※この記事は2026年8月時点の情報に基づく一般的な解説です。どの国の法律が適用されるか、どの書類が必要になるかは、亡くなった方の国籍、財産の所在、相続人の居住地やご家族の状況によって変わります。実際のお手続きの前に、お住まいの市区町村の窓口、関係する国の大使館・領事館、または専門家にご確認ください。

日本で暮らしていた外国籍の方が亡くなったとき、残されたご家族から「日本人の場合と何が違うのですか」というご相談をいただくことがあります。

先にお伝えすると、基本の流れは変わりません。死亡届を出し、相続人を確定し、財産を調べ、遺産分割の話し合いをして、名義を変えていく。この順番は同じです。

違いが出るのは3つの場面です。相続人をどうやって確定するか、どの国の法律で処理するか、そして手続きで求められる書類。この記事では、その3点を行政書士の立場からご説明します。


目次

  1. 日本人の相続と、何が違うのか
  2. 誰の法律で相続するのか|準拠法という考え方
  3. 日本の法律に戻ってくることがある|反致
  4. 日本の戸籍でたどれない場合、相続人をどう確定するか
  5. 韓国籍の方の場合
  6. 法定相続情報一覧図が使えないことがある
  7. 手続きで追加で求められる書類
  8. うりずん相続手続き相談室でできること
外国籍の父を亡くした40代の女性が、相続手続きの流れは日本の場合と同じであること、違うのは相続人の確定とどの国の法律かと必要な書類の3点であること、日本の戸籍が使えない場合は出生証明書などを組み合わせること、期限は日本の場合と同じであることを行政書士から説明を受けている様子を描いたイラスト

日本人の相続と、何が違うのか

亡くなったあとにやるべきことの全体像は、日本人の場合と共通しています。親が亡くなったらやるべき10のことについては別の記事で整理していますので、まずはそちらで流れをつかんでいただくとよいと思います。

そのうえで、外国籍の方の相続では次の3点が変わってきます。

  • 相続人をどう確定するか … 日本の戸籍で親族関係をたどれないことがあります
  • どの国の法律で処理するか … 日本の民法がそのまま使えるとは限りません
  • 手続きで求められる書類 … 日本語以外の書類や、印鑑証明書に代わる書類が必要になります

期限についても触れておきます。日本で相続放棄や相続税申告が問題になる場合、基本的な期限は日本人の場合と同じです。相続放棄は原則3か月、相続税の申告は10か月。ただし、外国法上の手続や国外にある財産については、別の確認が必要になることがあります。


誰の法律で相続するのか|準拠法という考え方

日本の国際私法では、相続について、亡くなった方の本国法を基準に考えるのが原則です。

相続は、被相続人の本国法によるとされています(法の適用に関する通則法36条)。

つまり、亡くなった方が外国籍であれば、その方が国籍を持つ国の法律を基準に相続を考えることになります。逆に、亡くなった方が日本国籍であれば、海外にお住まいでも、相続人が外国籍でも、日本の法律が基準になります。

遺言については別の定めがあり、遺言の成立と効力は、遺言をしたときの遺言者の本国法によるとされています(同法37条)。なお、遺言書の「方式」については、別に「遺言の方式の準拠法に関する法律」があります。ここでは、遺言の詳しい有効性判断には踏み込まず、相続全体の考え方だけをご説明します。

なお、二つ以上の国籍をお持ちの場合や、国の中で地域ごとに法律が異なる場合には、さらにどの法律を本国法とするかという問題もあります。

実際にどの国の法律が適用されるかは、個別の事情によって変わります。この記事は条文上の原則をご説明するもので、特定のケースについての判断ではありません。


日本の法律に戻ってくることがある|反致

ここで、誤解されやすい点をひとつ。

外国籍の方の相続だからといって、日本法がまったく関係しないとは限りません。本国法の側が「日本にある不動産は日本法で処理する」としているような場合には、日本法が適用されることがあります。これを反致といいます(法の適用に関する通則法41条)。

たとえば、不動産についてはその所在地の法律によるという考え方を採る国があります。また、亡くなったときに住んでいた国の法律を基準とする仕組みもあります。こうした場合、いったん本国法を見にいったうえで、日本にある財産については、反致により日本法が適用されることがあります。

「外国籍だから日本の手続きとは無関係」と考えて準備を怠ると、あとから慌てることになります。


日本の戸籍でたどれない場合、相続人をどう確定するか

日本の戸籍は、出生から死亡までを一本の線でたどれる仕組みです。相続手続きでは、この戸籍を集めることで「誰が相続人か」を証明します。戸籍を集める3つのルートについては、別の記事で詳しくご説明しています。

しかし、日本の戸籍のように、親族関係を一つの制度で出生から死亡までたどれるとは限りません。国によって身分登録の仕組みは異なります。

多くの国では、出生・婚姻・死亡といった出来事は登録されています。そこで、戸籍の代わりに次のような書類を集めることになります。

  • 出生証明書
  • 婚姻証明書
  • 死亡証明書

ここで、ひとつ壁があります。出生証明書や婚姻証明書を集めても、「ほかに相続人がいないこと」までは証明できません。日本の戸籍なら、出生から死亡までを追うことで「この方の子はこの3人ですべて」と示せますが、証明書を積み上げる方式では、それができないのです。

そのため、手続先によっては、宣誓供述書が求められることがあります。「被相続人の相続人は誰で、それ以外に把握している相続人はいない」といった内容を、在日領事館や公証人の面前で宣誓し、認証を受けた書類です。

どの書類が必要になるかは、国と手続先によって変わります。集め始める前に、提出先に確認しておくことをおすすめします。


韓国籍の方の場合

川崎市・横浜市でご相談をお受けしていると、韓国籍の方の相続に関するお問い合わせをいただくことがあります。

韓国では、2008年に従来の戸籍制度から家族関係登録制度へ移行しました。現在は次のような証明書を組み合わせて相続関係を確認します。

  • 基本証明書
  • 家族関係証明書
  • 婚姻関係証明書

制度が変わる前の記録については、除籍謄本が必要になることがあります。

実務でつまずきやすいのが、登録基準地(制度改正前の本籍地にあたるもの)です。証明書を請求する際にこの情報が必要になりますが、日本で生まれ育った方の中には、ご自身の登録基準地をご存じない場合があります。お名前と生年月日だけでは請求できないため、まずここを確認するところから始まることも少なくありません。

また、過去に帰化された方の場合、日本側と韓国側の記録の両方を確認する必要が生じることがあります。

なお、国によっては、日本法とは相続人の範囲や順位が異なることがあります。韓国法を例にすると、日本法とは兄弟姉妹の扱いが異なる場面があります。どの範囲の方が相続人になるかは、外国法の内容を確認したうえで判断することになります。


法定相続情報一覧図が使えないことがある

日本の相続手続きでは、法定相続情報一覧図という便利な仕組みがあります。戸籍の束を1枚にまとめ、各種の手続きで使い回せるものです。

ただし、この制度は戸籍で出生から死亡までをたどれることが前提です。被相続人や相続人が日本国籍を有しないなどの理由で戸除籍謄抄本を提出できない場合には、利用できないとされています。

そうなると、手続きのたびに書類をそろえることになります。銀行、証券会社、法務局など、手続先ごとに書類一式の提出を求められることがあります。集めた書類は、多めに通数を用意しておくか、原本還付の取扱いを確認しておくと後が楽になります。


手続きで追加で求められる書類

日本語以外で作成された書類を日本の手続きで使うときは、訳文を添付します。出生証明書も婚姻証明書も宣誓供述書も、原本と訳文をセットで提出することになります。

もうひとつ、相続人の中に海外にお住まいの方がいる場合の問題があります。遺産分割協議書には実印を押し、印鑑証明書を添付するのが日本の実務ですが、海外にお住まいだと印鑑登録ができません。この場合、印鑑証明書に代わる書類が必要になります。

海外に相続人がいる場合の遺産分割協議をどう進めるか、外国語の書類・署名証明・翻訳をどう用意するかについては、それぞれ別の記事で詳しくご説明します。また、亡くなった方が日本人で配偶者が外国籍の場合は、また事情が変わってきます。外国籍の配偶者がいる場合の相続の注意点についても、別の記事でご説明します。


うりずん相続手続き相談室でできること

当相談室では、行政書士として、次のようなご相談をお受けしています。

  • 相続人の確定に必要な書類の洗い出しと、取得の段取りの整理
  • 戸籍・除籍謄本・家族関係証明書などの収集
  • 相続人間に争いがなく、前提となる相続関係や必要書類を確認できる場合の、遺産分割協議書の作成
  • 手続きの全体の順番と、期限からの逆算の整理

一方で、どの国の法律が適用されるかという判断や、外国の法制度の内容についての判断は、当室が行う領域ではありません。個別の事案については、国際相続に詳しい弁護士へご相談いただく必要があります。

相続のお手続きでお困りの方へ

また、不動産の相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人間に争いがある場合は弁護士の領域です。これらについては、提携する司法書士・税理士・弁護士と連携してお手伝いします。

川崎・横浜エリアを中心に、初回のご相談は60分無料・土日祝もご予約可能・秘密厳守・お問い合わせには翌営業日までにご返信しています。お電話・LINE・お問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。

川崎市・横浜市を中心に、ご相談をお受けしています。どの書類から集めればよいか分からない、という段階からで構いません。


まとめ

外国籍の方が日本で亡くなった場合も、相続手続きの基本の流れは日本人の場合と変わりません。違いが出るのは、相続人の確定方法、どの国の法律で処理するか、そして求められる書類の3点です。

日本の戸籍でたどれない場合は、出生証明書・婚姻証明書・死亡証明書を集め、必要に応じて宣誓供述書を用意することになります。ただし、どの書類が求められるかは国と手続先によって変わります。

準拠法については、亡くなった方の本国法を基準とするのが条文上の原則です。ただし反致により日本法に戻ることもあり、「外国籍だから日本法は無関係」とは言えません。

書類集めには時間がかかります。相続放棄の3か月、相続税申告の10か月という期限から逆算すると、早めに動き出すことが何より大切です。どこから手をつけてよいか分からないときは、一度ご相談ください。