「父が亡くなったけれど、誰がどれだけ相続するのが正しいのだろう」「自分にもしものことがあったら、財産は誰にいくのだろう」——相続の場面で、ほぼ必ず最初にぶつかるのがこの疑問です。

民法は、「誰が相続人になるのか(法定相続人)」と「それぞれがどれだけの割合を受け取るのか(法定相続分)」をはっきり定めています。ルール自体は意外なほどシンプルで、押さえるべきは「配偶者は常に相続人」「血族には順位がある」「割合は基本3パターン」の3点だけです。

この記事では、相続手続きの現場に日々立ち会っている行政書士の視点から、法定相続人の範囲と順位、法定相続分の割合を、早見表と具体例で整理します。孫が相続する「代襲相続」や、相続放棄があった場合に相続人が入れ替わるしくみなど、実務で迷いやすいポイントも取り上げますので、ご自身のご家族の構成に当てはめながら読み進めてみてください。


目次

  1. 結論:法定相続人は「配偶者+順位がいちばん高い血族」、割合は基本3パターン
  2. 法定相続人の基本ルール:配偶者は常に相続人、血族には順位がある
  3. 【早見表】家族構成別・法定相続分の一覧
  4. 第1順位「子」:孫への代襲相続・養子・認知された子・おなかの中の子
  5. 第2順位「父母・祖父母」:子がいないときの直系尊属の相続
  6. 第3順位「兄弟姉妹」:父母の一方だけ同じ兄弟は2分の1、代襲は甥姪まで
  7. こんなときは?:相続放棄・欠格・廃除・行方不明・内縁の配偶者
  8. 法定相続分どおりに分けなくてもいい:遺産分割協議・遺言との関係
  9. よくあるご質問(FAQ)
法定相続人と法定相続分を8コマで解説。①結論:配偶者+最上位の血族・割合は基本3パターン ②基本ルール:配偶者は常に相続人、血族には順位 ③早見表:家族構成別の法定相続分 ④第1順位の子:代襲相続・養子・認知された子 ⑤第2順位の父母・祖父母 ⑥第3順位の兄弟姉妹:半血は2分の1・代襲は甥姪まで ⑦相続放棄・欠格・行方不明・内縁のケース ⑧協議や遺言で割合は変えられる

1. 結論:法定相続人は「配偶者+順位がいちばん高い血族」、割合は基本3パターン

最初に、この記事の結論をまとめます。

  • 配偶者(夫・妻)は、常に相続人になります。
  • 血族(血のつながった親族)には順位があり、第1順位=子、第2順位=父母など直系尊属、第3順位=兄弟姉妹の順で、いちばん上の順位の人だけが配偶者とともに相続人になります。
  • 法定相続分は基本3パターンです。配偶者と子なら「2分の1ずつ」、配偶者と父母なら「3分の2と3分の1」、配偶者と兄弟姉妹なら「4分の3と4分の1」。同じ順位に複数人いる場合は、その取り分を人数で等分します。
  • そして大切なのは、法定相続分は「必ずそのとおりに分けなければならない」ものではないということです。遺言があれば原則として遺言が優先され、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)がまとまれば、割合は自由に変えられます(詳しくは8章)。

この4点が頭に入っていれば、大枠はつかめています。ここから順番に、根拠と例外を見ていきましょう。


2. 法定相続人の基本ルール:配偶者は常に相続人、血族には順位がある

配偶者は、どんな家族構成でも必ず相続人になります。ここでいう配偶者は、婚姻届を出している法律上の夫・妻のことです。長年連れ添っていても、内縁(事実婚)のパートナーには相続権がありません(7章で対策に触れます)。また、離婚した元配偶者も相続人ではありません。ただし、元配偶者との間に生まれた子は、親が離婚しても変わらず第1順位の相続人です。

配偶者以外の血族には、次の順位があります。

順位相続人になる人亡くなっている場合
第1順位孫・ひ孫が代襲相続
第2順位父母(直系尊属)父母が両方いなければ祖父母
第3順位兄弟姉妹甥・姪が代襲相続(一代限り)

🌱 大切なポイント
ポイントは、上の順位の人が1人でもいる限り、下の順位の人は相続人にならないことです。たとえば子が1人でもいれば、亡くなった方の父母や兄弟姉妹は相続人になりません。子も孫もいない場合に初めて父母が、父母も祖父母もいない場合に初めて兄弟姉妹が登場します。

なお、「誰が相続人か」は思い込みで決めず、戸籍をたどって確定させるのが鉄則です。戸籍を集めてみたら認知された子がいた、前の結婚のときの子がいた、というケースは実務では珍しくありません。戸籍の集め方は相続人調査|戸籍を集める3つのルートで詳しく解説しています。


3. 【早見表】家族構成別・法定相続分の一覧

家族構成ごとの法定相続人と法定相続分を、一覧表にまとめました。

家族構成法定相続人法定相続分
配偶者と子がいる配偶者、子配偶者2分の1、子2分の1(人数で等分)
配偶者はいるが子がいない(父母が存命)配偶者、父母配偶者3分の2、父母3分の1(人数で等分)
配偶者はいるが子も父母もいない配偶者、兄弟姉妹配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1(人数で等分)
配偶者のみ配偶者すべて
子のみ(配偶者が先に死亡など)すべて(人数で等分)
父母のみ父母すべて(人数で等分)
兄弟姉妹のみ兄弟姉妹すべて(人数で等分)

イメージしやすいように、遺産が3,000万円だった場合の具体例を挙げます。

  • 妻と子2人が相続人:妻1,500万円、子はそれぞれ750万円
  • 妻と亡くなった方の父母が相続人:妻2,000万円、父と母はそれぞれ500万円
  • 妻と亡くなった方の弟・妹が相続人:妻2,250万円、弟と妹はそれぞれ375万円

同じ順位の中では人数で等分(頭割り)します。子が3人なら、子の取り分2分の1を3人で分けて、1人あたり6分の1です。長男だから多い、同居していたから多い、といった差は、法定相続分にはありません(FAQで触れます)。


4. 第1順位「子」:孫への代襲相続・養子・認知された子・おなかの中の子

第1順位の「子」の範囲は、思っているより広いことがあります。次の人はすべて、実子と同じ割合で相続します。

  • 養子:普通養子・特別養子とも、実子とまったく同じ相続分です。民法上、養子の数に制限はありません(相続税の計算で「法定相続人の数」に算入できる養子の数には税法上の上限がありますが、これは税金の話で、相続分そのものとは別の論点です)。
  • 認知された子:婚姻外で生まれた子も、認知されていれば相続人です。かつては相続分が嫡出子の2分の1とされていましたが、平成25年の民法改正により、現在はまったく同等です。
  • 前の配偶者との間の子:親同士が離婚していても、子と親の関係は切れません。今の家族と同じ割合で相続します。
  • おなかの中の子(胎児):相続については「すでに生まれたもの」とみなされ、無事に生まれれば相続人になります。

そして、子が親より先に亡くなっている場合は、その子(亡くなった方から見て孫)が代わりに相続します。これを代襲相続といいます。孫も亡くなっていればひ孫へと、第1順位の代襲は下の世代に続いていきます。代襲相続人の取り分は、本来相続するはずだった人の相続分をそのまま引き継ぎます(孫が2人なら、親の取り分を2人で等分)。


5. 第2順位「父母・祖父母」:子がいないときの直系尊属の相続

子も孫もいない場合に、初めて第2順位の直系尊属(父母・祖父母など)が相続人になります。

  • 父母のどちらかが存命なら、祖父母は相続人になりません。親等の近い人が優先されます。
  • 養子縁組をしている場合、養父母も実父母と同じく相続人です(普通養子の場合。特別養子は実父母との親族関係が終了しているため、実父母は相続人になりません)。
  • 配偶者と父母が相続人の場合、割合は配偶者3分の2・父母3分の1。父母とも存命なら、父と母はそれぞれ6分の1ずつです。

実務的な注意点として、第2順位の相続は相続人が高齢になりがちです。遺産分割協議には相続人全員の参加と署名・実印が必要なので、親御さんが施設に入っている、判断能力に不安がある、といった事情があると手続きのハードルが上がります。お子さんのいないご夫婦は、後の章で触れる遺言の活用を早めに検討しておくと安心です。


6. 第3順位「兄弟姉妹」:父母の一方だけ同じ兄弟は2分の1、代襲は甥姪まで

子も直系尊属もいない場合に、第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。ここには独特のルールが2つあります。

1つ目は「半血」の兄弟姉妹の扱いです。父母の両方が同じ兄弟姉妹(全血)に対して、父母の一方だけが同じ兄弟姉妹(半血。異母兄弟・異父兄弟)の相続分は、全血の2分の1になります。たとえば、相続人が「配偶者+全血の兄+半血の弟」の場合、兄弟姉妹の取り分4分の1を2対1で分けるので、兄が6分の1、弟が12分の1です。

2つ目は、代襲相続が「甥・姪まで」の一代限りであることです。兄弟姉妹が先に亡くなっていれば甥・姪が代襲しますが、甥・姪も亡くなっている場合、その子(甥姪の子)には引き継がれません。第1順位の子の系統がひ孫まで続いていくのとは異なる点です。

また、兄弟姉妹には遺留分(最低限の取り分の保障)がありません。そのため、お子さんのいないご夫婦で「すべてを配偶者に残したい」場合は、遺言を書いておけばそのとおりに実現できます。遺言の確認・取り扱いについては遺言書の確認方法もご覧ください。

なお、兄弟姉妹が相続人になるケースは、亡くなった方のご両親それぞれの出生までさかのぼる戸籍が必要になるなど、戸籍収集の量が一気に増えます。相続手続きの中でも特に時間がかかるパターンだと知っておいてください。


7. こんなときは?:相続放棄・欠格・廃除・行方不明・内縁の配偶者

基本の順位とあわせて、実務でよくご相談を受ける「イレギュラー」を整理します。

⚠ 同順位の全員が放棄したとき、相続権は次の順位へ移ります
放棄した人は「初めから相続人でなかった」ものとして扱われます。重要なのは2点です。①放棄では代襲相続が起きません(放棄した人の子が代わりに相続することはない)。②同じ順位の全員が放棄すると、相続権は次の順位へ移ります。借金が多い相続で子ども全員が放棄した結果、亡くなった方の父母へ、さらに兄弟姉妹へと相続権が玉突きで移っていくことがあるため、放棄をするときは親族への連絡まで含めて考える必要があります。期限や手続きは相続放棄の期限と手続きで解説しています。

相続欠格・廃除:相続人が遺言書を偽造したなどの重大な事情がある場合(欠格)や、被相続人が家庭裁判所の手続きで相続権を奪った場合(廃除)、その人は相続できません。ただし放棄と違い、欠格・廃除では代襲相続が起きます(その人の子が代わりに相続します)。

相続人に行方不明の人がいる場合:遺産分割協議は相続人全員の参加がなければ無効です。連絡が取れない相続人を外して進めることはできず、家庭裁判所で不在者財産管理人を選んでもらう、長期間生死不明なら失踪宣告を申し立てる、といった対応が必要になります。

内縁の配偶者:何十年連れ添っていても、婚姻届を出していなければ相続権はありません。パートナーに財産を残したい場合は、生前の遺言が中心的な備えになります(生命保険の受取人指定や生前贈与、死後事務委任契約などを組み合わせることもあります)。

相続人が誰もいない場合:特別縁故者(生計を同じくしていた人など)への分与の制度はありますが、最終的には遺産は国庫に帰属します。


8. 法定相続分どおりに分けなくてもいい:遺産分割協議・遺言との関係

ここまで「法定」相続分を説明してきましたが、冒頭で触れたとおり、実際の分け方は法定相続分に縛られません。優先順位は次のとおりです。

  1. 遺言があれば、原則として遺言の内容が優先します(遺留分の制約はあります)。
  2. 遺言がなければ、相続人全員の遺産分割協議で自由に決められます。「自宅は同居していた長女に、預金は長男に」のように、法定相続分と違う分け方をしてもまったく問題ありません。合意内容は遺産分割協議書にまとめます。
  3. 協議がまとまらなければ家庭裁判所の調停・審判となり、ここでは法定相続分が基準になります。

つまり法定相続分は、「全員が納得できる分け方を探すときの出発点・ものさし」と捉えるのが実態に近い理解です。

一方で、法定相続分が手続きの基準としてそのまま使われる場面もあります。

  • 相続税の計算:相続税の総額は、課税対象の遺産をいったん法定相続分で取得したものと仮定して計算するしくみになっています。
  • 凍結口座の払戻し制度:遺産分割前でも、相続開始時の口座残高×3分の1×法定相続分(1金融機関あたり150万円が上限)までは単独で払い戻せる制度があり、ここで法定相続分が使われます。詳しくは銀行口座が凍結された時の対処法をご覧ください。
  • 不動産の相続登記:遺産分割がまとまる前に、法定相続分どおりの共有名義で登記することもできます。ただし共有名義は後の売却や管理で支障が出やすいため、安易な利用は禁物です(2024年からの義務化への対応は相続登記の義務化を参照)。

このように、法定相続分は「分け方の自由」と「手続き上の基準」という2つの顔を持っています。だからこそ、まず正確な相続人と割合を押さえることが、すべての相続手続きの土台になるのです。


9. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 長男なので、ほかのきょうだいより多く相続できますか?

A. いいえ。現在の民法では、子の相続分は全員同じです。長男がすべてを継ぐ「家督相続」は昭和22年に廃止されています。生まれた順番や同居の有無で法定相続分が変わることはありません。

Q2. 親の介護をずっとしてきました。その分多くもらえませんか?

A. 法定相続分そのものは変わりませんが、無償で療養看護に努めて財産の維持に貢献した場合の「寄与分」、相続人でない親族(たとえば長男の妻)が貢献した場合の「特別寄与料」という制度があります。いずれも自動的に増えるものではなく、協議や家庭裁判所の手続きで主張していくものです。介護の記録を残しておくことが大切です。なお、2023年4月に施行された民法改正により、相続開始から10年を過ぎると、原則として寄与分や特別受益(生前贈与の持ち戻し)を主張できなくなりました。貢献を反映してほしい場合ほど、早めに遺産分割の話し合いを始めることが大切です。

Q3. 相続放棄をしたら、私の子(亡くなった親から見て孫)が代わりに相続しますか?

A. しません。相続放棄では代襲相続は起きません。あなたの系統はその相続から完全に外れ、同順位の他の相続人、いなければ次順位の人に相続権が移ります。

Q4. 再婚相手の連れ子は相続人になりますか?

A. 養子縁組をしていなければ、相続人にはなりません。長年一緒に暮らしていても同じです。連れ子に財産を残したい場合は、養子縁組をするか、遺言を書いておく必要があります。

Q5. 養子に行った子は、実の親の相続人になれますか?

A. 普通養子であれば、実親と養親の両方の相続人になります。一方、特別養子縁組をした子は実親との親族関係が法律上終了しているため、実親の相続人にはなりません。


まとめ

最後に、この記事の要点を整理します。

  • 配偶者は常に相続人。血族は「子→父母→兄弟姉妹」の順位で、いちばん上の順位の人だけが相続人になる。
  • 割合は基本3パターン。配偶者と子は2分の1ずつ、配偶者と父母は3分の2対3分の1、配偶者と兄弟姉妹は4分の3対4分の1。同順位の中は人数で等分。
  • 子の代襲相続は孫・ひ孫へ続くが、兄弟姉妹の代襲は甥姪まで相続放棄では代襲は起きない
  • 「誰が相続人か」は戸籍で確定させる。思わぬ相続人が見つかることもある。
  • 法定相続分は絶対ではなく、遺言や全員の遺産分割協議で自由に変えられる。一方で相続税の計算や預金の払戻しでは「基準」として使われる。

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ここまでお読みくださり、ありがとうございました。「誰が相続人で、どれだけの割合か」は、すべての相続手続きの出発点です。けれども実際の現場では、戸籍をたどってみたら思わぬ相続人がいた、兄弟姉妹の相続で戸籍集めが何十通にもおよんだ、というように、表のとおりにすんなり進まないことも少なくありません。「うちの場合はどうなるのだろう」と少しでも迷われたら、どうかお一人で抱え込まれないでください。

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