※この記事は2026年9月時点の情報に基づく一般的な解説です。無料相談を行っている窓口の受付方法・利用条件・相談時間・費用の扱いは、それぞれの窓口が定めており変更されることがあり、どの窓口が適しているかも、相続人の状況、財産の内容、争いの有無によって一人ひとり異なります。ご利用の前に各窓口の公式案内で最新の情報をご確認いただき、戸籍については市区町村の窓口、不動産登記については法務局や司法書士、相続税については税務署や税理士、遺族年金・未支給年金については年金事務所、遺産分割調停など家庭裁判所の手続については家庭裁判所や弁護士、相続人調査や相続関係の整理については行政書士にご確認ください。

母が亡くなって、やらなければいけないことがあるのは分かっている。でも、何から手をつければいいのかも、どのくらい費用がかかるのかも分からない。いきなり事務所に行って高い料金を請求されたらどうしよう——そう考えて、まず「無料で相談できるところ」を探し始める方は少なくありません。

無料相談の窓口はいくつもあります。ただ、どこでも同じことが聞けるわけではありません。窓口によって、答えてもらえることの範囲が決まっています。行った先が違えば、時間をかけて出向いても「ここでは分かりません」と言われて終わることもあります。

このコラムでは、相続の無料相談にどんな種類があるのか、窓口ごとに何が聞けるのかを整理します。あわせて、無料相談のあとに正式に依頼する場合、費用について何を確認しておけばよいかもお伝えします。


目次

  1. 相続の無料相談には、いくつかの種類があります
  2. 窓口によって、聞けることが違います
  3. 法テラスの無料法律相談
  4. 市区町村や士業会が行う無料相談
  5. 相談窓口に見えて、相談ではないものがあります
  6. 相談の前に、手元で整理しておくこと
  7. 依頼する前に、費用について確認しておくこと
  8. 期限だけは、待ってくれません
相続の無料相談について、窓口ごとの違いや費用の確認方法を行政書士に相談している女性のイラスト

相続の無料相談には、いくつかの種類があります

「無料相談」と一口に言っても、中身はかなり違います。

法律の専門家が法律上の問題に答えるものもあれば、役所や公的機関が手続きのやり方を案内してくれるものもあります。税金についての相談、年金についての相談は、また別の窓口です。

大きく分けると、次のようになります。

法律の相談 弁護士が法律上の問題について助言するもののほか、司法書士が登記など業務の範囲内で相談に応じるものがあります。法テラス、各地の弁護士会や司法書士会、市区町村の法律相談などがあります。

手続きの案内 役所や公的機関が、自分たちが扱っている手続きの進め方を案内するもの。法務局の登記に関する案内、家庭裁判所の手続案内などです。

税の相談 税務署や税理士会が、税金について答えるもの。

年金の相談 年金事務所や街角の年金相談センターが、年金について答えるもの。

行政書士・社会保険労務士などによる相談 各士業の会や事務所が行うもの。扱える範囲は職種によって決まっています。

自分の困りごとがどれに当たるかで、行くべき窓口が変わります。逆に言えば、困りごとの中身がはっきりしないうちに窓口を選ぶと、当たりを引くまで何度も出向くことになりかねません。


窓口によって、聞けることが違います

同じ「相続について相談したい」でも、聞きたいことによって適切な窓口は変わります。

聞きたいこと主な窓口
相続人どうしで意見が合わない、争いになりそう弁護士(法テラス、弁護士会の相談など)
不動産の相続登記を依頼したい司法書士
相続登記の申請方法や必要書類を確認したい法務局の登記手続案内
相続税がかかるのか、いくらになるのか税理士、税務署
遺族年金や未支給年金を請求したい年金事務所、社会保険労務士
戸籍の取得方法を確認したい市区町村の戸籍窓口
戸籍を収集して相続関係を整理したい行政書士
そもそも何から始めればいいか分からない相続を扱っている専門家、市区町村の相談窓口

同じ「不動産」でも、依頼するのか、自分で進めるために確認するのかで行き先が変わります。この違いは後ほど詳しくお伝えします。

表のいちばん下が、実際にはいちばん多い相談です。何を聞けばいいかが分かっていれば窓口も選べますが、その手前で止まっている方が大半だからです。

この場合は、相続全般を扱っている窓口にまず話を聞いてもらい、そこで整理してから必要な専門家につないでもらう方が、結果的に早く進むことがあります。


法テラスの無料法律相談

法テラス(日本司法支援センター)は、国が設立した法的トラブル解決のための総合案内所です。相続についても相談できます。

法テラスが行っている業務のうち、無料の相談にあたるのは「法律相談援助」と呼ばれる部分です。2026年9月現在、同一の問題について3回まで、1回30分の相談を無料で受けられるとされています。相談は法テラスの事務所のほか、法テラスと契約している弁護士・司法書士の事務所でも利用できます。

利用するには、収入と資産が一定の基準以下であることが条件になります。この基準には地域による区分があり、川崎市・横浜市は高い方の基準が適用される地域にあたります。2026年9月現在、公表されている収入の基準は、1人家族で月200,200円以下、2人家族で276,100円以下、3人家族で299,200円以下です。資産の基準は1人家族で180万円以下、2人家族で250万円以下、3人家族で270万円以下とされています。

ただし、これらの基準は改定されることがあります。4人以上の家族の場合や、家賃・住宅ローンを支払っている場合には、別の計算が加わります。また、自分の相談内容が対象になるかどうかは、実際に問い合わせてみないと分からない部分もあります。利用できるかどうか、最新の基準がどうなっているかは、法テラスの公式案内でご確認ください。

⚠ 「法テラス=依頼まで全部無料」ではありません

無料法律相談を利用できても、そのあとに弁護士や司法書士へ正式に依頼する場合は、「代理援助」「書類作成援助」という費用の立替制度を利用する形になることがあります。これは原則として、立て替えてもらった費用を後から返していく制度です。利息はかかりません。生活保護を受給している場合には、返済の猶予や免除の申請ができる仕組みもあります。


市区町村や士業会が行う無料相談

法テラスのほかにも、無料または低額で相談できる窓口があります。

川崎市や横浜市では、市民向けの相談として法律相談などを実施しています。また、弁護士会・司法書士会・行政書士会・税理士会といった各士業の団体も、相談会や相談センターを設けています。相続をテーマにした相談会が期間限定で開かれることもあります。

ただし、これらは窓口ごとに条件がかなり違います。

  • 無料か有料か
  • 1回あたりの時間
  • 扱う分野
  • 予約が必要かどうか、その市の住民に限られるかどうか
  • 実施する日と場所

いずれも変わることがあるため、この記事では具体的な料金や時間は挙げません。予約を取る前に、その窓口の公式案内で最新の条件をご確認ください。 電話で予約する際に「相続について相談したいのですが、この窓口で扱っていますか」「どのくらいの時間ですか」と確かめておくと、行ってから食い違うことを防げます。


相談窓口に見えて、相談ではないものがあります

ここまで見てきた窓口のうち、法務局や家庭裁判所は、少し性質が違います。

これらは主に「手続案内」を行う窓口です。自分たちが扱う手続きについて、利用できる手続きの種類や申立方法、必要書類などを案内してくれます。一方で、どの選択が自分に有利か、相手に何を主張すべきか、交渉をどう進めるかといった個別の法律相談や代理までは行いません。ここを取り違えると、時間をかけて出向いても求めていた答えが得られないことになります。

家庭裁判所の「家事手続案内」

家庭裁判所には「家事手続案内」という窓口があります。遺産分割調停や相続放棄など、家庭裁判所で扱う手続きについて案内を受けられます。

家庭裁判所では、利用できる手続きの種類や申立方法について案内を受けられます。手続きを利用できるか、どの申立てをすればよいか、費用や必要な添付書類は何か、といった内容です。1件につき概ね20分以内が目安とされています(2026年9月現在)。

ただし、どの選択が自分に有利か、どのような主張をすべきかといった個別の法律相談をしてもらう場ではありません。裁判所自身が、法律相談や身上相談には応じられないと明記しています。

法務局の「登記手続案内」

法務局には「登記手続案内」があります。相続登記もこの対象です。

法務局の説明によれば、提供されるのは登記申請書の作成等に必要な情報とされています。完全予約制で、1回20分以内です(2026年9月現在)。

法務局では、電話や窓口での対面などによる登記手続案内が行われています。ウェブ会議による案内を行っている窓口もあります。利用方法は法務局ごとに異なるため、予約前に確認してください。

注目したいのは、法務局自身が次のように案内している点です。登記申請手続は司法書士や土地家屋調査士に代理を依頼することができるので、自分で登記手続をすることが難しい場合には依頼することを勧める、と書かれています。

つまり登記手続案内は、自分で申請書を作る人のための情報提供の場です。手続きそのものを任せたい場合や、権利関係が複雑で判断に迷う場合は、最初から司法書士に相談する方が早いということになります。

川崎市の不動産登記については、横浜地方法務局川崎支局が窓口になります。最新の所在地、予約方法、受付方法は公式ページでご確認ください。

税務署と年金事務所

税の相談は二段構えになっています。一般的な質問は電話相談センターで受け付けています。具体的な書類や事実関係の確認が必要な相談は、所轄の税務署での面接相談になり、こちらは事前予約制です。国税庁は、面接の時間を十分に確保するためと、持参してもらう書類を事前に伝える必要があるため、と理由も説明しています。

年金については、遺族年金の請求や未支給年金の請求が予約相談の対象として明示されています。予約はインターネットのほか、予約受付専用電話でも受け付けています。

川崎市内の年金事務所は、川崎年金事務所と高津年金事務所の2か所です。ほかに街角の年金相談センター溝ノ口があります。個人の相談は全国どこの年金事務所でも受けられるとされています。連絡先や受付時間は変わることがあるため、日本年金機構の公式ページでご確認ください。


相談の前に、手元で整理しておくこと

無料相談や手続案内には、相談時間の目安や上限が設けられている窓口があります。限られた時間の中で状況を説明し、答えをもらうことになるため、説明だけで時間が終わってしまうと、もったいない結果になります。

事前に、次のことを自分の言葉で言えるようにしておくと、相談が進みやすくなります。

整理しておくこと具体的に
誰が、いつ亡くなったか亡くなった方との続柄と、亡くなった日
相続人になりそうな人配偶者、子、親、兄弟姉妹のうち誰がいるか。連絡が取れない人がいるか
財産のあらまし不動産、預貯金、保険、借入れがありそうか。おおよそでよい
遺言書の有無あるかないか、見つかっているか
すでに届いている通知金融機関、役所、税務署などから届いた書類
いちばん困っていること何を解決したくて相談に来たのか

いちばん下が重要です。困りごとがはっきりしていれば、窓口の担当者も答えやすくなります。逆に「何から手をつければいいか分からない」という状態でも、それをそのまま伝えれば構いません。

なお、持参する書類については窓口ごとに指定があります。年金事務所であれば基礎年金番号がわかるものと本人確認書類の原本が必要で、代理の方が行く場合には委任状などが求められます。予約を取るときに、何を持って行けばよいかを確認しておいてください。


依頼する前に、費用について確認しておくこと

無料相談で方向性が見えたら、次は「自分で進めるか、専門家に依頼するか」の判断になります。ここで多くの方が気にするのが費用です。

インターネットで「相続 費用 相場」と調べても、はっきりした答えは出てきません。これには理由があります。弁護士・司法書士・行政書士・税理士のいずれも、報酬は各事務所が自由に定める仕組みになっているためです。 全国一律の基準は存在しません。

同じ名前の業務でも、実際にかかる手間は事案によって大きく変わります。相続人が2人の場合と、10人いて一部が行方不明の場合とでは、まったく違う作業になります。そのため「相場」という形で金額を示すことが難しいのです。

そこで、金額を探すのではなく、確認の仕方を知っておく方が確実です。

無料相談のあとに正式に依頼する場合は、次の点を契約前に確認しましょう。

  • どこまでが有料になるのか(どの作業が料金に含まれ、どこからが別料金か)
  • 報酬はいくらか
  • 実費(戸籍の取得費用、登録免許税、郵送料など)はどのくらいか
  • 追加費用が生じる可能性はあるか。どんな場合に生じるか
  • 支払いの時期はいつか

士業ごとに、報酬の定め方や、説明・掲示に関するルールがあります。費用について尋ねることは、なんら遠慮の要ることではありません。契約前に費用の内容や見積りについて十分な説明を受けられない場合は、その場で依頼を決めず、他の事務所も含めて比較してみてもよいでしょう。


期限だけは、待ってくれません

窓口を探して比べているうちに、期限が来てしまうことがあります。相続には、期限が決まっている手続きがいくつかあります。

相続放棄は、原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内です。借金の方が多い場合などに相続を放棄する手続きですが、期間が限られています。詳しくは相続放棄の期限についてのコラムをご覧ください。

相続税の申告期限は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。遺産分割が終わっていなくても、原則としてこの期限までに申告が必要です。相続税の申告期限のコラムで解説しています。

相続登記は、原則として、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。2024年4月から義務化されました。2024年4月より前に発生した相続についての扱いを含め、相続登記の義務化について詳しくお伝えしています。

いずれも、無料相談の予約が取れるかどうかとは関係なく進んでいきます。期限が近いと感じたら、無料の窓口を探し続けるより、まず対応できる専門家に連絡を取る方が安全です。


まとめ

相続の無料相談には、いくつもの窓口があります。ただし、どこでも同じことが聞けるわけではありません。

相続人間の争いや法的な主張・交渉が必要な場合は弁護士、不動産の相続登記を依頼する場合は司法書士、相続税は税理士や税務署、年金は年金事務所や社会保険労務士というように、相談内容によって窓口が分かれています。また、法務局や家庭裁判所の案内は、自分たちが扱う手続きの進め方を案内する窓口であって、どの選択が自分に有利か、どのような主張をすべきかといった個別の法律相談をする場ではありません。

窓口を選ぶ前に、自分が何に困っているのかを整理しておくと、無駄足を防げます。困りごとがはっきりしない段階であれば、相続全般を扱っている窓口にまず話を聞いてもらうという方法もあります。

そして、無料相談のあとに依頼へ進むときは、費用について遠慮なく確認してください。金額そのものより、何にいくらかかり、追加が生じるとすればどんな場合かを、契約の前にはっきりさせておくことが大切です。

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