※この記事は2026年8月時点の情報に基づく一般的な解説です。手続きの進め方や必要になる書類は、配偶者の在留資格やお住まいの場所、ご家族の状況によって変わります。実際のお手続きの前に、お住まいの市区町村の窓口、関係する国の大使館・領事館、または専門家にご確認ください。

「妻が外国籍なのですが、相続の手続きはどうなりますか」。川崎市・横浜市でご相談をお受けしていると、こうしたお問い合わせをいただくことがあります。

先にお伝えすると、心配されているほど複雑ではないことが多いです。亡くなった方が日本人で、配偶者が日本にお住まいであれば、手続きの大部分は日本人同士の場合と変わりません。

この記事では、日本人が亡くなり、配偶者が外国籍である場合に、何が変わって何が変わらないのかを、行政書士の立場からご説明します。なお、亡くなった方ご本人が外国籍の場合は事情が異なります。外国人が日本で亡くなった場合の相続手続きについては、別の記事でご説明しています。


目次

  1. 「配偶者が外国籍だと手続きが大変」とは限りません
  2. 相続人の範囲や法定相続分は変わりません
  3. 婚姻の事実は日本の戸籍で確認できる場合があります
  4. 日本にお住まいなら、印鑑登録できる場合があります
  5. 内容を理解したうえで署名してもらうことが大切です
  6. 配偶者が海外にお住まいの場合は事情が変わります
  7. うりずん相続手続き相談室でできること
妻が外国籍である60代の男性が、相続人としての立場も取り分も日本人配偶者と同じであること、日本に住んでいれば印鑑登録できる場合があること、書類の氏名表記をそろえておくこと、内容を理解したうえで署名してもらうことを行政書士から説明を受けている様子を描いたイラスト

「配偶者が外国籍だと手続きが大変」とは限りません

ご相談をいただくとき、多くの方が次のような不安をお持ちです。

  • 日本の戸籍がないと、相続人だと証明できないのではないか
  • 印鑑証明書が取れないから、遺産分割協議書が作れないのではないか
  • 特別な手続きが必要になるのではないか

いずれも、状況によっては当てはまりますが、日本にお住まいの場合は、そのほとんどが心配のいらない話です。

変わってくるのは、配偶者側でそろえる書類の一部と、内容の伝え方です。ただし、配偶者が海外にお住まいの場合は事情が変わりますので、それは記事の後半で触れます。


相続人の範囲や法定相続分は変わりません

まず、いちばん基本的なところから。

亡くなった方が日本国籍であれば、相続は日本法を基準に考えます(法の適用に関する通則法36条)。そのため、法律上の婚姻関係にある配偶者であれば、外国籍であっても、相続人としての地位や法定相続分は日本人配偶者の場合と変わりません。

配偶者は常に相続人になりますし、お子さんがいれば2分の1、いなければ状況に応じて割合が変わるという仕組みも同じです。法定相続人と法定相続分の考え方については別の記事で詳しくご説明していますので、あわせてご覧ください。

「外国籍だから相続分が少なくなるのでは」というご心配をいただくことがありますが、そういうことはありません。


婚姻の事実は日本の戸籍で確認できる場合があります

相続手続きでは、「誰が相続人か」を書類で証明する必要があります。日本人同士であれば、亡くなった方の戸籍を出生から死亡までたどることで証明できます。

配偶者が外国籍の場合、その方自身の戸籍は日本にありません。しかし、亡くなった方が日本人であれば、その戸籍に婚姻の事実が記載されるため、相続関係を確認できる場合があります。

つまり、戸籍を集める作業そのものは、日本人同士の相続と大きく変わりません。戸籍を集める3つのルートについては、別の記事で詳しくご説明しています。

ただし、国際結婚の届出の経緯や、離婚・再婚が絡む場合、氏名の表記が書類によって異なる場合などには、追加の確認が必要になることがあります。


日本にお住まいなら、印鑑登録できる場合があります

ここが、多くの方の心配を解く部分です。

2012年7月に外国人登録制度が廃止され、外国人住民の方も住民基本台帳法の適用対象になりました。日本人と同じように住民票が作成され、日本人と外国人が同じ世帯であれば、一つの住民票に記載されます。

そして、中長期在留者や特別永住者など、日本で住民票が作成される外国人住民は、住所地の市区町村で印鑑登録できる場合があります。

印鑑登録ができれば、遺産分割協議書に実印を押し、印鑑証明書を添付するという日本の実務を使いやすくなります。

また、住民票が世帯ごとに編成されることにも実務上の意味があります。同じ世帯であれば、世帯全員の住民票の写しを取得することで、亡くなった方と配偶者が同じ世帯にいたことを示す資料として使える場合があります。

ただし例外があります。在留期間が3か月以下の方、在留資格が「短期滞在」の方、在留期限を経過している方などは、住民票が作成されません。この場合、住民票の写しも印鑑登録証明書も取得できないことになります。ご自身の状況で登録できるかどうかは、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。

書類の表記についても、ひとつ気をつけたい点があります。外国人住民の住民票では、氏名はアルファベット表記が原則です。また、在留カードやパスポートと住民票で、表記が微妙に異なることもあります。

遺産分割協議書を作るときは、住民票・印鑑証明書・在留カードなどと表記をそろえておくことが大切です。金融機関や法務局では、書類間で氏名が一致しているかを確認されます。日本語での読み方を併記しておくと、窓口でのやり取りがスムーズになることもあります。


内容を理解したうえで署名してもらうことが大切です

ここからは、書類の話ではなく、進め方の話です。

遺産分割協議書は日本語で作成するのが一般的です。しかし、配偶者が日本語の読み書きに不安をお持ちの場合、内容がきちんと伝わっているかを確かめる必要があります。

内容を理解しないまま署名してもらうことは避けたいところです。あとから「内容を理解していなかった」となると、協議のやり直しになるおそれがあります。

実務では、次のような対応がとられています。

  • 訳文を添えて渡す
  • 日本語と、配偶者が読める言語を併記して作成する
  • 通訳を介して説明し、理解いただいたことを確認する

長年日本で暮らしていても、法律用語の混じった文書を読みこなすのは別の話です。ご本人が「わかった」とおっしゃっても、念のため要点を口頭で説明しておくと安心です。

特に伝えておきたいのは、どの財産を誰が取得するのか、そして代償金や負債があるかどうかです。金額の記載がある書類であれば、その数字の意味も含めて確認しておくとよいでしょう。説明した内容と日付を記録に残しておく方もいらっしゃいます。

これは法律上の義務というより、あとで揉めないための配慮です。ご家族の関係を守るという意味でも、手間をかける価値があります。


配偶者が海外にお住まいの場合は事情が変わります

ここまでは、配偶者が日本にお住まいの場合のお話でした。

海外にお住まいで日本に住民登録がない場合は、通常、印鑑登録や印鑑証明書の取得ができません。そのため、印鑑証明書に代わるものとして署名証明が必要になります。また、住所の証明には在留証明などを使うことになります。

日本にいる相続人とのやり取りにも時間がかかります。書類を郵送で往復させると、それだけで数週間かかることも珍しくありません。相続放棄を検討するなら3か月、相続税の申告が必要なら10か月という期限がありますので、そこから逆算して動き出す必要があります。

海外に相続人がいる場合の遺産分割協議をどう進めるか、外国語の書類・署名証明・翻訳をどう用意するかについては、それぞれ別の記事で詳しくご説明します。


うりずん相続手続き相談室でできること

当相談室では、行政書士として、次のようなご相談をお受けしています。

  • 戸籍の収集と、相続人の確定
  • 配偶者の側でそろえる書類の洗い出しと、取得の段取りの整理
  • 相続人間に争いがなく、前提となる相続関係や必要書類を確認できる場合の、遺産分割協議書の作成
  • 日本語以外の言語での説明が必要な場合の、進め方の整理

なお、相続税の配偶者の税額軽減など税務上の取扱いは、国籍だけで判断できるものではなく、個別の確認が必要です。詳しくは税理士へご相談ください。

相続のお手続きでお困りの方へ

不動産の相続登記は司法書士、相続人間に争いがある場合は弁護士の領域です。これらについては、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携してお手伝いします。

川崎・横浜エリアを中心に、初回のご相談は60分無料・土日祝もご予約可能・秘密厳守・お問い合わせには翌営業日までにご返信しています。お電話・LINE・お問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。

川崎市・横浜市を中心に、ご相談をお受けしています。何から手をつけてよいか分からない、という段階からで構いません。


まとめ

亡くなった方が日本人で、配偶者が外国籍という場合、相続手続きの大部分は日本人同士のときと変わりません。相続人としての地位も、法定相続分も同じです。

日本にお住まいで住民票が作成される在留資格であれば、印鑑登録ができる場合があり、実印と印鑑証明書という日本の実務がそのまま使えます。亡くなった方が日本人であれば、その戸籍から婚姻の事実を確認できる場合もあります。

気をつけたいのは2点です。書類の氏名表記をそろえておくこと。そして、内容を理解していただいたうえで署名してもらうこと。

海外にお住まいの場合は、署名証明や在留証明といった別の準備が必要になります。ご自身の状況でどこまで当てはまるか分からないときは、一度ご相談ください。