死亡直後の手続き・名義変更

亡くなった親が個人事業主だった|許認可と届出の期限、引き継ぐときに確認すること

掲載:Officeうりずん社会保険労務士・行政書士事務所 代表・資格情報

相談室で50代の男性が行政書士と向かい合い、親の事業の許認可と届出について相談しているイラスト

※この記事は2026年9月時点の情報に基づく一般的な解説です。事業に必要な許認可は業種ごとに別の法律で定められており、相続のときの手続きや期限も業種によって異なります。許認可の承継や廃業の手続については各許認可の窓口や行政書士、税務署への届出については税務署や税理士、従業員の社会保険の手続については社会保険労務士、登記については司法書士、相続人の間で争いがある場合については弁護士にご確認ください。

父が小さな工務店を営んでいました。先月亡くなり、相続人は母と、私と妹の3人です。

取引先からは「工事の途中なので、できれば続けてほしい」と言われています。ただ、私には別の仕事があり、店を続けるのか閉めるのかを決めかねています。

何から手をつければよいのか分からないまま、数週間が過ぎました。そんなとき、「許可の手続きに期限があるのでは」と言われて不安になりました——そうしたご相談をいただきます。

このコラムでは、親が個人事業主だった場合に、まず確認しておきたいことを整理します。


目次

  1. 父の店を、閉めるのか続けるのか
  2. まず確認すること|どんな許認可を持っていたか
  3. 許認可には期限があります
  4. 引き継がない場合にも、届出があります
  5. 税務署関係で、まず確認したい届出
  6. 引き継ぐ場合、税の届出・申請を改めて確認します
  7. 取引先・従業員・契約はどうなるか
  8. 相続人が複数いるとき
  9. ご相談いただけること
父の工務店を続けるか閉めるか決めかねている50代の男性が、許可の承継には期限があることを行政書士から説明を受けている様子を描いたイラスト

父の店を、閉めるのか続けるのか

個人事業主だった方が亡くなったとき、ご遺族が最初に迷うのは「続けるのか、閉めるのか」です。

取引先や従業員のこと、設備や在庫のこと、ご自身の仕事のこと。考えることが多く、すぐには決められません。

ただ、決めかねている間にも進んでしまう期限があります。 特に、事業に必要な許可や登録の手続きには、亡くなってから日数で数える期限が定められていることがあります。

相続手続き全体の流れは親が亡くなったらやるべき10のこと【期限付き手続き完全リスト】で整理しています。ここでは、事業をしていた場合に特有の部分を扱います。


まず確認すること|どんな許認可を持っていたか

事業に必要な許可や登録は、業種ごとに別の法律で定められています。そして、相続のときにどうなるかも、業種によって違います。

⚠ 「許認可は引き継げない」とは限りません
業種によっては、相続によって事業を引き継ぐための手続きが法律で定められています。まず、どのような許可や登録を持っていたかを確認してください。

期限内に認可を受ける形のもの、届出で地位を引き継げるもの、そもそも定めが見当たらないもの。扱いがそれぞれ違うため、どの許認可を持っていたかを確認し、その窓口に問い合わせるところから始まります。

まず営業許可証や届出書の控えを確認してください。確定申告の書類や取引先との契約書も、手がかりになる場合があります。


許認可には期限があります

主な業種の例を挙げます。

業種手続きの形期限
建設業認可の申請亡くなった日から30日以内
一般貨物自動車運送事業認可の申請亡くなった日から60日以内
飲食店営業地位の承継の届出遅滞なく

主な例です。ほかの業種については、それぞれの窓口にご確認ください。

⚠ 期限は、相続人が決まるのを待ってくれません
建設業の許可では、相続による認可を、亡くなってから30日以内に申請することと定められています。誰が引き継ぐかを話し合っているうちに、期限が来てしまうことがあります。

手続きの形も業種によって違います。建設業と一般貨物自動車運送事業は認可を受ける形、飲食店営業は届出をする形です。

なお、認可を受けられるかどうかは、許可の要件を備えているかによって判断されます。国土交通省の資料でも、相続の認可の審査では相続人が許可の要件を備えていることが必要だと案内されています。期限内に申請しても、承継が認められるとは限りません。

飲食店営業についても、川崎市は、届け出た後に地位の承継に該当しなかった例があるとして、事前に管轄の窓口へ相談するよう案内しています。


引き継がない場合にも、届出があります

事業を閉じる場合にも、許認可ごとに廃業の届出が定められていることがあります。

建設業の許可では、相続人が相続の認可を申請しなかったときは、30日以内に廃業の届出をすることとされています。宅地建物取引業では、相続人が、その事実を知った日から30日以内に届け出ることとされています。

起算点が業種によって違う点にご注意ください。

閉じる場合も続ける場合も、まずは許認可の窓口に連絡することが先になります。


税務署関係で、まず確認したい届出

税務署への届出もあります。主なものは次のとおりです。

税届出期限
所得税個人事業の開業・廃業等届出書その事実があった日の属する年分の確定申告期限まで
消費税(インボイス発行事業者でない課税事業者)個人事業者の死亡届出書速やかに

主なものです。事業の状況によって、ほかにも手続が必要になることがあります。

⚠ インボイス登録の有無で、死亡時の届出が変わります
被相続人がインボイス発行事業者だった場合は、通常の死亡届出書ではなく、専用の死亡届出書を確認することになります。書面で提出する場合の送付先も異なります。

青色申告の承認を受けていた場合は、その取りやめの届出もあります。また、従業員に給与を支払っていた場合は、給与の支払事務所についての届出もあります。

なお、亡くなった年の所得については、準確定申告があります。相続税の申告期限より先に来る点も含め、相続税の申告期限は10か月で整理しています。

青色申告など、ほかにも税務上の手続が必要になることがあります。税理士または税務署にご確認ください。


引き継ぐ場合、税の届出・申請を改めて確認します

事業を引き継ぐ場合、被相続人がしていた税務上の届出や申請が、そのまま相続人に引き継がれるとは限りません。

国税庁は、消費税の課税事業者選択届出書や簡易課税制度選択届出書などについて、被相続人が提出した届出の効力は相続人には及ばないと説明しています。これらの制度の適用を受けようとするときは、相続人が改めて手続きを確認する必要があります。

インボイスの登録についても、相続人が登録を受けるには新たに登録申請書を提出する必要があるとされています。

青色申告についても、承認を受けていた被相続人の事業を相続により引き継いだ場合の申請期限が、亡くなった日の時期に応じて別に定められています。

つまり、届出や申請ごとに、必要かどうかと期限を確認することになります。 税理士または税務署にご確認ください。


取引先・従業員・契約はどうなるか

事業に使っていた契約も、相続の対象になることがあります。民法では、相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を引き継ぐとされ、そのうえで、本人だけに属するものは除くという定めが置かれています。

ただし、契約の内容や性質によって扱いが異なります。 店舗の賃貸借、設備のリース、取引先との契約は、それぞれ契約書を確認し、相手方に連絡して扱いを確かめてください。

従業員がいた場合は、労働保険・社会保険の手続があります。扱いは事業をどうするかで変わるため、社会保険労務士、または所轄のハローワークや年金事務所へご確認ください。

屋号については、登記された商号であれば、相続による変更の登記という手続きがあります(登記手続きを専門家に依頼する場合は、司法書士へ相談します)。一方、登記していない屋号を引き続き使えるかについては、法令上の定めを確認できませんでした。

事業用の口座も、名義が亡くなった方であれば相続の手続きの対象になります。詳しくは銀行口座が凍結された時の対処法をご覧ください。


相続人が複数いるとき

許認可の手続きでは、引き継ぐ人を1人に決める必要がある場合があります。

建設業の許可では、相続人が2人以上いるときは、全員の同意で事業を引き継ぐ相続人を選ぶ形が定められています。飲食店営業でも、相続人が2人以上いるときは全員の同意で承継する相続人を選び、その同意書を添えることとされています。一般貨物自動車運送事業では、相続人の協議で引き継ぐ相続人を定める形です。

⚠ 全員の同意が必要になる場面があります
相続人が複数いるとき、誰が事業を引き継ぐかを全員の同意で選び、その同意を示す書類を添えるよう定められている許認可があります。

飲食店営業の届出では、戸籍謄本に代えて法定相続情報一覧図の写しを添えることができるとされています。作り方は法定相続情報一覧図の作り方で解説しています。

遺産分割の話し合い全体については、遺産分割協議書の書き方と雛形をご覧ください。


ご相談いただけること

うりずん相続手続き相談室では、行政書士として、次のお手伝いをしています。

  • 許認可の承継や廃業の届出についてのご相談(業種によって窓口が異なるため、まずお聞かせください)
  • 戸籍の収集による相続人の調査
  • 相続財産の調査
  • 争いのない案件での遺産分割協議書の作成

税務署への届出については、税務署または税理士にご確認ください。従業員の社会保険の手続きは社会保険労務士、登記は司法書士、相続人の間で争いがある場合は弁護士の分野です。

どの専門家に何を相談すればよいかは、相続の相談はどこにする?で整理しています。


まとめ

親が個人事業主だった場合に、まず確認しておきたいことを整理しました。

許認可は、業種ごとに相続のときの扱いが違います。 まず、どのような許可や登録を持っていたかを確認してください。

期限があります。 建設業は30日以内、一般貨物自動車運送事業は60日以内、飲食店営業は遅滞なくとされています。引き継がない場合にも、廃業の届出が定められていることがあります。

税務署関係では、所得税・消費税などの届出を確認します。 インボイス登録の有無によって、死亡時の届出が変わります。

届出や申請ごとに、必要かどうかと期限を確認します。

事業用の契約は、契約内容や性質によって扱いが異なるため、契約書を確認します。 従業員の手続きは社会保険労務士へ。

相続のお手続きでお困りの方へ

うりずん相続手続き相談室では、相続人調査や相続財産の調査からお手伝いしています。戸籍の収集、相続関係の整理、争いのない案件での遺産分割協議書案の作成など、行政書士として対応できる手続きを承ります。相続登記や相続税、相続人の間で争いがある場合には、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携し、必要な専門家へ適切におつなぎします。まずはお話をお聞かせください。どうぞ安心してご相談ください。

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