親から実家などの空き家を相続したとき、「とりあえず、そのままにしている」という方は少なくありません。けれども空き家は、放置するほど固定資産税や管理の負担が重くなりがちで、近年の法改正では「特定空家」「管理不全空家」に指定されると土地の税金が大きく上がる仕組みも整いました。この記事では、空き家を相続したらまず確認すること、かかり続けるお金とリスク、そして「住む・貸す・売る・手放す」それぞれの選び方を、行政書士・社会保険労務士の視点からやさしく整理します。


目次

  1. 空き家を相続したら、まず確認する3つのこと
  2. 相続登記は義務化されています(2024年4月〜)
  3. 空き家にかかり続けるお金
  4. 「特定空家」「管理不全空家」に指定されると税金が上がる
  5. 選択肢①住む/②貸す
  6. 選択肢③売る
  7. 選択肢④解体する/⑤国に引き取ってもらう/⑥相続放棄
  8. 専門家に相談するメリット
空き家を相続したらどうするかを8コマで解説。まず確認する3つ、相続登記の義務化と取得を知った日から3年以内の期限、空き家にかかり続ける費用、特定空家・管理不全空家による税負担、住む・貸す・売る・解体・国庫帰属・相続放棄という選択肢、専門家への相談までをやさしくまとめた図解

1. 空き家を相続したら、まず確認する3つのこと

まず落ち着いて、次の3つを確認しましょう。

ひとつ目は「誰が相続人か」です。亡くなった方(被相続人)の戸籍をたどって相続人を確定させます。相続人が複数いる場合、空き家を含む遺産を誰がどう引き継ぐかは、相続人全員での話し合い(遺産分割協議)で決めます。話し合いがまとまったら遺産分割協議書を作成します。

ふたつ目は「名義(登記)がどうなっているか」です。被相続人の名義のままになっていることが多く、空き家をこの先どうするにも、まず名義を相続人へ移す手続き(相続登記)が必要になります。

みっつ目は「現況」です。建物の傷み具合、雨漏りやシロアリ、残された家財、隣地との境界、前面道路との接し方などを確認しておくと、後の判断(住む・貸す・売る・解体など)がスムーズになります。


2. 相続登記は義務化されています(2024年4月〜)

2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。不動産を相続で取得したことを知った日から原則3年以内に登記をする必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になることがあります。

空き家を「貸す」「売る」「国に引き取ってもらう」場合には、原則として名義を相続人に整える相続登記が重要になります。解体する場合も、相続人間の合意や登記・滅失手続きの確認が必要になるため、早めに名義関係を整理しておくことが大切です。詳しくは相続登記の義務化について解説した記事もご覧ください。


3. 空き家にかかり続けるお金

空き家は、持っているだけで費用がかかり続けます。主なものは次のとおりです。

まず固定資産税・都市計画税です。誰も住んでいなくても、毎年課税されます。次に管理の手間とコストです。草刈り、通水・換気、郵便物の確認、見回りなどが必要で、遠方にお住まいの場合は交通費や管理代行費もかかります。さらに火災保険・地震保険の保険料、老朽化に伴う修繕費も見込んでおきましょう。

見落としがちなのが賠償リスクです。屋根瓦や外壁が落下して通行人や隣家に被害が出た場合、所有者が損害賠償責任を問われる可能性があります。「放置しておけば費用がかからない」のではなく、放置するほどリスクと負担が積み上がっていく、という点に注意が必要です。


4. 「特定空家」「管理不全空家」に指定されると税金が上がる

2023年(令和5年)12月に施行された空家等対策特別措置法の改正で、新たに「管理不全空家」という区分ができました。これは、このまま放置すると「特定空家」(倒壊や衛生上の問題などのおそれが高い空き家)になるおそれがある空き家を指します。

これらに該当すると、自治体から「助言・指導」→「勧告」と段階的に対応が行われ、特定空家ではさらに「命令」や行政代執行に進むこともあります。

とくに大きいのが税金への影響です。住宅が建っている土地には、固定資産税が軽減される「住宅用地特例」が適用され、土地の税額が最大で6分の1に抑えられています。ところが、特定空家・管理不全空家として勧告を受けると、住宅用地特例の対象から外れ、土地の固定資産税が大きく上がることがあります。小規模住宅用地では課税標準が6分の1に軽減されているため、条件によっては大幅な増税となりますが、実際の上がり方は土地の状況や自治体の課税計算によって異なります。また、自治体によっては、補助金の対象や手続きに影響が出る場合もあります。早めの管理・活用・処分が、結果として負担を軽くすることにつながります。


5. 選択肢①住む/②貸す

ここからは、相続した空き家の活かし方を順に見ていきます。

①住む――ご自身やご家族が住む方法です。思い入れのある実家を残せる一方、老朽化していればリフォーム費用がかかり、立地や生活動線との相性も検討が必要です。なお、相続後にご自身が住んで、その後に売却する場合の税の特例については後述および売却の税金の記事をご覧ください。

②貸す――賃貸に出して家賃収入を得る方法です。修繕やリフォームの初期費用、入居者の募集、入居後の管理といった手間はかかりますが、空き家を活かしながら収入につなげられる可能性があります。空室や管理のリスクも踏まえて検討しましょう。


6. 選択肢③売る

使う予定がなければ、売却して現金化するのも有力な選択肢です。売却で利益(譲渡所得)が出ると譲渡所得税がかかりますが、計算方法や税率、取得費の考え方は相続した実家を売るときの税金の記事で詳しく解説しています。

空き家の売却では、一定の要件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける「被相続人の居住用財産(空き家)に係る3,000万円特別控除」を使える場合があります。被相続人が亡くなる直前まで一人で住んでいたこと、昭和56年5月31日以前に建てられた家であること、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなど、細かな要件と期限があります。このほか、売却価額(1億円以下)、相続後の利用状況、耐震改修または取壊しの有無などの要件もあるため、早めの確認が大切です。使えるかどうかの判断や具体的な税額の計算は、提携する税理士と連携してご案内します。


7. 選択肢④解体する/⑤国に引き取ってもらう/⑥相続放棄

建物を活かさない場合の選択肢もあります。

④解体する――更地にして売る、駐車場などに活用する方法です。解体費用がかかるうえ、更地にすると住宅用地特例が外れて土地の固定資産税が上がる点に注意が必要です。固定資産税は原則として毎年1月1日時点の状況で課税されるため、解体の時期によって翌年度の税額に影響することがあります。自治体によっては老朽空き家の解体補助制度がある場合もあります。

⑤国に引き取ってもらう(相続土地国庫帰属制度)――2023年4月27日に始まった制度で、相続した「土地」を国に引き渡せます。ただし建物がある土地は対象外で、先に解体して更地にする必要があります。費用は審査手数料が土地1筆あたり14,000円、承認された場合の負担金が原則20万円から(土地の種類・面積・区域により変動)かかり、要件も厳しいため、必ず引き取ってもらえるとは限りません。なお、相続土地国庫帰属制度の申請書等の作成代行は、弁護士・司法書士・行政書士が業務として対応できる分野です。当事務所では、行政書士として、制度利用の前提整理や申請書類作成のサポートを行います。

⑥相続放棄――プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がない手続きで、家庭裁判所に申述します(原則として、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内)。ここで注意したいのが、2023年4月施行の改正民法940条です。相続放棄をしても、放棄の時にその空き家を「現に占有している」場合(たとえば、その家に住み続けていた場合など)には、相続人または相続財産清算人に引き渡すまで、自己の財産と同一の注意をもって保存する義務が残ります。「放棄すれば自動的に管理から解放される」とは限らない点に注意しましょう。相続放棄の判断や期限については相続放棄と期限の記事もご参照ください。


8. 専門家に相談するメリット

空き家の相続は、相続登記・税金・売却・解体・国庫帰属・相続放棄と論点が多く、ひとつの判断が税額や手間に直結します。しかも、相続放棄には期限があり、税の特例にも期限があるため、迷っているうちに使えたはずの制度を逃してしまうこともあります。実際には、相続登記は司法書士、税金の申告や特例の判断は税理士、相続放棄や相続人間の対立がある場合は弁護士、不動産の売却は不動産会社と、それぞれの専門家と連携しながら進めることになります。

まずは相続人の調査と名義の整理(相続登記の前提となる遺産分割)を整えたうえで、それぞれの選択肢のメリットとコストを並べて比較するのが近道です。「何から手をつければよいか分からない」という段階からでも、専門家に相談することで全体像が整理され、無理のない進め方が見えてきます。


まとめ

空き家を相続したら、まずは「相続人・名義・現況」を確認し、相続登記で名義を整えることが出発点です。放置すると固定資産税・管理・賠償のリスクに加え、特定空家・管理不全空家への指定で土地の税金が大きく上がるおそれもあります。住む・貸す・売る・解体する・国に引き取ってもらう・相続放棄という選択肢から、ご自身の状況に合う道を、期限にも気をつけながら早めに選んでいきましょう。

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