※この記事は2026年9月時点の情報に基づく一般的な解説です。自動車の相続手続きは、普通車か軽自動車か、車検証の所有者が誰になっているか、相続人が何人いてどなたが引き継ぐかによって、窓口も必要書類も変わり、運輸支局ごとに案内の記載が異なることもあります。車検証の所有者欄にディーラーや信販会社の名前がある場合はその会社へ、普通車の移転登録や必要書類については管轄の運輸支局、軽自動車の名義変更については軽自動車検査協会、車庫証明については保管場所を管轄する警察署、自動車税については神奈川県の自動車税管理事務所、軽自動車税については市区町村の窓口、自賠責保険や任意保険については契約している保険会社、相続人の間で分割の内容に争いがある場合については弁護士にご確認ください。

父が亡くなって半年、実家の車庫には父の車がそのままになっています。まだ動くので売るのはもったいない気もするし、かといって誰も乗らない。とりあえず名義だけでも変えておこうと思って調べ始めたら、必要な書類が思ったより多い——そんなご相談をいただきます。

自動車の相続手続きは、不動産や預貯金と比べると後回しにされがちです。ただ、名義をそのままにして自由に売却・処分できるわけではなく、相続関係を踏まえた登録手続きが必要です。そして、税金の通知は毎年届き続けます。

このコラムでは、車検証の確認から、普通車と軽自動車の違い、乗り続ける場合と手放す場合の手続きの分かれ方までを整理します。


目次

  1. まず、車検証の所有者欄を確認してください
  2. 普通車と軽自動車で、手続きがまったく違います
  3. 乗り続けるのか、売るのか、廃車にするのか
  4. 必要書類は、誰が相続するかで変わります
  5. 車の価格が100万円以下なら、提出書類が少なくなります
  6. 名義をそのままにしておくと、何が起きるか
  7. 保険はどうなるか
  8. 行政書士に依頼できること
亡くなった親の車の名義変更について行政書士に相談している男性のイラスト

まず、車検証の所有者欄を確認してください

手続きの話の前に、確認していただきたいことがあります。車検証の「所有者の氏名又は名称」の欄です。

ここに親御さんのお名前が入っていれば、相続の手続きになります。ただ、ディーラーや信販会社の名前が入っていることがあります。 ローン購入などで、これらの会社に所有権が留保されている場合です。

この場合、関東運輸局の案内では、第三者が所有者であるときは相続は発生しないとされています。車の所有権はまだその会社にあるので、相続の対象にならないのです。

まずは所有者になっている会社へ連絡し、所有権の解除などに必要な手続きをご確認ください。

⚠ 電子車検証では、所有者が券面に印字されません
2023年から交付が始まった電子車検証(ICタグ付きのカード型)では、所有者の情報が券面に印刷されていません。確認するには、専用の閲覧アプリを使うか、「自動車検査証記録事項」という帳票を見る必要があります。車検証を見ただけでは所有者が分からないので、ご注意ください。

所有者が親御さんのお名前になっていることを確認できたら、次に進みます。


普通車と軽自動車で、手続きがまったく違います

自動車の相続手続きは、普通車と軽自動車でまったく別の制度です。窓口も、書類の名前も、必要なものも違います。

普通車軽自動車
窓口運輸支局・自動車検査登録事務所軽自動車検査協会
手続きの名前移転登録名義変更
手数料700円無料
車庫証明保管場所証明(先に警察署へ)保管場所届出(手続き後に警察署へ・地域による)
遺産分割協議書必要(例外あり)公式の必要書類に挙がっていない

手数料について補足します。普通車の移転登録は、2026年4月1日から700円になりました(窓口で申請する場合)。

ここで注意していただきたいことがあります。運輸支局のウェブサイトには、古い情報が残っている場合があります。 改定前の金額のまま更新されていないページも見かけます。実際に手続きをされる前に、管轄の運輸支局へご確認ください。

軽自動車の手続きは、現在は「名義変更」と呼ばれています。 提出する書類の名前は「自動車検査証変更記録申請書」です。古い記事では「自動車検査証記入申請」と書かれていることがありますが、現在の呼び方ではありません。


乗り続けるのか、売るのか、廃車にするのか

次に決めていただきたいのが、その車をどうするかです。ここで手続きの道筋が分かれます。

関東運輸局は、相続の手続きを次の5つに分けて案内しています。

これからどうするか手続き
相続人の1人が乗り続ける単独相続(移転登録)
相続人全員の共有名義にする共同相続(移転登録)
売る・譲る相続と第三者への名義変更を同時に
しばらく乗らない相続と一時抹消登録を同時に
解体して処分する永久抹消登録

売る場合に、必ず一度相続人の名義にしなければならないわけではありません。 相続と第三者への名義変更を、同じ日に一度に手続きできます。書類はOCRシート第1号様式を2枚(相続用と譲渡用)用意することになりますが、必要書類が揃っていれば、2つの申請を同じ窓口で同時に提出できます。

廃車にする場合は、さらに簡単になることがあります。 国土交通省は、永久抹消登録について、所有者が亡くなっている場合は相続人のうち1名の申請でも受理し、この場合は相続による移転登録をしないとしています。解体して処分すると決まっているなら、名義変更をせずに廃車できる可能性があります。

なお、車検が切れている車は、そのままでは移転登録ができません。 乗り続けるなら車検を通してから名義変更を、乗らないなら一時抹消登録を、という順序になります。


必要書類は、誰が相続するかで変わります

ここからは普通車の話です。関東運輸局の案内(2026年9月時点)をもとに整理します。

相続人の1人が引き継ぐ場合(単独相続)と、相続人全員の共有にする場合(共同相続)で、必要な書類が変わります。

単独相続共同相続
申請書OCRシート第1号様式第1号様式+第9号様式
誰が取得するかを定める書類必要 ※—
印鑑証明書引き継ぐ相続人のみ相続人全員
実印または委任状引き継ぐ相続人相続人全員

※相続人が1名のみの場合、遺産分割協議書等は不要です。

共同相続で「誰が取得するかを定める書類」が要らないのは、全員が所有者になるからです。 決める必要がないので、協議書も不要になります。代わりに、相続人全員の印鑑証明書と実印(または委任状)が求められます。

主な共通書類は次のとおりです。

  • 自動車検査証(有効期間内のもの)
  • 戸籍謄本または法定相続情報証明書(死亡の事実と相続人全員が確認できるもの)
  • 手数料納付書(700円の印紙を貼付)
  • 車庫証明(車検証の使用の本拠の位置と、新使用者の住所が同一の場合は不要)

このほか、新しい所有者と使用者が異なる場合の住民票や委任状、管轄が変わる場合の車両の持ち込みなど、状況によって必要になるものがあります。

戸籍は、法定相続情報証明書があれば代わりになります。 複数の手続きで戸籍一式が必要になる場合、この証明書を取っておくと使い回せます。詳しくは法定相続情報一覧図のコラムをご覧ください。

自動車以外の名義変更や解約も含めた全体のチェックリストは、名義変更チェックリストで扱っています。


車の価格が100万円以下なら、提出書類が少なくなります

相続人が複数いて、そのうち1人が車を引き継ぐ場合、通常は相続人全員が実印を押した遺産分割協議書などが必要です。また、亡くなった方の死亡と相続人全員を確認できる戸籍類も揃えます。車を引き継ぐ相続人については、印鑑証明書と実印も必要です。

相続人が遠方に住んでいたり、連絡が取りづらかったりすると、ここで止まってしまうことがあります。

ただ、車の価格が100万円以下の場合には、別の方法があります。

「遺産分割協議成立申立書」という書類です。国土交通省が様式を公開しています。車を引き継ぐ相続人が1人で作成し、実印を押します。あわせて、車の価格が100万円以下であることを確認できる査定証などの資料を添えます。

ここで最も誤解されやすい点をお伝えします。

⚠ 「他の相続人に相談せず一人で手続きできる」制度ではありません
申立書の本文には、遺産分割協議を行った結果その車を自分が相続することに協議が成立したこと、そしてこの申立書で申請することについて同意を得たこと、を申し立てる文言が入っています。記入欄にも「申立書による申請の同意年月日」があります。遺産分割協議が成立していることが前提の制度です。

何が簡略になり、何が変わらないのかを整理します。

内容
提出を簡略化できるもの相続人全員を確認するための戸籍類/相続人全員が実印を押した遺産分割協議書の提出
簡略化されないもの誰が車を取得するかについての遺産分割協議と同意/申請する相続人と亡くなった方との相続関係の確認/申請する相続人の印鑑証明書・実印

つまり、話し合いは必要だけれども、提出する書類の一部が減るという制度です。近畿運輸局の案内では、戸籍について「相続人全員のものは必要ありません」と明記されています。

なお、この申立書は登録自動車の相続手続きのためのもので、軽自動車の手続きには用いません。

査定価格をどう算定するかについては、公式の案内に記載がありません。どのような資料が認められるかを含め、事前に管轄の運輸支局へご確認ください。


名義をそのままにしておくと、何が起きるか

「急ぐ理由がないから」と手続きを先延ばしにすると、いくつか不都合が出てきます。

まず、税金です。 自動車税は、毎年4月1日現在の所有者を基準に課税されます。所有者が亡くなった場合、神奈川県は相続した方への名義変更を行うよう案内しています。すぐに名義変更できない事情がある場合は、県税事務所または自動車税管理事務所へご相談ください。

年度の途中で名義変更をしても、その年度分は前の所有者が納める義務があります。月割りで戻ってくるのは廃車(抹消登録)の場合だけで、名義変更では発生しません。

名義変更までに時間がかかる場合には、県税に関する通知などを受け取る相続人の代表者を届け出る制度があります。神奈川県では「相続人の代表者届出書」が用意されています。なお、代表者を届け出たからといって、その方だけが税を負担することになるわけではありません。

次に、手続きが必要になる場面が先送りされます。 名義をそのままにしていても、売却や廃車そのものが永久にできなくなるわけではありません。ただし、売却・譲渡・抹消をするときには、相続関係を確認する書類や登録手続きが必要になります。

そして、時間が経つほど相続関係が複雑になります。 相続人の1人が亡くなれば、その方の相続人が加わります。関係が遠くなるほど、必要な書類や関係者が増えることがあります。


保険はどうなるか

車を引き継ぐ場合、保険の扱いも確認が必要です。

自賠責保険は、車に必ずかけることが法律で義務づけられている保険です。所有者などが変わった場合には契約者の変更や証明書の記載事項の変更を行いますので、契約している損害保険会社・共済組合へご確認ください。

任意保険については、契約の変更や等級の取扱いが契約内容などによって異なるため、加入している保険会社へご確認ください。

保険の空白期間をつくらないようご注意ください。 手続きの途中で補償が切れてしまうと、事故が起きたときに困ります。


行政書士に依頼できること

自動車の名義変更は、書類が多く、平日の日中に運輸支局へ行く必要があります。ご自身で進めることもできますが、代理を依頼することもできます。

行政書士は、移転登録の申請を代理でお引き受けできます。 車庫証明の申請も同様です。警察庁の通達でも、代理人による保管場所証明申請を前提とした取扱いが示されています。

遺産分割協議書の作成も承ります。ただし、これは相続人の間で分割の内容について合意が成立している、争いのない場合に限られます。意見が分かれている事案は弁護士の領域になります。

次のものは、それぞれの専門家へおつなぎします。

  • 不動産の相続登記 → 司法書士
  • 相続税の申告 → 税理士
  • 相続人の間の争い → 弁護士

まとめ

自動車の相続手続きについて整理してきました。

まず車検証の所有者欄を確認してください。 ディーラーや信販会社の名前が入っていれば、相続ではなく別の手続きになります。電子車検証の場合は、券面に所有者が印字されていないため、閲覧アプリか記録事項の帳票で確認します。

普通車と軽自動車では制度が違います。 窓口も書類の名前も別なので、どちらなのかを先に確認してください。

その車をどうするかで、手続きが分かれます。 乗り続けるのか、売るのか、廃車にするのか。売る場合も廃車にする場合も、必ず一度相続人の名義にしなければならないわけではありません。

車の価格が100万円以下なら、提出する書類が少なくなる方法があります。 ただし、遺産分割の話し合いそのものが不要になるわけではありません。

名義をそのままにしておくと、税金の通知が届き続けます。 そして、時間が経つほど相続関係が複雑になり、必要な書類や関係者が増えることがあります。

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