遺言書を作るなら、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」のどちらがよいのか迷う方は少なくありません。なかでも公正証書遺言は、公証人が関与して作成し、原本が公証役場に保管されるため、方式不備や紛失・改ざんのリスクを抑えやすい方法です。
一方で、公正証書遺言には、公証人手数料がかかる、証人2人が必要、事前に戸籍や財産資料を準備する必要がある、といった注意点もあります。
この記事では、公正証書遺言の作り方、費用の目安、必要書類、証人の選び方、行政書士に相談できることを、相続手続きの現場目線でわかりやすく整理します。自筆証書遺言も含めた遺言書全体の入門は遺言書の作成ガイドでまとめていますので、迷っている方はあわせてご覧ください。
目次
- 公正証書遺言とは|公証役場で作る確実性の高い遺言書
- 公正証書遺言をおすすめしたい人
- 公正証書遺言を作る流れ
- 必要書類|戸籍・印鑑証明・財産資料を準備する
- 証人2人は誰に頼む?家族は証人になれないことが多い
- 費用はいくら?公証人手数料と専門家費用
- よくある疑問|直接行けば作れる?/家族に知られずに作れる?/高齢・入院中でも作れる?
- 行政書士に相談できること

公正証書遺言とは|公証役場で作る確実性の高い遺言書
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。公証人が遺言者の意思を確認・筆記し、その内容を遺言者と証人2人に読み聞かせるか閲覧させて、間違いがないか確認したうえで作成されます。
自筆証書遺言と比べると費用はかかりますが、公証人が関与するため方式不備による無効リスクを抑えやすく、原本が公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配も少なくなります。また、相続開始後の家庭裁判所の検認が不要なため、相続手続きに使いやすい点も大きなメリットです。
公正証書遺言をおすすめしたい人
公正証書遺言は、特に次のような方に向いています。
- 子どもがいない夫婦(配偶者と、亡くなった方の親、親がいなければ兄弟姉妹が相続人になります)
- 相続人同士の関係が疎遠・不仲
- 自宅など不動産が主な財産
- 内縁の配偶者や相続人以外の人に財産を遺したい
- 事業用資産や農地など、特定の人に引き継がせたい財産がある
- 遺言書の無効や紛失を避けたい
- 高齢・病気などで、後日の争いをできるだけ防ぎたい
とくに、相続人の間で揉めそうな事情がある場合や、不動産が絡む場合は、手軽さよりも確実性を優先して公正証書遺言を検討する価値があります。誰がどれだけ相続できるかについては法定相続分で整理していますので、配分の見通しを立てるうえで参考になります。
公正証書遺言を作る流れ
公正証書遺言は、おおむね次の流れで作成します。
- 財産・相続人を整理し、誰に何を遺すかを決める(遺留分にも配慮)
- 必要書類を集める
- 公証役場と文案を打ち合わせる(複数回やり取りすることが多い)
- 証人2人を手配する
- 作成日に公証役場で遺言書を作成し、正本・謄本を受け取る
公証役場での作成当日だけでなく、事前準備がとても重要です。内容が曖昧なままだと、せっかく公正証書遺言を作っても、相続手続きで使いにくくなることがあります。なお、財産を遺したい相手や分け方に迷うときは、遺産分割協議書で扱う「相続人全員での話し合い」の進め方も参考になります。遺言書がない場合の分け方と比べることで、遺言で何を残すべきかが見えてきます。
必要書類|戸籍・印鑑証明・財産資料を準備する
公正証書遺言を作るには、一般的に次のような資料を準備します。
- 遺言者本人の本人確認書類
- 遺言者の印鑑証明書(発行から3か月以内のものが求められることが多い)
- 遺言者の実印(作成当日に押印します)
- 遺言者と相続人の関係がわかる戸籍
- 財産を受け取る人の情報(住民票など)
- 不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書
- 預貯金、有価証券、保険などの資料
- 証人の住所・氏名・生年月日がわかる資料
- 遺言執行者を指定する場合は、その人を特定できる資料
必要書類は、公証役場や遺言の内容、財産の種類、財産を受け取る人が相続人か相続人以外かによって異なります。事前に公証役場または専門家に確認してから取得すると安心です。不動産がある場合は、登記事項証明書に沿って所在・地番・家屋番号まで正確に特定することが大切です。
証人2人は誰に頼む?家族は証人になれないことが多い
公正証書遺言では、証人2人の立会いが必要です。
ただし、誰でも証人になれるわけではありません。推定相続人、財産を受け取る人、それらの配偶者や直系血族などは証人になれません。
そのため、家族に証人を頼もうとしても、証人になれないケースが多くあります。また、証人は遺言の内容を知る立場になるため、内容を家族や知人に知られたくない場合は、行政書士など守秘義務のある専門家に依頼する方法もあります。公証役場で証人を紹介してもらえる場合もありますので、適切な証人が身近にいないときは、事前に相談してみるとよいでしょう。
費用はいくら?公証人手数料と専門家費用
公正証書遺言では、公証役場に支払う公証人手数料がかかります。手数料は、遺言で財産を受け取る人ごとの財産額に応じて、法令で定められた手数料表に基づいて決まる仕組みです。目安としては数万円〜十数万円程度になることが多いですが、財産額や受取人の数、遺言の内容によって変わります。手数料額は改定されることがあるため、作成時点で公証役場に確認するのが確実です。
そのほか、証人を依頼する場合の費用、戸籍や登記事項証明書などの取得実費、行政書士など専門家に依頼する場合の報酬がかかります。
費用だけを見ると自筆証書遺言より高くなりますが、無効リスクや紛失リスクを抑え、相続開始後の手続きが進めやすくなる点を考えると、争いを防ぐための費用として検討する価値があります。
なお、公正証書遺言であっても、注意したいポイントがいくつかあります。遺留分を無視した内容にすると、相続人から遺留分の侵害額請求を受ける可能性があります。財産の特定が曖昧だと、せっかく作っても相続手続きで使いにくくなります。遺言執行者を指定していないと、預貯金の解約・払戻しや、不動産について司法書士と連携して進める登記手続きの段取りで戸惑うことがあります。また、相続税がかかる可能性がある場合は、税理士への相談も検討してください。作成後に財産や家族関係が変わったら、見直しも必要です。「作ること」だけでなく、「実際に使える内容にすること」を意識して進めましょう。
よくある疑問|直接行けば作れる?/家族に知られずに作れる?/高齢・入院中でも作れる?
公正証書遺言について、相談の現場でよく聞かれる質問をまとめました。
Q. 公証役場に直接行けば、全部作ってくれますか?
A. 公証人は、公正証書として有効な形に整えるために、文案の確認・作成や読み聞かせ、押印までを担います。一方で、財産資料の整理、戸籍の収集、相続人関係の確認、遺留分への配慮、証人の手配などは、原則として遺言者側で準備する必要があります。準備が不十分なまま公証役場に行くと、追加資料の提出や再調整が必要になることがあります。準備の段階から不安があれば、早めに行政書士などの専門家へ相談しておくとスムーズです。
Q. 家族に内容を知られずに作れますか?
A. 公証人と証人2人には内容が伝わりますが、証人を家族ではなく専門家にすれば、家族には知られずに作成できます。行政書士・司法書士・弁護士などの専門家には職務上の守秘義務がありますので、家族や知人に内容を知られたくない場合は、証人も含めて専門家に依頼する方法が安心です。相談の段階から「証人も含めて専門家に対応してほしい」と伝えておくとよいでしょう。
Q. 高齢で外出が難しい・入院中でも作れますか?
A. 作れる場合があります。公証人は、自宅・病院・介護施設などへ出張して公正証書遺言を作成してくれることがあります(別途、出張に伴う費用が加算されます)。ご本人に遺言内容を理解し判断できる能力があると確認できれば、寝たきりや入院中であっても作成できる場合があります。判断能力に不安がある場合は、医師の診断書などが求められることもあるため、早めに公証役場や専門家へ相談することが大切です。逆に、認知症などで判断能力が低下してしまうと、公正証書遺言は作れなくなることがあります。「元気なうちに早めに」が大切な理由がここにあります。
行政書士に相談できること
行政書士には、紛争性のない範囲で、公正証書遺言の作成準備を相談できます。具体的には、次のようなサポートが考えられます。
- 相続人の確認に必要な戸籍収集
- 財産資料の整理
- 財産目録の作成支援
- 遺言書の原案作成支援
- 公証役場との事前調整
- 証人の手配・証人としての立会い
- 遺言執行者としての関与
一方で、相続人間に争いがある場合、遺留分侵害額請求への対応、相続登記、相続税申告は、それぞれ弁護士・司法書士・税理士の専門領域です。必要に応じて、各専門家と連携しながら進めることが安心です。
まとめ
公正証書遺言は、公証人が関与して作成し、原本が公証役場に保管される、確実性の高い遺言書です。費用や証人の準備は必要ですが、方式不備・紛失・改ざんのリスクを抑えやすく、相続開始後の検認も不要です。
- 公証人が遺言者の意思を確認・筆記し、証人2人とともに内容を確認して作成
- 公証人手数料は財産額・受取人数で変動。目安は数万円〜十数万円(最新表は公証役場で確認)
- 必要書類は本人確認書類・実印・印鑑証明書・戸籍・財産資料など(公証役場ごとに差あり)
- 証人には推定相続人・受遺者・その配偶者や直系血族はなれない
- 公証人の出張で、自宅・病院・施設での作成も可能(判断能力があるうちに)
- 遺留分・財産特定・遺言執行者・相続税への目配りも忘れずに
相続のお手続きでお困りの方へ
Officeうりずん相続手続き相談室では、公正証書遺言の原案作成支援、財産目録の作成支援、必要書類の収集、公証役場との段取り、証人対応、遺言執行者としての関与など、行政書士として対応できる範囲でサポートしています。相続登記、相続税申告、相続放棄、紛争対応が必要な場合には、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携し、必要な専門家へ適切におつなぎします。
川崎・横浜エリアを中心に、初回のご相談は60分無料・土日祝もご予約可能・秘密厳守・お問い合わせには翌営業日までにご返信しています。お電話・LINE・お問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。
公正証書遺言は、思い立ったときに、判断能力のあるうちに、正しい形で残しておくことが何より大切です。証人や費用、内容のまとめ方で迷ったら、早めにご相談ください。初回のご相談は60分無料です。土日祝のご予約にも対応し、秘密は厳守、いただいたお問い合わせには、原則として翌営業日までにご返信します。どうぞ安心してご相談ください。