
※この記事は2026年8月時点の情報に基づく一般的な解説です。再転相続にあたるかどうか、承認や放棄を判断する期間がいつから始まるかは、それぞれの方が亡くなった日、亡くなった方が生前に何をしていたか、ご自身がいつどのような経緯で知ったかによって一人ひとり異なります。実際のお手続きの前に、戸籍については市区町村の窓口、相続放棄の申述など家庭裁判所の手続については家庭裁判所や司法書士・弁護士、期間の起算点が争いになる場合は弁護士、不動産登記については法務局や司法書士、相続税については税務署や税理士、相続人調査や相続関係の整理については行政書士にご確認ください。
祖父が亡くなり、その相続人となった父が、祖父の相続について承認も放棄もしないうちに亡くなった。相続のご相談では、こうした場面があります。
このとき、父の相続人である子は、父の相続だけでなく、祖父の相続についても向き合うことになります。
こうした場面を、実務では再転相続と呼びます。この記事では、再転相続とはどういう状態なのか、相続放棄などを考えるときの3か月の期間がいつから始まるのかを整理します。
目次
- 祖父の相続が終わらないうちに、父が亡くなった
- 再転相続とは|民法916条
- 数次相続とどう違うのか
- 熟慮期間の3か月は、いつから始まるのか
- 最高裁が示した基準
- 二つの相続について
- まず何を確認するか
- どこから専門家へつなぐか
祖父の相続が終わらないうちに、父が亡くなった
まず、どのような場面かを整理します。ここでは、分かりやすく「祖父→父→子」という3世代の例で説明します。
祖父が亡くなり、相続が始まりました。相続人は父です。ところが父は、祖父の相続について承認も放棄もしないまま亡くなってしまいました。父の相続人として、ここでは子がいるものとします。
この場合、子は父の相続人であると同時に、父から承継した立場で、祖父の相続についても承認または放棄を選択する機会を持つことになります。
ここで大切なのは、父が祖父の相続について何もしないうちに亡くなった、という点です。 祖父名義の不動産が残っていた、という状況説明だけでは足りません。父が既に承認していたり放棄していたりすれば、話は変わります。
祖父に借金があったかもしれない。あるいは、父が相続放棄を考えていた途中だった。そうした場合、子はどう判断すればよいのか。ここが問題になります。
再転相続とは|民法916条
民法916条に、次の定めがあります。
相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
「前条第一項の期間」とは、民法915条1項が定める3か月の期間のことです。相続の承認や放棄を判断するための期間で、熟慮期間と呼ばれます。
つまり916条は、相続人が承認も放棄もしないうちに亡くなったときに、その相続人(この記事でいう子)にとっての3か月がいつから始まるのかを定めた規定です。
なお、条文に「再転相続」という言葉は出てきません。 これは実務上の呼び方です。
数次相続とどう違うのか
似た言葉に数次相続があります。混同されやすいので、整理しておきます。
| どういう状態か | |
|---|---|
| 再転相続 | 相続人が、承認も放棄もしないうちに亡くなった |
| 数次相続 | 遺産分割が終わらないうちに、相続人が亡くなった |
再転相続で問題になるのは、承認するか放棄するかの選択です。 数次相続で問題になるのは、遺産をどう分けるかという話です。
もっとも、実際の場面では両方が重なることもあります。祖父の相続について父が承認も放棄もしないまま亡くなり、遺産分割も終わっていない、という状況です。
数次相続については、代襲相続と数次相続の違いで詳しく説明しています。
熟慮期間の3か月は、いつから始まるのか
相続の承認や放棄を判断する期間は、原則として3か月です。民法915条1項が「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」と定めています。
では、再転相続の場合、この3か月はいつから数えるのか。
父が亡くなった日から3か月、と単純に決まるわけではありません。
916条では「知った時」が起算点とされています。父が亡くなった日そのものから当然に3か月を数えるわけではありません。
そして、この「知った時」が何を指すのかについて、最高裁が判断を示しています。次の節で見ていきます。
最高裁が示した基準
再転相続の熟慮期間について、最高裁は令和元年8月9日の判決で判断を示しました。
父が亡くなり、自分が父の相続人になったことを知っただけで、祖父の相続についての熟慮期間が当然に始まるわけではありません。
最高裁は、祖父の相続について承認・放棄を選択できる地位を、父から自分が承継した事実を知った時を基準としました。
理由は、その事実を知らなければ、祖父の相続について承認するか放棄するかを判断できないからです。祖父の相続人としての立場を自分が引き継いでいると知らないまま、3か月が過ぎてしまうのでは、選択の機会が失われてしまいます。
たとえば、父が亡くなったことは知っていたものの、祖父の相続について承認・放棄を選択できる地位まで父から自分が承継していることを、後になって知った場合です。最高裁の基準では、その地位を承継した事実を知った時が、祖父の相続についての熟慮期間の起算点になります。
ただし、どの時点で「知った」といえるかは、事案ごとに判断されます。 「知らせを受ければ必ず新しく3か月がもらえる」という単純なものではありません。実際の判断は、それまでの経緯や資料の内容によって変わります。
二つの相続について
再転相続では、祖父の相続と父の相続という、二つの相続が関わってきます。
先に発生した祖父の相続についても、承認または放棄を検討する機会があります。 父が何もしないまま亡くなったからといって、子が自動的に承認したことになるわけではありません。
ただし、祖父の相続と父の相続について、どのような組合せで承認・放棄できるかは別の法律問題です。 この記事では一般化せず、個別に専門家へご確認ください。
組合せをどうするかを自己判断で決めてしまうと、後から簡単にやり直せない場合があります。 相続放棄は、いったんすると、熟慮期間内であっても原則として撤回できません。一定の場合に取消しが問題になることはありますが、単に考えが変わったという理由で元に戻せるものではありません。判断の前に相談されることをおすすめします。
まず何を確認するか
再転相続かもしれない、と思われたら、次の点を整理してください。
| 確認すること | なぜ必要か |
|---|---|
| 祖父が亡くなった日 | 最初の相続がいつ始まったか |
| 父が亡くなった日 | 二つ目の相続がいつ始まったか |
| 父が祖父の相続について承認・放棄をしていたか、その他どのような手続や行為をしていたか | 再転相続として扱う前提が変わることがある |
| 自分がいつ、どういう経緯で知ったか | 熟慮期間の起算点に関わる |
特に3つ目が重要です。 父が祖父の相続について既に相続放棄をしていた場合や、承認したと評価される行為をしていた場合には、民法916条の再転相続として扱う前提が変わります。遺産分割協議への参加など、どの行為が承認に当たるかは具体的な内容によって判断が必要です。
4つ目も見落とせません。熟慮期間の起算点が問題になった場合には、いつ、何をきっかけに知ったのかが重要になることがあります。届いた書類や通知などは保管し、経緯を整理しておくとよいでしょう。
あわせて、祖父と父それぞれの財産や負債の状況も確認が必要になります。財産の調べ方については相続財産の調査方法で説明しています。
相続放棄そのものの手続きや期限の考え方は、相続放棄の期限をご覧ください。
どこから専門家へつなぐか
再転相続が関係する場面では、内容によって関わる専門家が変わります。
| 内容 | 主な専門家 |
|---|---|
| 戸籍収集・相続人調査・相続関係の整理・争いのない場合の遺産分割協議書の文案 | 行政書士 |
| 不動産の登記・家庭裁判所に提出する書類の作成 | 司法書士 |
| 家庭裁判所の手続を代理して進める場合・相続人間に対立がある場合・熟慮期間の起算点が争いになる場合 | 弁護士 |
| 相続税の申告が必要かどうかの判断・税額の計算 | 税理士 |
相続放棄の申述は、家庭裁判所に対する手続です。 司法書士は家庭裁判所に提出する書類の作成を業務として行うことができますが、この申述手続を本人に代わって代理するものではありません。代理を含めて手続を依頼する場合は弁護士の領域です。
熟慮期間の起算点そのものが争いになる場合は、弁護士への相談が必要です。 債権者から請求を受けている、期間が過ぎていると指摘されている、といった状況では、法的な主張が必要になります。
うりずん相続手続き相談室がお手伝いできるのは、その前段にあたる部分です。戸籍等を収集して相続関係やこれまでの経緯を整理し、家庭裁判所の手続などが必要となる可能性がある場合には、内容に応じて司法書士や弁護士などの専門家へおつなぎします。
どの専門家に相談すればよいか迷われる場合は、相続の相談先の選び方もあわせてご覧ください。
まとめ
再転相続について、押さえておきたい点を整理します。
- 再転相続とは、相続人が承認も放棄もしないうちに亡くなった場合をいう
- 遺産分割が終わらないうちに相続人が亡くなる数次相続とは、別の問題
- 熟慮期間の3か月は、父が亡くなった日そのものから当然に数えるわけではない
- 最高裁は、承認・放棄を選択できる地位を承継した事実を知った時を基準とした
- どの時点で「知った」といえるかは、事案ごとに判断される
- 先に発生した相続についても、承認または放棄を検討する機会がある
- 二つの相続をどのような組合せで扱えるかは別の問題で、個別の確認が必要
再転相続は、熟慮期間の起算点を慎重に確認する必要がある論点です。祖父の相続について父が承認も放棄もしないうちに父が亡くなった、という状況に心当たりがあれば、早めに時系列を整理しておくことをおすすめします。
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うりずん相続手続き相談室では、前の代の相続が残っているご相談について、戸籍の収集による相続人調査、財産調査、相続関係の整理など、行政書士として対応できる手続きを中心にお手伝いしています。相続放棄など家庭裁判所の手続や相続登記、相続税申告、紛争対応が必要な場合には、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携し、必要な専門家へ適切におつなぎします。
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