※この記事は2026年8月時点の情報に基づく一般的な解説です。嫡出でない子が相続人に含まれる相続について、どの割合で扱われるか、過去の手続きがどこまで影響するかは、亡くなった日、それまでに行われた遺産分割や合意の有無、その後の相続の重なり方によって一人ひとり異なります。実際のお手続きの前に、戸籍については市区町村の窓口、不動産登記については法務局や司法書士、過去の遺産分割や合意の効力が問題になる場合は弁護士、相続税については税務署や税理士、相続人調査や相続関係の整理については行政書士にご確認ください。
古い相続の手続きを進めていて、相続人の中に婚姻外で生まれた子がいることが分かった。あるいは、以前に聞いた相続分の話と、いま調べた内容が食い違っている。相続のご相談では、こうした場面があります。
嫡出でない子の相続分は、平成25年に大きく変わりました。それ以前は、嫡出である子の2分の1とされていた時期があります。
この記事では、いつ何が変わったのか、過去に開始した相続にはどう影響するのかを整理します。なお本記事では、法律の条文で使われている「嫡出でない子」という言い方に合わせています。非嫡出子と呼ばれることもありますが、こちらは通称です。
目次
- かつては相続分に差がありました
- 平成25年9月4日の最高裁決定
- 法律はいつ変わったのか
- それより前の相続はどうなるのか|過去の相続への影響
- 「確定的なものとなった法律関係」とは
- 平成13年7月より前に開始した相続について
- 半血の兄弟姉妹の相続分は、いまも2分の1です
- どこから専門家へつなぐか
かつては相続分に差がありました
改正される前の民法900条4号には、ただし書がありました。そこには、嫡出でない子の相続分は嫡出である子の相続分の2分の1とする、という内容が定められていました。
つまり、同じ被相続人の子であっても、婚姻関係にある父母の間に生まれたかどうかで、法定相続分に差が設けられていたことになります。
たとえば、被相続人に子が2人いて、一方が嫡出である子、もう一方が嫡出でない子だった場合。現在であれば2人とも同じ割合ですが、この規定があった時期には、割合が異なる扱いになっていました。
この規定は、平成25年に削除されています。
平成25年9月4日の最高裁決定
規定が削除されるきっかけになったのが、平成25年9月4日の最高裁判所大法廷の決定です。
この決定で、最高裁は民法900条4号ただし書のうち、嫡出でない子の相続分を2分の1とする部分について、遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断しました。憲法14条1項は、法の下の平等を定めた規定です。
ここで押さえておきたいのは、最高裁が示したのは「遅くとも平成13年7月当時において」という表現であるということです。決定文では、それより細かい日付までは示されていません。
なお、法務省は平成13年7月1日以後に開始した相続について取り扱いを整理していますが、これは実務上の区切りとして示されているものです。最高裁がその日付を判断したわけではない、という点は分けて理解しておく必要があります。
法律はいつ変わったのか
この決定を受けて、民法が改正されました。
平成25年法律第94号です。平成25年12月11日に公布され、同じ日に施行されています。この改正で、900条4号ただし書のうち、嫡出でない子の相続分に関する部分が削除されました。
適用の範囲は、改正法の附則で定められています。改正後の900条が適用されるのは、平成25年9月5日以後に開始した相続です。
| 内容 | |
|---|---|
| 最高裁の決定 | 平成25年9月4日 |
| 改正法の適用が始まる相続 | 平成25年9月5日以後に開始したもの |
| 改正法の公布・施行 | 平成25年12月11日 |
決定の翌日から適用が始まる形になっており、公布日とは日付が離れています。古い資料を読むときは、どの日付を指しているのかを確認する必要があります。
それより前の相続はどうなるのか|過去の相続への影響
では、平成25年9月4日より前に開始した相続はどうなるのか。ここが、この論点でもっとも誤解されやすいところです。
「平成25年9月5日より前の相続には一切影響しない」というのは、正確ではありません。
最高裁の決定は、憲法に違反する法律は原則として無効であり、その効果は原則として過去にさかのぼるという考え方を前提にしています。法律上は遡及効の問題として整理される部分です。
そのうえで最高裁は、法的安定性を理由に、影響が及ぶ範囲を限定しました。既に裁判や合意によって確定的なものとなった法律関係には、この決定の影響は及ばないという趣旨です。
最高裁は、この決定より前に、裁判や遺産分割協議その他の合意などによってすでに確定的なものとなった法律関係については、この違憲判断の影響を及ぼさないという考え方を示しました。一方、まだ確定的な法律関係が形成されていない場合には、改正前の差をそのまま前提にできないことがあります。
過去の相続だから自動的に2分の1のまま、というわけではありません。 遺産分割がまだ終わっていない場合などは、嫡出子と嫡出でない子を同等の相続分として扱うことになる可能性があります。ただし、過去にどのような合意や裁判手続があったかによって扱いが変わるため、個別に確認が必要です。
古い相続が未処理のまま残っている場合、この点が結論を左右します。
「確定的なものとなった法律関係」とは
では、どこまでが「確定的なものとなった法律関係」にあたるのか。
多数意見は、「確定的なものとなった法律関係」に影響を及ぼさないという考え方を示しました。一方、その具体的な範囲については、金築誠志裁判官の補足意見でも、今後生じ得る紛争を網羅的に判示したものではないという趣旨が述べられています。
法務省も、この点は解釈に委ねられ、最終的には裁判所の判断によるとしています。
つまり、個別の事情によって結論が変わりうる領域です。たとえば、遺産分割協議書は作成したがまだ実行していない、財産の一部だけを分けた、後になって協議の効力を争っている、といった場合。こうしたケースがどちらに当たるかを、一般論として決めることはできません。
古い相続で嫡出でない子が相続人に含まれている場合、過去にどのような手続きや合意があったのかを整理したうえで、専門家に確認することになります。
平成13年7月より前に開始した相続について
平成13年7月より前に開始した相続については、注意が必要です。
最高裁は、違憲状態がいつから生じていたのかについて、平成13年7月より前の具体的な時点までは示していません。 決定は、それより前に相続が開始した事件について、当時の規定を合憲とした過去の判断を変更するものではない、という趣旨を明示しています。
そのため、平成13年7月より前の相続について、この決定だけを根拠に現在と同じ相続分になる、と考えることはできません。逆に、改正前の2分の1のままだと断定することもできません。
この時期の相続が問題になる場合は、個別の経過やその後の法律関係を含めて、専門家に確認する必要があります。
半血の兄弟姉妹の相続分は、いまも2分の1です
ここで、混同されやすい点をひとつ整理しておきます。
削除されたのは、民法900条4号ただし書のうち、嫡出でない子の相続分に関する部分だけです。同じただし書には、もうひとつの定めがあり、そちらは現在も残っています。
父母の一方だけが同じ兄弟姉妹(半血の兄弟姉妹)の相続分は、父母の双方が同じ兄弟姉妹の2分の1とされています。この規定は削除されていません。
たとえば、被相続人に兄弟姉妹が2人いて、一方は父母とも同じ、もう一方は父だけが同じという場合。兄弟姉妹が相続人になる場面では、この2人の相続分に差が生じます。
「900条4号ただし書の2分の1という規定はなくなった」と理解してしまうと、この点で誤ります。なくなったのは嫡出でない子に関する部分だけです。
どこから専門家へつなぐか
嫡出でない子が相続人に含まれる相続は、戸籍を集めて相続人を確定するところから始まります。そこから先は、内容によって関わる専門家が変わります。
| 内容 | 主な専門家 |
|---|---|
| 戸籍収集・相続人調査・相続関係の整理・争いのない場合の遺産分割協議書の文案 | 行政書士 |
| 不動産の登記・家庭裁判所に提出する書類の作成 | 司法書士 |
| 相続人間の対立・協議が調わない場合・過去の合意の効力が争いになる場合 | 弁護士 |
| 相続税の申告が必要かどうかの判断・税額の計算 | 税理士 |
この論点で特に注意が必要なのは、過去の手続きの効力が問題になる場合です。以前に遺産分割協議をした、調停が成立した、といった経緯があるとき、それが確定的な法律関係にあたるかどうかは法的な判断になります。この段階に入ったら、弁護士への相談が必要です。
どの専門家に相談すればよいか迷われる場合は、相続の相談先の選び方もあわせてご覧ください。
まとめ
嫡出でない子の相続分について、押さえておきたい点を整理します。
- 改正前は、嫡出でない子の相続分が嫡出である子の2分の1とされていた
- 平成25年9月4日の最高裁決定で、この部分は遅くとも平成13年7月当時において憲法違反だったと判断された
- 民法は平成25年12月11日に改正され、改正後の規定は平成25年9月5日以後に開始した相続に適用される
- それより前の相続についても、確定的な法律関係が形成されていなければ影響が及ぶことがある
- 「確定的なものとなった法律関係」の範囲は、個別の事情によって判断される
- 平成13年7月より前のどの時点から違憲状態であったかについて、最高裁は具体的な時点を示していない
- 半血の兄弟姉妹の2分の1という規定は、現在も残っている
古い相続では、どの時期にどの規定が適用されるかで結論が変わります。相続人の中に嫡出でない子が含まれている場合は、亡くなった日と、その後の手続きの経緯を整理するところから始めることになります。
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