※この記事は2026年8月時点の情報に基づく一般的な解説です。可否は、物件や貸主の方針、保証会社ごとの審査、ご本人の状況によって変わります。実際のお手続きの前に、お住まいの地域の居住支援協議会の相談窓口、市区町村の住宅担当窓口、または専門家にご確認ください。
親の住み替えを手伝おうとしたとき、あるいはご自身が新しい部屋を探そうとしたときに、「保証人はどなたですか」と聞かれて答えに詰まる。川崎市・横浜市でご相談をお受けしていると、そうしたお話をうかがうことがあります。
賃貸住宅の現場では「身元保証人」という言葉が使われることがありますが、実際の入居審査では、家賃を保証する連帯保証人や保証会社と、事故や病気の際の緊急連絡先は別の役割として確認されます。ひとまとめに「保証人がいない」と考えてしまうと、どこから手をつければよいのかが見えなくなります。
この記事では、身元保証人を頼める方がいない場合に、民間賃貸の入居審査に向けて何を準備しておくとよいかを、行政書士の立場からご説明します。
目次
- 入居審査で実際に問われること
- 「保証人」と「緊急連絡先」は別のもの
- 保証会社にも審査がある|利用できるとは限らない
- 親族以外で緊急連絡先を確保する考え方
- 高齢者住宅財団・自治体の居住支援制度を確認する
- 死亡・退去時の対応も事前に整理しておく
- うりずん相続手続き相談室でできること
入居審査で実際に問われること
入居の申し込みをすると、貸す側は複数のことを別々に確認します。整理すると、おおむね次の4つです。
- 家賃を払い続けられるか … 収入や年金の状況
- 家賃が払われなかったとき誰が負うか … 連帯保証人、または家賃債務保証会社
- 何かあったとき誰に連絡するか … 緊急連絡先
- 賃借人が亡くなった場合に、誰が契約終了、家財整理、明渡しなどに対応するか
大切なのは、これらがひとつずつ別に問われるということです。ひとりの人がすべてを引き受けてくれるとは限りません。「保証人がいない」という言葉をほどくと、実際には2つ目と3つ目が別々に問われていることが多いものです。まずはここを分けて考えるところから始まります。
「保証人」と「緊急連絡先」は別のもの
家賃債務保証会社と契約すれば、連帯保証人の代わりになります。ただし、それで緊急連絡先まで埋まるわけではありません。保証会社と契約したうえで、別に緊急連絡先を聞かれるというのが、実際によくある流れです。これは制度の運用にも表れています。
たとえば川崎市には、民間賃貸住宅への入居を希望する高齢者等を対象に、市が指定する保証会社による家賃債務保証と、見守りなどの居住支援を組み合わせる制度があります。この制度の案内では、利用にあたって原則として親族などの緊急時の連絡人を付けることとされています。
一方、全国を対象に家賃債務保証を行っている高齢者住宅財団では、緊急連絡先について友人・知人などでもよいと案内されています。ただし、緊急連絡先が見つからない場合には利用できないことがあるとも書かれています。
つまり、緊急連絡先そのものはどちらでも求められています。違うのは、緊急連絡先として認められる範囲です。
ここに気づくと打つ手が変わります。「親族がいないから無理だ」と考えるのではなく、どこまでの範囲なら緊急連絡先として認められるのかを確認する。そこから始めるほうが道が開けます。
保証会社にも審査がある|利用できるとは限らない
保証会社を使えば必ず入居できるというものではありません。審査基準は保証会社ごとに異なり、公表されていない場合もあります。ここでは、内容を公開している高齢者住宅財団の例をご紹介します。同財団では、緊急連絡先の有無、家賃不払いによる退去歴、過去の銀行やクレジットカード等の取引状況などを確認事項として挙げています。
また同財団では、月額家賃(共益費・管理費を含む)が月収の50パーセント以下であることを原則的な条件としつつ、親族等からの援助や預貯金額によっては利用できる場合があるとも案内されています。これは同財団についての説明であり、他の保証会社が同じ基準とは限りません。
もうひとつ誤解されやすい点があります。保証会社が立て替えても、支払いが免除されるわけではありません。家主に立替払いをしたあと、入居者はその金額を保証会社に弁済します。保証は「肩代わり」ではなく「立て替え」だとお考えください。
親族以外で緊急連絡先を確保する考え方
では、親族に頼めない場合はどうするか。2025年(令和7年)10月1日に施行された改正法により、認定家賃債務保証業者という制度が始まっています。国が一定の要件を満たす事業者を認定するもので、認定基準には、緊急連絡先を親族などの個人に限定しないことや、別途の保証人を求めないことなどが設けられています。
ここは正確に受け取っていただきたいところです。この制度は、緊急連絡先そのものを不要にするものではありません。「個人に限定しない」ことと「緊急連絡先を求めない」ことは別の話です。
実際、高齢者住宅財団では、緊急連絡先として親族以外の友人・知人、ケースワーカー、ケアマネジャー、一定の信頼性が確認できる法人でもよいと案内されています。介護サービスを利用していれば、ケアマネジャーが選択肢に入ります。
なお、都道府県が指定する居住支援法人が関わる形もあります。ただし居住支援法人が実際に行っている業務は法人ごとに異なるため、どの法人でも緊急連絡先を引き受けてくれるわけではありません。個別に確認が必要です。
親族がいなくても直ちに不可能とは限りません。ただし、本人の承諾を得た、実際に連絡が取れる窓口は準備する必要があります。名前を借りるだけでは足りず、緊急時に本当に連絡がつくかどうかが問われています。
高齢者住宅財団・自治体の居住支援制度を確認する
連帯保証人を立てられない場合の仕組みを2つご紹介します。入り口が異なるので分けてご説明します。
高齢者住宅財団の家賃債務保証
全国を対象とした制度です。財団が家賃債務等を保証し、連帯保証人の役割を担います。同財団は登録家賃債務保証業者であり、認定家賃債務保証業者でもあります。年齢に上限がなく、高齢であることを理由に引受けを断ることはないとされ、他の保証会社に断られた方でも利用できる場合があると案内されています。
一方で注意が必要な点があります。この制度は、家主または管理者と財団があらかじめ基本約定を結んでいる物件でのみ利用できます。入居者が単独で申し込んで完結する仕組みではありません。気になる物件があれば、管理会社に「高齢者住宅財団の保証は使えますか」と尋ねるところから始まります。保証の範囲や保証料は改定されることがあるため、財団の公式サイトで最新の内容をご確認ください。
川崎市の居住支援制度
川崎市には、民間賃貸住宅への入居を希望する高齢者等を対象に、市が指定する保証会社による家賃債務保証と、見守りなどの居住支援を組み合わせる制度があります。家賃を補助する制度や物件をあっせんする制度ではありません。対象は市内にお住まいの一定の年齢以上の方で、家賃等の支払いができる見込みがあり、自立した生活ができることなどが条件とされています。連帯保証人がいる場合は使う必要はありません。
ただし、対象者の条件や緊急連絡人の取扱い、保証料等は変更される可能性があります。利用前に川崎市または川崎市住宅供給公社の窓口へご確認ください。
お住まいの地域で探す場合
川崎市以外でも、自治体ごとに似た仕組みがあることがあります。お住まいの自治体の居住支援協議会、住宅担当の窓口、または地域包括支援センターにご相談ください。住まいの相談と福祉の相談は隣り合っていることが多く、あわせて相談したほうが早く進むこともあります。
死亡・退去時の対応も事前に整理しておく
入居審査は「入るとき」の話ですが、貸す側が気にしているのは「出るとき」までです。単身の高齢者に慎重になる背景には、亡くなったあとの手続きや部屋の片付けへの不安があります。
死後事務委任契約などを用意すれば入居審査に必ず通る、というものではありません。ただし、亡くなったあとの連絡、家財の整理、契約の終了や明渡しについて、誰がどのように対応するかを整理しておくことは、貸す側や管理会社への説明材料になり得ます。
ひとつ正確にお伝えします。賃借人が亡くなっても、賃貸借契約が当然に終わるわけではありません。相続人がいるかどうか、契約の内容、死後の事務を任された方に与えられた権限によって対応は変わります。国土交通省と法務省が策定したモデル契約条項を使う方法もあります。
また、死後事務委任契約を結べば受任者が何でもできるようになるわけでもありません。賃貸住宅の明渡しに関する事務をどこまで盛り込めるかは、事前に検討しておく必要があります。
孤独死後の残置物を誰が片付けるのか、死後事務委任契約で賃貸住宅の明け渡しまで頼めるのかについては、それぞれ別の記事で詳しくご説明します。
うりずん相続手続き相談室でできること
はじめにお伝えしておきます。当相談室は、家賃債務保証会社の代わりに家賃を保証するものではありません。
家賃の保証は保証会社が担う領域です。当相談室がお手伝いできるのは、その周りにある契約と段取りの部分です。
- 死後事務委任契約の内容の整理と、契約書の原案作成
- 任意後見契約の原案作成、必要資料の整理、公証人との事前調整(任意後見契約は公正証書で締結する必要があります)
- 緊急連絡先をどう確保するかの整理
- 亡くなったあとに必要となる手続きの洗い出しと、費用の見通しの整理
一方で、物件の紹介、賃貸借の代理または媒介、入居審査の代行、契約条件の交渉は、当室の業務範囲外です。特に、賃貸借の代理・媒介を業として行うには、宅地建物取引業法上の免許が必要です。当室がお手伝いするのは、ご事情と必要な支援を整理し、ご本人の意思を前提に、関係先との連絡の準備を整えるところまでです。
相続のお手続きでお困りの方へ
また、不動産の相続登記、相続税の申告、明渡しや原状回復をめぐる紛争への対応については、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携してお手伝いします。
川崎・横浜エリアを中心に、初回のご相談は60分無料・土日祝もご予約可能・秘密厳守・お問い合わせには翌営業日までにご返信しています。お電話・LINE・お問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。
川崎市・横浜市を中心に、おひとりで暮らす方やそのご家族からのご相談をお受けしています。何から手をつければよいか分からない、というところからで構いません。
まとめ
「身元保証人がいない」という一言の中には、性質の違う3つの課題が入っています。
家賃保証は連帯保証人か家賃債務保証会社が担います。ただし審査があり、立て替えられた分は後から請求されます。
緊急連絡先は保証とは別に求められます。制度によっては親族に限らず、友人・知人やケアマネジャーなどでも認められることがあります。ただし、本人の承諾を得た、実際に連絡が取れる相手である必要があります。
死亡・退去時の対応は、生前に整理しておくことで説明材料になり得ます。ただし、契約を用意すれば当然にすべてが解決するわけではありません。
この3つを分けて、ひとつずつ埋めていく。全部をいっぺんに解決しようとせず、まずはご自身の状況でどこが空いているのかを確かめるところから始めてみてください。どこから手をつけてよいか分からないときは、一度ご相談ください。