※この記事は2026年7月時点の情報に基づいています。相続登記の義務化は2024年4月1日から、住所・氏名変更登記の義務化は2026年4月1日から始まっています。相続登記の申請そのものは司法書士の専門業務であり、個別の登記申請は司法書士またはご本人が行う必要があります。本記事では、相続人調査・財産整理・遺産分割協議書作成など、登記の前提となる準備を中心に解説します。最新の情報は法務省の公式発表をご確認ください。

「実家の名義が、まだ亡くなった親のままになっている」——。相続のご相談で、とても多いお話です。これまで、不動産の名義変更(相続登記)はいつまでにやらなければならない、という決まりがありませんでした。ところが2024年4月に相続登記が義務化され、登記を放置し続けることができなくなりました。

特に注意したいのが、義務化より前に起きた相続です。ずっと登記をしていない実家や土地がある場合、原則として2027年3月31日という期限が迫っています。

この記事では、相続登記の義務化の期限・過料(罰則)・進め方を、川崎の行政書士がやさしく整理します。登記そのものは司法書士のお仕事ですが、その手前でつまずく方がとても多いのも事実です。「誰が相続人か」「何を相続するか」「どう分けるか」——この準備の部分を中心に、順を追ってお話しします。


目次

  1. 相続登記の義務化とは|なぜ始まったのか
  2. いつまでにやる? 期限と「起算点」
  3. 放置するとどうなる? 過料と「正当な理由」
  4. 相続登記までの全体の流れ
  5. まとまらないときの「相続人申告登記」
  6. 2026年に始まった住所・氏名変更登記も確認
  7. よくある誤解Q&A
  8. うりずんに相談できること
実家の名義が親のままだと気づいた相続人が、戸籍収集から相続登記の準備を進めていく様子

相続登記の義務化とは|なぜ始まったのか

相続登記とは、正確には「相続による所有権の移転の登記」といい、土地や建物の所有者が亡くなったときに、その名義を故人から、遺産を引き継ぐ相続人へ変更する手続きのことです。

これまで相続登記は任意で、いつまでにしなければならないという決まりはありませんでした。その結果、登記簿を見ても今の所有者が分からない「所有者不明土地」が全国で増え、公共事業や災害復旧、周辺環境の維持などの妨げになるという社会問題が起きていました。

この問題を解消するため、これまで任意だった相続登記が、2024年4月1日から義務になりました。「使う予定があるかどうか」ではなく、「相続で不動産を取得したかどうか」で義務が生じる、という点がポイントです。


いつまでにやる? 期限と「起算点」

相続登記の期限は、単に「亡くなった日から3年」ではありません。相続人が「自分が相続人であること」と「その不動産を相続で取得したこと」を知った日から3年以内です。

たとえば、亡くなった親が不動産を持っていたことを後から知った場合は、その不動産の存在を具体的に知ったときから数えます。「命日から3年」と思い込んでいると、かえって誤解のもとになります。

そして、見落としがちなのが過去の相続です。2024年4月1日より前に発生した相続で、まだ相続登記をしていない場合は、原則として2027年3月31日までに対応が必要です。「祖父の代の名義のまま」というような土地は、まさにここに当てはまります。

もう一点、あわせて知っておきたいのが、遺産分割がまとまった後の登記です。ひとまず法定相続分で登記した後や、次にご説明する「相続人申告登記」で義務を果たした後でも、その後に遺産分割協議がまとまった場合には、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容に沿った登記をする必要があります。


放置するとどうなる? 過料と「正当な理由」

正当な理由がないのに相続登記の申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になるとされています。

ただし、期限を過ぎたら直ちに過料が科される、という仕組みではありません。登記官が義務違反を把握した場合には、まず「相続登記を申請してください」という催告が行われ、それでも正当な理由なく申請しないときに、過料の手続きへ進む流れが示されています。とはいえ、これは「放置してよい」という意味ではありませんので、早めの対応が安心です。

なお、次のような場合は、一般に「正当な理由」があると認められる例として挙げられています。

  • 相続人が極めて多数にのぼり、戸籍の収集や相続人の把握に多くの時間がかかる場合
  • 遺言の有効性や遺産の範囲などが相続人の間で争われていて、誰のものになるかが明らかでない場合
  • 相続登記の義務を負う方自身に、重病などの事情がある場合
  • DV被害などにより避難していて、住所を明らかにすると危険が及ぶような場合
  • 経済的に困窮していて、登記の費用を負担する能力がない場合

ただし、これらに当てはまる可能性がある場合でも、最終的には個別の事情によって判断されます。「自分は正当な理由があるはず」と自己判断して放置せず、早めに法務局や専門家へ相談することが大切です。


相続登記までの全体の流れ

相続登記そのものは司法書士(またはご本人)が行いますが、そこにたどり着くまでには、いくつかの準備が必要です。大きな流れは次のとおりです。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 戸籍を集めて、相続人を確定する
  3. どの不動産を相続するのか、財産を把握する
  4. 遺産分割協議で、分け方を決める(協議書を作成)
  5. 登記を申請する(司法書士またはご本人)

このうち、意外とつまずきやすいのが「どの不動産があるのか分からない」というケースです。実は、故人が持っていた不動産を全国で一覧にして確認しやすくするための新しい制度も始まっています。詳しくは所有不動産記録証明制度の記事で解説しています。

なお、5の登記申請の代理は司法書士の業務です。行政書士は、1〜4の準備部分(戸籍収集・相続人調査・財産整理・遺産分割協議書の作成など)をお手伝いし、登記が必要な場面では司法書士へおつなぎします。


まとまらないときの「相続人申告登記」

「相続人同士の話し合いがすぐにはまとまらない」——そうしたときのために、相続登記の義務化にあわせて、相続人申告登記という簡易な制度が新しく設けられました。

これは、登記簿上の名義人が亡くなったことと、自分がその相続人であることを法務局に申し出ることで、ひとまず相続登記の申請義務を果たしたものとして扱ってもらえる制度です。話し合いが長引きそうなときに、期限だけは守れる、という点で役立ちます。

ただし、限界もはっきりしています。相続人申告登記は、「誰がその不動産を取得したか」を確定させる登記ではありません。あくまで暫定的な位置づけです。そして、その後に遺産分割が成立した場合には、これとは別に、遺産分割の内容に沿った登記を(成立日から3年以内に)改めて行う必要があります。「申告さえしておけば、あとは何もしなくてよい」ではない、という点に注意が必要です。


2026年に始まった住所・氏名変更登記も確認

相続登記の義務化に続いて、2026年4月1日からは、住所・氏名の変更登記も義務化されました。不動産の所有者は、引っ越しや結婚・離婚などで住所や氏名が変わったときに、変更があった日から2年以内に変更登記を申請する必要があり、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象になる可能性があります。

施行日より前にすでに住所や氏名が変わっている場合も対象で、経過措置により、原則として2028年3月31日までに対応することとされています。

相続とも関わりが深い制度です。相続登記を進めるとき、相続人の住所が登記簿上の住所と違っていると、そこでもうひと手間かかります。そのため実務では、相続登記と住所変更登記を一緒に対応することが多くなっています。

なお、住所・氏名変更登記については、法務局が住民票などの情報をもとに職権で登記を更新する「スマート変更登記」という負担軽減の仕組みも案内されています。利用の可否や具体的な方法は、法務省・法務局の最新情報をご確認ください。


よくある誤解Q&A

Q. 使う予定がない実家や山林でも、相続登記は必要ですか? A. 必要です。使う予定があるかどうかではなく、相続で不動産を取得したかどうかが問題になります。

Q. 相続人同士の話し合いがまとまらない場合は? A. 相続人申告登記を利用できる場合があります。ただし、最終的な名義変更ではありません。話し合いがまとまったら、改めてその内容に沿った登記が必要です。

Q. 相続放棄をすれば、相続登記は不要ですか? A. 家庭裁判所で相続放棄が受理されれば、その方は初めから相続人でなかったものとして扱われます。ただし、単に「要らない」と口で言っているだけでは相続放棄にはなりません。手続きが必要です。

Q. 共有の不動産は、誰が登記するのですか? A. 共有者となる相続人全員に関係します。実務上は、司法書士に依頼して、必要書類を整理しながら進めることが多いです。

Q. 相続登記は行政書士に頼めますか? A. 相続登記の申請代理は、司法書士の業務です。行政書士は、戸籍収集、相続人調査、遺産分割協議書の作成など、登記の前提となる準備をお手伝いできます。


うりずんに相談できること

うりずん相続手続き相談室では、相続登記そのものの申請代理は行いません。行政書士として、戸籍収集による相続人調査、相続関係説明図の作成、法定相続情報一覧図の作成支援、財産資料の整理、遺産分割協議書の作成など、登記の前提となる準備をお手伝いします。登記申請が必要な場合は、提携する司法書士へおつなぎします。

また、相続税の判断や申告は税理士と連携し、遺産の範囲や遺言の有効性などで争いがある場合は弁護士へおつなぎします。「前提を整えて、正しい専門家につなぐ」——これがうりずんの役割です。川崎・横浜エリアで、初めての相続でも安心して次の一歩を踏み出せるよう、ひとつずつ丁寧にご案内します。


まとめ

  • 相続登記は2024年4月から義務化。期限は「亡くなった日」ではなく、相続人であることとその不動産を取得したことを知った日から3年以内です。
  • 2024年4月より前の相続で未登記のものは、原則2027年3月31日までが期限です。
  • 過料はいきなり科されるのではなく催告が先ですが、放置してよいわけではありません。相続人申告登記は暫定的な制度で、分割成立後は別途登記が必要です。
  • 登記の申請は司法書士、その前提となる戸籍・相続人調査・協議書などの準備は行政書士がお手伝いできます。気になる不動産があれば、まずは早めのご確認を。