ご家族を亡くされて、相続のお手続きを進めていらっしゃる皆さま。
心から、お悔やみ申し上げます。
銀行で「相続のお手続きには、亡くなられた方の出生から死亡までのすべての戸籍をお持ちください」と言われ、戸惑われていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。「戸籍ってそんなにたくさんあるの?」「どこに行けば取れるの?」――聞き慣れない言葉と手続きの複雑さに、思わず手が止まってしまわれるお気持ちは、よく分かります。
この記事では、相続人調査の中心となる戸籍収集について、3つのルート(窓口・郵送・広域交付)と実務の進め方を、はじめての方にも分かるように整理しました。2024年3月に始まった「広域交付制度」で大きく変わった点も、あわせてご紹介します。
ご無理のないよう、一つずつご一緒に確認していきましょう。

目次
- なぜ戸籍が必要か(5つの場面と「相続人確定」の法的意義)
- 戸籍の3種類と違い(現在戸籍・改製原戸籍・除籍謄本)
- 「出生から死亡まで」すべての戸籍が必要な理由
- 広域交付制度(2024年3月開始)で、何が変わったか
- 法定相続情報一覧図で「戸籍束を A4 1枚」にまとめる
- 戸籍の集め方(3つのルート:窓口・郵送・広域交付)
- よくあるトラブルと対処法
1. なぜ戸籍が必要か(5つの場面と「相続人確定」の法的意義)
⏰ 手続きの期限:戸籍収集そのものに法定の期限はありませんが、相続放棄(3か月)・準確定申告(4か月)・相続税申告(10か月)・相続登記(3年)など、相続手続き全体の期限に間に合わせるためには、最初の1〜2か月での集中対応をおすすめします
相続のお手続きで、最初に立ちはだかるのが「戸籍を揃える」という作業です。なぜこれほど多くの場面で戸籍が求められるのか――まずは、その理由から整理してみましょう。
戸籍を提示する5つの主な場面
| 場面 | 必要となる戸籍の範囲 | 確認の目的 |
|---|---|---|
| 銀行(預貯金の解約・名義変更) | 亡くなられた方の出生から死亡まで + 相続人全員の現在戸籍 | 預金の払戻し先である相続人を確定するため |
| 法務局(不動産の相続登記) | 同上 | 登記名義人となる相続人を法的に確定するため |
| 家庭裁判所(遺言書の検認・相続放棄) | 同上 | 申立適格や利害関係人の範囲を確認するため |
| 税務署(相続税申告・準確定申告) | 同上 | 法定相続人の数(基礎控除の計算に直結)を確認するため |
| 年金事務所(遺族年金・未支給年金請求) | 亡くなられた方の戸籍 + 請求者との関係を示す戸籍 | 受給資格者(配偶者・子等)を確認するため |
どの場面でも、共通して問われているのは「この方の相続人は、誰と誰なのか」――これが、戸籍を集めるすべての作業の根本的な目的です。
「相続人を確定する」という法的意義
民法は、亡くなられた方の財産を誰が引き継ぐかを 「法定相続人」 という形で定めています。配偶者は常に相続人になり、それ以外は第1順位(子・孫など直系卑属)、第2順位(父母・祖父母など直系尊属)、第3順位(兄弟姉妹)の順で相続権が発生します。
ところが、「ご家族として認識していた人」と「戸籍上の相続人」が一致しないケース は珍しくありません。前のご結婚のお子様、認知されたお子様、養子縁組の事実――こうした情報がご本人も話されないまま戸籍にだけ記録されていることがあります。
🌱 大切なポイント
戸籍を「ご家族の事実確認のため」ではなく、「法律上の相続人を漏れなく確定するための公的証明書」 として、銀行・法務局・税務署は厳密に求めてきます。ご家族の感覚で「兄弟3人だけだから」と省略しても、銀行や法務局では受け付けてもらえません。だからこそ、出生からのすべての戸籍が必要になるのです。
戸籍を集めずに進めるリスク
戸籍を揃えずに相続手続きを進めようとすると、以下のような不利益が生じます。
- 銀行口座の解約・不動産の名義変更が滞る:必要書類が揃わず預金が引き出せないまま、不動産も相続登記の義務化(2024年4月施行)で3年以内の登記を怠れば10万円以下の過料の対象となる
- 相続税の申告が間に合わない:法定相続人の数が確定しないと基礎控除額(3,000万円+600万円×人数)が計算できず、申告書が作れない
- 後日、別の相続人が判明して協議のやり直しになる:遺産分割協議書を作り直し、署名押印もすべて取り直しが必要になる
特に最後のケースは、感情面でもご家族に大きな負担をかけます。「最初に戸籍を全部揃えて、相続人を確定してから話し合う」――これが、相続手続き全体の土台になります。
2. 戸籍の3種類と違い(現在戸籍・改製原戸籍・除籍謄本)
ひとくちに「戸籍」と言っても、相続手続きで求められるのは実は 3種類 あります。それぞれ役割が異なるため、最初に違いを押さえておくと、後の作業がぐっと分かりやすくなります。
3種類の比較表
| 種類 | 内容 | 取れる場所 | 相続で必要な場面 |
|---|---|---|---|
| 現在戸籍(現在戸籍謄本/抄本) | 今、効力を持っている戸籍。亡くなられた方の最後の本籍地で取得 | 最後の本籍地の市区町村役場 | 死亡の事実、最終的な親族関係の確認 |
| 改製原戸籍(かいせいげんこせき) | 戸籍法の改正で書き換えられる前の、古い様式の戸籍 | 各本籍地の市区町村役場 | 改製前に記載されていた親族関係(婚姻歴・養子縁組等)の確認 |
| 除籍謄本(じょせきとうほん) | 全員が抜けて(死亡・転籍・婚姻等)空になった戸籍 | 当時の本籍地の市区町村役場(150年保存) | 過去の本籍地での親族関係の確認 |
① 現在戸籍 — まずはここから
「現在戸籍」とは、文字どおり 今、効力を持っている戸籍 のことです。亡くなられた方の 最後の本籍地 の市区町村役場で取得できます。
亡くなられたあと、市区町村が死亡の事実を戸籍に反映する処理を行いますので、死亡から1〜2週間程度で「死亡日」が記載された現在戸籍が取得できるようになります。最後の本籍地は、住民票の写し(本籍地記載のもの)や、葬儀後にご家族で発見される書類などから確認できます。
② 改製原戸籍 —「読み解く」ことが必要な戸籍
「改製原戸籍」は、戸籍法の改正によって戸籍の様式が変わる際、書き換え前の古い様式の戸籍を保存したもの です。現場では「かいせいげんこせき」「はらこせき」などと呼ばれます。
📖 改製原戸籍が発生する主なタイミング
主な戸籍改製は、1957年(昭和32年) の法務省令による改製(根拠となる戸籍法の全部改正は1947年〔昭和22年〕。戸籍の編製単位を「家」単位から「夫婦と子」単位へ書き換えたもの)と、1994年(平成6年) 以降の戸籍のコンピュータ化の2回です。改製のたびに古い戸籍が「改製原戸籍」として保存され、新しい戸籍には改製後に記載すべき情報のみが転記されます。ここが落とし穴で、改製のときに「すでに婚姻や死亡で抜けた人」の記載は新戸籍に転記されません。たとえば、亡くなられた方に前のご結婚があった場合や、改製前にお亡くなりになっていたきょうだいがいた場合、現在戸籍を見ただけでは分からないことがあります。
③ 除籍謄本 — 誰もいなくなった戸籍
「除籍謄本」は、婚姻・転籍・死亡などで、その戸籍に記載されていた人が全員いなくなった戸籍 のことです。空になった戸籍はそのまま閉じられ、「除籍」となります。
たとえば、亡くなられた方が結婚を機にご両親の戸籍から抜け、新しい戸籍を作られた場合、もし他のご兄弟も同じく結婚・転籍されると、親の戸籍に残るのはご両親だけになります。さらにご両親が亡くなられると、その戸籍は誰もいない「除籍」になります。
亡くなられた方が幼少期や独身時代に在籍されていた戸籍を遡るためには、こうした除籍謄本を当時の本籍地から取り寄せる必要があります。なお、除籍は150年間保存 が義務づけられていますので、ほとんどのケースで取得可能です。ただし、保存期間が現在の150年に延長されたのは2010年(平成22年)で、それ以前の旧保存期間(80年など)を過ぎて既に廃棄されている古い除籍・改製原戸籍もあります。その場合は取得できず、別の資料での補完が必要になることがあります。
相続で求められる「出生から死亡までの戸籍」とは、上記3種類を組み合わせた一連の戸籍のことです。「現在戸籍だけ」では出生時の親族関係まで遡れず、「除籍だけ」では最近の動きが見えません。3種類セットで、亡くなられた方の戸籍上の歴史をすべて再現する――これが相続人調査の本質です。
【補足】2010年6月1日施行の戸籍法施行規則改正により、除籍簿の保存期間は80年から150年に延長されました。ただし、改正前にすでに保存期間を経過していた古い除籍は復元されず、明治・大正期の戸籍は取得できない場合があります。その際は自治体から「廃棄証明書」を取得することで、戸籍収集義務を果たしたものとして扱われます。
3. 「出生から死亡まで」すべての戸籍が必要な理由
「銀行で『出生から死亡まで』と言われたけれど、ここまで本当に必要?」――そんなお問い合わせを頻繁にいただきます。なぜここまで遡るのか、3つの理由を整理します。
法定相続人を「漏れなく」確定するため
相続では、「相続人がもう一人いるかもしれない」可能性をゼロにする ことが求められます。銀行や法務局の立場から見れば、相続人を称する方に支払った後で別の相続人が現れると、二重払いのリスクを負うからです。だからこそ、出生まで遡って 「もう他に相続人はいません」 という証明を求めるのです。
過去の婚姻・認知・養子縁組を見逃さないため
戸籍を出生まで遡ると、以下のような ご家族も知らなかった事実 が判明することがあります。
- 前のご結婚 — 若い頃に結婚し、お子様がいらっしゃった
- 認知された子 — 婚姻関係のない女性との間に生まれたお子様を、ご本人が認知されていた
- 養子縁組(送り出し・受け入れの両方向) — 若い頃に養子に出されていた、または誰かを養子に迎えていた
- 離婚に伴うお子様の去就 — 前のご結婚のお子様が、離婚時に元配偶者の戸籍に移っていた
これらが現在戸籍に記載されていなくても、戸籍上の親子関係がある限り、相続権が発生します。「家族の誰も知らなかった相続人」が後日判明すると、遺産分割協議のやり直しが必要になり、ご家族にも大きな負担となります。
➡ 関連ページ:親が亡くなったらやるべき10のこと|期限付き手続き完全リスト
転籍があると複数の本籍地から取り寄せが必要
転籍(本籍地の移動)をされた場合、移動前の本籍地に戸籍が残ります。たとえば、お生まれが福岡県、結婚を機に大阪府に転籍、定年後に神奈川県川崎市に再転籍――というケースでは、福岡・大阪・川崎の3か所の市区町村役場から戸籍を取り寄せる必要があります。
転籍は、結婚・引越し・家族の事情などで意外と多く発生しています。亡くなられた方が地方出身の方や、お仕事の関係で各地を転々とされた方の場合、5〜10通の戸籍 を集めることも珍しくありません。
➡ 関連ページ:遺言書の確認方法|相続発生後にまず確かめるべき3つのこと
4. 広域交付制度(2024年3月開始)で、何が変わったか
2024年3月1日から始まった「広域交付制度」 は、これまで「本籍地ごとに取り寄せる」しかなかった戸籍収集の負担を大きく軽減する、相続実務にとって画期的な制度です。
広域交付制度のしくみ
「広域交付」とは、全国どこの市区町村役場の窓口でも、本籍地に関係なく戸籍が請求できる 制度です。たとえば福岡県でお生まれの方が川崎市にお住まいだった場合、これまで福岡の役場へ郵送請求するしかなかった戸籍が、いまは 川崎の窓口でまとめて取得できる ようになりました。
対象範囲(直系限定、傍系は対象外)
広域交付の対象は 直系尊属・直系卑属に厳しく限定 されています。
| ご請求の関係 | 広域交付の可否 |
|---|---|
| ご自身(本人請求) | ◎ 可 |
| 配偶者 | ◎ 可 |
| 直系卑属(子・孫・ひ孫) | ◎ 可 |
| 直系尊属(父母・祖父母・曽祖父母) | ◎ 可 |
| 兄弟姉妹(傍系) | ✕ 不可 |
| おじ・おば、いとこ(傍系) | ✕ 不可 |
| 甥・姪(傍系) | ✕ 不可 |
⚠ よくあるトラブル
亡くなられた方にお子様がおらず、配偶者もすでに他界されている場合、相続人はご兄弟姉妹(または甥姪)になります。このとき、ご兄弟姉妹のお立場では広域交付が使えません。
たとえば「弟が亡くなった兄の戸籍を集めたい」というケースは傍系扱いとなり、各本籍地ごとに郵送請求する従来の方法に戻らざるを得ません。広域交付制度に期待して窓口に行かれた結果、ここで停滞してしまうご相談が増えています。
本人確認書類の厳格化
広域交付では、顔写真付きの公的本人確認書類 が必須です。
- ◎ 運転免許証
- ◎ マイナンバーカード
- ◎ 在留カード
- ◎ パスポート(顔写真ページ + 所持人記入欄)
顔写真のない健康保険証や年金手帳では受け付けてもらえません。顔写真付きの身分証をお持ちでない方は、従来どおり郵送請求の準備が必要です。
戸籍電子化システム対応自治体のみ
広域交付は 戸籍が電子化されている市区町村 の戸籍に限られます。1994年(平成6年)以降の電子化で現在はほぼ全自治体が対応していますが、ごく一部、電子化が未完了の戸籍(特に古い改製原戸籍)は対応できないことがあります。
🌱 大切なポイント
広域交付を使うときは、お手元の 本人確認書類が顔写真付きであること と、ご自身が亡くなられた方の直系(子・孫または親・祖父母)もしくは配偶者であること の2点を最初に確認されるとスムーズです。逆に言えば、この2点を満たせば、神奈川県内のお住まいの区役所で、北海道や沖縄の戸籍まで一度の訪問でまとめて取得できます。
注意:広域交付では「郵送請求」はできない
広域交付制度は 窓口での請求のみ が対象です。「電話で依頼して郵送で送ってもらう」運用はできません。郵送で集める場合は、従来どおり各本籍地宛てに個別に請求する必要があります。
5. 法定相続情報一覧図で「戸籍束を A4 1枚」にまとめる
戸籍は 10通を超える分厚い束 になることもあり、提示先のたびに持参・返却するのはご遺族の大きな負担です。そこで活用したいのが、2017年5月29日から運用が始まった「法定相続情報一覧図」 という制度です。
制度のしくみ
法務局に戸籍一式と「法定相続情報一覧図」(亡くなられた方と相続人の関係を図にしたもの)を提出すると、法務局が認証した一覧図の写し が交付されます。これが、A4 用紙1枚で相続人関係をすべて証明する公的書類 になります。
- 開始時期:2017年5月29日
- 申出先:法務局(本籍地・最後の住所地・申出人の住所地・不動産の所在地のいずれかを管轄する登記所)
- 費用:無料
- 必要枚数:必要な分だけ何枚でも無料で発行(銀行3つ + 法務局1つ + 税務署1つ + 年金事務所1つ なら 6枚請求可)
- 有効期限:法令上は無期限(ただし金融機関は「発行から3か月以内」「6か月以内」など独自運用あり)
何が便利か
戸籍束を 銀行A→銀行B→法務局…と順送りする直列の手続き が、一覧図1枚で 複数窓口への同時並行提出 に変わります。原本紛失のリスクも減り、各窓口でも戸籍束の解読が不要になるため、手続き全体のスピードが大きく上がります。
🌱 大切なポイント
「銀行が3行、法務局1か所、年金事務所1か所」と提示先が多い場合は、最初から多めの枚数を法務局で発行依頼されると効率的です。後から「もう1枚必要」と再申請するより、最初に 「提示先の数 + 予備2〜3枚」 を一括取得されることをおすすめします。
申出書の作成
申出書(法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書)は、法務局のウェブサイトからダウンロードできます。一覧図そのものも、典型的なパターン(配偶者+子、配偶者のみ、子のみ等)については 法務局がエクセル様式の見本 を公開しています。
ご自身で作成される場合は、戸籍を見ながら 「亡くなられた方を中心に、配偶者と相続人全員を線で結んだ家系図」 を作っていきます。一見シンプルですが、戸籍の読み取り誤りがあると一覧図も誤った形 になりますので、ご不安なときは行政書士へのご依頼もご検討ください。
➡ 関連ページ:遺産分割協議書の書き方と雛形|相続人全員の合意を一枚に残すために
6. 戸籍の集め方(3つのルート:窓口・郵送・広域交付)
実際に戸籍を集める方法は、①窓口で直接取得 / ②郵送で請求 / ③広域交付制度を利用 の3つのルートに整理できます。それぞれの特徴を整理しましょう。
3ルート比較表
| ルート | 取得場所 | 費用(1通あたり) | 所要時間 | 適しているケース |
|---|---|---|---|---|
| ① 窓口取得 | 本籍地の市区町村役場 | 現在戸籍 450円 / 除籍・改製原戸籍 750円 | その場で交付(30分〜1時間) | 本籍地が近所、または通勤・出張で立ち寄れる |
| ② 郵送請求 | 各本籍地宛てに郵送 | 同上(定額小為替で支払い) | 役所到着から1〜3週間 | 遠方の本籍地、傍系相続(広域交付不可)、平日に窓口へ行けない |
| ③ 広域交付 | 全国どこの市区町村役場の窓口でも | 同上 | その場で交付(30分〜1時間、混雑時は2〜3時間) | 直系の方、顔写真付き身分証あり、複数本籍地分を一度に取得したい |
基本戦略:最後の本籍地から遡る
戸籍を集める順序は、「最後の本籍地」から過去に向かって遡る のが基本です。
- まず、亡くなられた方の 最後の本籍地 で 現在戸籍 を取得 → 死亡の事実を確認
- その戸籍に「従前の本籍」が記載されていれば、そこに 改製原戸籍 または 除籍 を請求
- さらに過去の本籍へ転籍の記録があれば、そちらにも請求 → これを 出生まで遡って繰り返す
戸籍には必ず「いつ・どこから移ってきたか」(従前の本籍)が記載されていますので、これを手がかりに芋づる式に過去をたどれます。
郵送請求に必要なもの一覧
郵送請求(②)は、慣れていないと書類の不足で再請求になりやすい手続きです。以下を漏れなく揃えてください。
| 必要書類 | 入手・準備方法 |
|---|---|
| 戸籍交付申請書 | 各市区町村のウェブサイトからダウンロード(役所ごとに様式が異なる) |
| 定額小為替(手数料) | ゆうちょ銀行・郵便局で購入。1通分ちょうどを同封、不足が心配なら多めに(おつりは小為替で返送される) |
| 返信用封筒(切手貼付) | 戸籍は重いので84円では足りないことが多い。94〜140円分の切手を貼付 |
| 本人確認書類のコピー | 運転免許証・マイナンバーカード等の表面コピー。住所が現住所と一致していることが必要 |
| 関係を示す戸籍(ご自身の戸籍以外を請求する場合) | 「亡くなられた方の子であること」等を証明するご自身の戸籍のコピー |
郵送請求は 到着から処理・返送までで1〜3週間 を見ておくと安心です。ゴールデンウィーク・お盆・年末年始は通常より長くかかりますので、急がれる方は 窓口取得または広域交付を優先 されると確実です。
ルートの選び方
実務的には、3つのルートを使い分けるのが効率的です。
- 直系相続+顔写真付き身分証あり → 広域交付(③) をメインに、最寄りの役場でまとめて取得
- 傍系相続(兄弟姉妹相続など) → 郵送(②) で各本籍地に個別請求
- 平日に時間が取れる+本籍地が近い → 窓口(①) で確実に取得
- 広域交付では取れない古い改製原戸籍 → 個別に 郵送請求(②) で補完
7. よくあるトラブルと対処法
当事務所で頻繁にいただく、戸籍収集の5つのトラブルケースをご紹介します。
ケース1:転籍があって本籍地が分散、何度も取り直し
亡くなられたお父様の本籍地を遡ると 北海道→静岡→東京→神奈川 と4回の転籍が判明したご依頼がありました。郵送請求では各役場に書類一式を個別に送る必要があり、すべて揃うまで 約2か月 を要しました。
⚠ よくあるトラブル
「最初に現在戸籍を取って終わり」と判断されてしまうと、過去の婚姻歴・養子縁組などの記載を見落とすことになります。転籍がある場合は、各本籍地で改製原戸籍・除籍を含めてすべて取得してください。判断に迷われたときは、行政書士へのご相談で全体像を整理されることをおすすめします。
ケース2:改製前の戸籍を見落として、後から相続人漏れが発覚
これは特に重大なトラブルです。1957年(昭和32年)以前の戸籍には、現在では引き継がれていない情報(早世されたお子様、養子に出されたお子様など)が記載されていることがあります。
ご家族が知らなかった相続人が後日判明すると、遺産分割協議書を作り直し、銀行口座解約や不動産登記もやり直し――時間も費用もかさみ、ご家族の関係にもしこりが残ります。改製原戸籍を含めて、最初に「出生まで」しっかり遡ることが、最大の予防策です。
ケース3:広域交付の対象外(兄弟姉妹相続)で窓口拒否
「窓口で『お兄様の戸籍は対象外です』と言われた」――というご相談が増えています。§4 のとおり 傍系(兄弟姉妹・おじおば・甥姪・いとこ)の戸籍は広域交付の対象外 です。
この場合は 各本籍地宛てに郵送請求 するしかありません。窓口に向かう前に、ご自身と亡くなられた方の関係が 直系か傍系か を確認しておくと、無駄足を防げます。
ケース4:古い手書き戸籍が読めない
明治・大正・昭和初期の戸籍は 毛筆や手書きで記載されており、現代の活字に慣れた目では そもそも読み取れないことがあります。
📖 古い戸籍が読みにくい主な理由
- 毛筆体・崩し字 — 戦前の戸籍は毛筆書きで、現代では読めない字体が多用されている
- 異体字・旧字体 — 「澤(沢)」「邊(辺)」「斎/齋」など、同じ字でも複数の表記が混在
- 和暦表記 — 「明治三十二年」「大正五年」「昭和二十一年」など漢数字+和暦で書かれており、西暦への換算が必要
- 用語の変化 — 「戸主」「家督相続」「分家」「縁組」など、現代では使われない概念
どうしても読み取れないときは、市区町村役場の戸籍担当者に質問されるか、行政書士・司法書士などの専門家にご依頼されると確実です。
ケース5:役所の混雑で1か月以上待たされた
年度末・年末年始・お盆明けの繁忙期、また相続登記義務化(2024年4月施行)以降、戸籍窓口の混雑が常態化しています。広域交付制度の開始(2024年3月)も重なり、混雑時は2〜3時間待ち も珍しくありません。
⚠ 混雑期の対策
- 午前中、開庁直後(8:30〜9:30)を狙う
- 月初・週初を避ける(混雑のピーク)
- 事前に必要書類リストを役場のウェブサイトで確認し、不備での再訪を防ぐ
- 広域交付では複数本籍地分をまとめて依頼するため、件数が多いと処理時間が長くなる。事前にリスト化して訪問を
★ まとめ:状況別 最適な取得方法マトリクス
ここまで、戸籍が必要な理由、3種類の違い、「出生から死亡まで」遡る意味、広域交付制度、法定相続情報一覧図、3つのルート、よくあるトラブルを見てきました。
状況別 最適な取得方法マトリクス
ご自身のケースで「どのルートを選べばよいか」を最後に整理します。
| 状況 | 推奨ルート | 補足 |
|---|---|---|
| 直系相続(子・孫または親が請求)+顔写真付き身分証あり | 広域交付 | 最寄りの役場で複数本籍地分を一度に取得。最も時短 |
| 傍系相続(兄弟姉妹・甥姪・いとこ) | 郵送請求 | 広域交付対象外。各本籍地に個別請求 |
| 顔写真付き身分証がない | 郵送請求 or 窓口取得 | 健保証・年金手帳のみの方は広域交付不可 |
| 本籍地がご自宅・職場の近所 | 窓口取得 | 直接出向くのが最も確実 |
| 提示先が銀行3行・法務局・税務署など複数 | 広域交付 + 法定相続情報一覧図 | 戸籍束を集めた後、法務局で一覧図を取得して各窓口に提示 |
| 明治・大正期の改製原戸籍が必要 | 郵送請求 + 専門家のサポート | 読み取り困難な場合は行政書士・司法書士に相談 |
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執筆者プロフィール
前西原 清城(まえにしはら せいじょう)
うりずん相続手続き相談室/事務所代表
社会保険労務士・行政書士・身元保証診断士 1 級・終活カウンセラー 1 級
1965年、沖縄県那覇市壺屋に生を受ける。2020年、川崎市川崎区にOfficeうりずん社会保険労務士・行政書士事務所を開業。社会保険労務士・行政書士・身元保証診断士1級・終活カウンセラー1級の4資格を活かし、ご家族の相続から、おひとりさまの終身サポートまで、人生の節目を一貫してお支えする事務所として地域に根ざした活動を続けている。