が見極めるのかが実務上の課題になります。見守り契約を組み合わせておくと、変化に気づきやすくなるという関係にあります。

この切り替えの見極めについては移行型の任意後見契約の記事で詳しくご説明しています。任意後見契約の手続きや費用については任意後見契約の手続きと費用、任意後見と法定後見の違いについては任意後見契約と法定後見の違いをご覧ください。

つまり、見守り契約は「それだけで完結するもの」ではなく、将来の備えへの入口という位置づけになります。


契約前に確認しておきたいこと

見守り契約を結ぶ前に、次の点を確認しておいてください。契約書に書かれているか、書かれていなければ話し合って決めておくべき事項です。

  • 連絡の頻度と方法 — どのくらいの間隔で、電話か訪問か、どちらから連絡するか
  • 訪問の有無と頻度 — 訪問が含まれるか。含まれる場合の間隔
  • 異変に気づいたときの対応 — 誰に、どのように連絡するか
  • 緊急時にどこまで対応するか — 駆けつけるのか、連絡までなのか。夜間や休日はどうか
  • 費用と支払い方 — 定期的な支払いか、訪問ごとの支払いか。交通費など実費の扱い
  • 解約の条件 — どちらからでも解約できるか。予告期間はあるか
  • 記録の残し方 — 連絡や訪問の記録が残るか。家族が確認できるか

⚠ 続けられなくなったときの備えも
受任者が病気や廃業などで支援を続けられなくなった場合に、誰が引き継ぐのかも確認しておきましょう。特に個人に依頼する場合は、この点が抜けやすくなります。

契約内容や事業者の選び方でお困りの場合は、身元保証会社のトラブル事例の記事もご参照ください。契約前のチェックポイントを整理しています。


始め方|まずは何から考えるか

見守り契約を検討するときは、次の順に整理していくと考えやすくなります。

1つめは、いまの支援体制の確認です。

近くに頼れるご親族はいるか。どのくらいの頻度で連絡が取れるか。介護保険サービスを利用しているか。地域包括支援センターとのつながりはあるか。すでにある支援を確認すると、見守り契約で埋めるべき部分が見えてきます。

2つめは、何が不安なのかの整理です。

「倒れたときに気づいてもらえないこと」が不安なのか、「入院したときの手続き」が不安なのか、「亡くなった後のこと」が不安なのか。不安の内容によって、必要な契約は変わります。

3つめは、誰に頼むかです。

ご親族に頼めるのか、専門職や事業者に頼むのか。頼む相手が決まれば、具体的な内容の相談に進めます。

🌱 契約書の形式について
見守り契約は公正証書でなければならない契約ではありませんが、任意後見契約と一緒に準備する場合などには、公正証書で作成することもあります。なお、任意後見契約は公正証書で作成する必要があります。

亡くなった後の手続きについて備えたい場合は、死後事務委任契約の記事もあわせてご覧ください。


まとめ

見守り契約について、押さえておきたい点を整理します。

  • 見守り契約は、定期的な連絡や訪問で暮らしの状況を確認してもらう契約
  • 法律で細かい内容が決まっている契約ではないため、内容は契約で具体的に決める
  • 見守り契約だけでは、財産管理の代理や医療への同意はできない
  • 24時間の監視や、必ず駆けつける契約とは限らない
  • 親族、専門職、民間事業者などに依頼することがあり、内容や費用の考え方は依頼先で変わる
  • 財産管理委任契約・任意後見契約・死後事務委任契約と組み合わせて考える
  • 契約前に、頻度・緊急時の対応・費用・解約条件・引き継ぎを確認しておく

見守り契約は、将来の備えの入口にあたる契約です。すべてを一度に決める必要はありません。いま何が不安なのかを整理するところから始めてみてください。

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